「家族が病気やけがのために歩くのが難しくなった」
「布団で寝起きしていたが、介護ベッドが必要になった」
このような状況の中で、要介護者の日常生活を助けてくれるのが福祉用具です。多くのものが介護保険制度の対象ですが、介護度によっては利用できないものもあります。
そこで、この記事では、介護保険制度で利用できる福祉用具について紹介します。要支援や要介護1の方も利用できる福祉用具もありますので、ぜひ参考にしてください。
介護保険で利用できる福祉用具
介護保険では、次の2種類の方法で福祉用具を利用できます。
- 福祉用具貸与(以下、レンタル)
- 特定福祉用具販売(以下、購入)
具体的に、要支援や要介護1の方がレンタル及び購入できる福祉用具についてご紹介します。
1.レンタル対象品
介護保険によりレンタルできる福祉用具は13種類です。詳しい内容を以下に示しました。
1.車椅子レンタル可能な車椅子は、以下の3種類です。
車椅子だけでなく、付属品もレンタル可能です。
特殊寝台とは、一般的に介護用ベッドと呼ばれています。
サイドレールが設置可能であり、下記に示した機能のどちらかがあるものを指します。
- 背中または脚の角度を調整できる
- 床の高さを調整できる
以下の7種類が、特殊寝台とともにレンタルできます。
水、エア、ゲル、シリコン、ウレタン等からなる全身用マットで、ベッドの上において使います。床ずれの原因になる体への部分的な圧力を解消してくれるものであり、主に寝たきりの方が使う福祉用具です。
6.体位変換器空気パッド等を使って、あお向けからうつ伏せへの体位変換を助けてくれる福祉用具です。
寝たきりの方は自分で体の向きを変えることができないため、床ずれができやすくなります。床ずれ防止のために介護者が体の向きを変える際、体位変換器を利用することで、介護者の身体的負担を減らせます。
7.認知症老人徘徊感知機器認知症の方が屋外に出ようとするのをセンサーによって感知し、家族に知らせるものです。
これにより、家族が知らない間に外に出て行方不明になるという事態を防ぐことができます。
8.手すり足の力が弱く、立ち上がりに支障をきたす方が使用します。便器やポータブルトイレからの立ち上がりを助けるものですが、取り付け工事を伴うものは含まれません。
9.スロープ車椅子や車輪付き歩行器を利用される方は、段差を越えることが難しいです。その状況を解消するためのスロープも、福祉用具レンタル対象品になります。
ただし、以下のタイプは対象外ですのでご注意ください。
- 個別利用者のために改造したもの
- 持ち運びできないもの
- 工事が必要なもの
杖で歩行することが難しい方向けの福祉用具です。次のいずれかが対象になります。
- 車輪付きタイプ:体の前や左右を囲む取っ手があるもの
- 四脚タイプ:両手で取っ手を持ちながら移動できるもの
一般的なT字型の杖は対象外ですので、ご注意ください。
- 松葉づえ
- カナディアン・クラッチ
- ロフストランド・クラッチ
- プラットホームクラッチ
- 多点杖
要介護者の移動動作を助ける福祉用具です。要介護者の体を持ち上げたり、ベッドから車椅子への移動が容易になるので、介護者の身体的負担を減らすことが可能です。なお、移動用リフトには、以下の3タイプがあります。
尿または便を自動的に吸引してくれる福祉用具です。尿や便の経路になる部分を分割できるものが、レンタル対象になります。
2.要支援及び要介護1でレンタル可能なものは?
要支援や要介護1の方も福祉用具を利用できますが、レンタルについては以下の5点しか利用できません。
もし、上記5点以外の福祉用具を利用したい場合は、後述する「福祉用具の例外給付」を利用する、全額自費でレンタルする、自費で購入するという方法があげられます。
3.購入対象品
介護保険により購入できる福祉用具は、以下の6種類です。レンタルとは異なり、介護度による制限はありません。
1.腰掛便座要介護者の排泄を助けるための福祉用具で、以下の4種類が対象になります。
自動排泄処理装置のうち、直接肌に触れるレシーバー、チューブ、タンク等、尿や便の経路となるものが購入対象品です。
3.入浴補助用具入浴時に、浴槽への出入りや座位保持を助けるための福祉用具で、以下の7種類が対象になります。
空気式または折りたたみ式等、容易に移動できて、取水や排水用の工事を伴わないものが対象です。
5.移動用リフトのつり具の部分移動用リフトの中で、要介護者の体に接する部分です。
要介護者が常時装着することで、膀胱内を感知し、尿量を推定するものです。一定の尿量に達したと推定された場合、排尿のタイミングを要介護者もしくは介護者に自動で通知します。
福祉用具の例外給付とは
2006年4月の介護保険法改正により、(要支援1・2及び要介護1)は、車椅子や特殊寝台などをレンタルできなくなりました。
しかし、医師の意見などで必要と判断された場合は、市町村が例外的にレンタルを認める場合があります。これが例外給付です。
そのためには、ケアマネージャーによるサービス担当者会議開催や、市区町村役場への申請が必要です。
ここで1つ事例を紹介します。(80代男性・Aさん)
Aさんは、要支援1の認定を受けていました。杖歩行により移動は自立していましたが、買い物や友人宅訪問など、少し離れた場所に移動するときだけ電動四輪車を利用していました。
2006年の法改正により、Aさんもレンタル対象外となったのです。しかし、本人からは「今後も使いたい」という希望がありました。
そこで担当ケアマネージャーは、サービス担当者会議を実施。主治医は欠席だったため、書面にて意見を聞き取りしました。
ケアマネージャーはこの会議結果をもとに役所へ申請を行いました。その結果、Aさんの例外給付が認められたのです。
福祉用具レンタルの6ステップ
介護保険で福祉用具をレンタルするときの流れは以下のとおりです。
購入時の流れもレンタルとほぼ同じです。しかし、福祉用具専門相談員によるモニタリングやメンテナンスの義務付けはありません。修理や交換などについては、利用者自身かケアマネージャーを通じて福祉用具専門相談員に相談しましょう。
福祉用具の利用料金
レンタル利用時は、他の居宅サービス同様1割(所得によっては2~3割)の自己負担が発生します。
購入の場合は以下のような流れです。
購入の場合、介護保険で給付を受けられるのは年間10万円までとなっているので注意してください。年度が変わると、再度10万円の購入が可能になります。
なお、通信販売やインターネット販売での福祉用具購入は介護保険給付の対象外なので注意してください。福祉用具専門相談員からの専門的な助言を得られないからです。
まとめ
この記事では、介護保険で利用できる福祉用具について紹介しました。
福祉用具利用の主な目的は以下のとおりです。
- 要介護者の身体機能を補って日常生活の自立につなげる
- 介護者の負担軽減をはかる
しかし、福祉用具に頼りすぎてしまうと、自分でできることが減り、要介護者が自立から遠ざかる可能性があります。そうならないためにも、「便利だから」という理由だけで選ばないことが大切です。
自立した日常生活に近づくためにも、福祉用具を選ぶときは、必ずケアマネージャーに相談しましょう。その際は、要介護者の身体状況を正確に伝えることを忘れないでください。