認知症の方と一緒に暮らす家族は、穏やかに暮らせていても、さまざまな悩みや不安を抱えてしまうことがあります。

「認知症が進行したらどうしよう」「わからなくなることが増えて本人が辛い思いをしたら可哀想」などと今後の生活に不安を覚える方もいます。

一緒に暮らす人が認知症かどうかに関わらず、相手を尊重し、できるだけ穏やかで幸せな生活がしたいものですよね。

そこで、この記事では、認知症の方とより良く暮らす方法や介護による不安の乗り越え方などを解説していきます。

軽度の認知症だが進行が気になる。今後のことを考えると不安

認知症の方と暮らしていると、悩みや不安を抱えることもあるかもしれません。

私が以前関わったYさんのケースでは、家族の認知症の進行に不安を覚えるというものでした。

以下で詳しく紹介していきます。

 

【事例】Yさん(60代・女性)の場合

Yさんは90歳の母と夫の3人暮らしです。

母は数年前に認知症と診断されましたが身の回りのことは本人ができており、家庭内での問題も特になかったため3人で穏やかに暮らしていました。

母は、要介護1と認定され、週2回デイサービスに通っています。そんな生活の中、Yさんは最近、母の認知症が進行してきたと少しずつ感じてきました。

少し前までは、帰り道がわからなくなる程度でしたが、最近はレンジで温めたものを忘れてしまいそのまま腐らせてしまうということが増えました。

注意しても仕方ないとわかってはいても、母には「しっかりしてほしい」と感情のまま強い口調で注意してしまうこともあります。

そんな自分が嫌で、以前の穏やかな暮らしを送っていた頃を思い出しては、憂鬱になるのでした。

またYさんの母は、料理が好きだったため、台所仕事は奪えないと思い母が家事をするときには付き添うようにしています。問題なく生活できているものの、認知症が進行していることを思うと急に今後の暮らしが不安になるのでした。

Yさんのように家族の認知症が進行することに不安を覚える方は珍しくありませんが、できるだけ今後も家族で穏やかに暮らしたいと思うものです。

そのためには、まず家族自身の不安に目を向け、認知症の方と穏やかに生活していく工夫をしてみるのも良いでしょう。

  • 穏やかに暮らしたい
  • 認知症の進行をできるだけ予防したい
  • 自分の時間もほしい
  • けど高齢者のことが心配

上記のように考える家族も多いです。不安を払拭したい場合は、以下の対処法がおすすめです。

  • 自分の心を整える
  • 認知症の進行予防をする
  • 一人で抱え込まない
  • これから3つの対処法について詳しく解説していきます。

    ➀自分の心を整える

    介護生活に悩んだり、心身共に疲れてしまった場合は、気分転換に外に出掛けてみましょう。

    カフェやドライブなど、ちょっとした自分の時間を定期的に作ることも大切です。

    認知症の親との暮らしが不安… 覚えておきたい3つのポイントを...の画像はこちら >>

    また、介護の不安を誰かに話したいけど友人の中に同じ状況の人がいないため話が合わないという場合は、相談したり、悩みをわかちあったりする相手が欲しいものですよね。そんなときには、認知症カフェに参加してみるのもおすすめです。

    認知症カフェは、介護をしている家族が集い、介護についてのことを語り合う場のことです。

    各地で開催されており、参加すれば認知症や介護について同じような悩みを抱えた人と出会うことができます。

    それぞれの悩みを語り合い、共感・共有することで、気持ちが楽になり不安払拭のきっかけになるかもしれません。

    • 同じような悩みを持つ人と繋がりたい
    • 在宅介護を他の人はどのようにしているのか知りたい

    このように思っていたら、自分の住む地域で開催されている認知症カフェに一度参加されてみてはいかがでしょうか?

    ➁認知症の進行予防をする

    高齢者の認知症の進行が心配になった場合は、家でできる進行予防や工夫をするように意識してみましょう。

    例えば、認知症により時間の感覚がなくなり始めている場合は、体内時計を調整できるような工夫をしてみてください。体内時計を自然に戻すのに最適なのが、朝日を浴びることです。

    最近では、時間になると自動で開くカーテンなどもあり、朝カーテンを自動で開ける設定にしておけば、わざわざ家族が気を使う必要なく自然に朝日を浴びられます。

    また、時間がわからなくなってしまっている場合には、デジタル電子時計を使ってみるのも良いでしょう。視覚的に時間を確認できるのも効果的です。

    さらに、デジタル時計は文字が大きいものを選ぶと高齢者が時間を確認しやすくなります。温度や湿度が表示されるタイプのデジタル時計を選択すれば、熱中症予防に役立てることも可能です。

    また、日常生活上での活動を増やすことも、高齢者の生活の質向上に繋がります。家の中でできる簡単な作業を高齢者自身ができるような環境を整えてあげましょう。

    特に、以下のような活動がおすすめです。

    • 家事
    • 昔の話
    • 手を動かす
    • 園芸
    • 塗り絵

    本人の負担にならない程度に、活動量を増やす工夫をしてあげることが最適です。難しければ、自然にできるような簡単な家事や園芸から一緒に進めてみましょう。

    そして、認知症の方との散歩も効果的。

    一緒に散歩をすることで、気分転換になるだけでなく、筋力維持や脳の活性化にもつながり、メリットも多いです。

    気持ちよい風に当たりながら一緒に歩けば、普段できないような話ができ、新しい発見があるかもしれません。

    ➂一人で抱え込まない

    今後のことが不安である場合には、協力してくれそうな人を探しておくことも大切です。在宅介護は、長く続くケースもあるため、周りに協力してくれそうな人がいたら事前に相談しておくと心強いでしょう。

    • 高齢者の友人にときどき来てもらい、はなし相手になってもらう
    • 兄弟に状況を話しておき、万が一の際には来てもらうように頼んでおく

    上記のように、自分一人で解決しようとするのではなく、協力者になってくれそうな人がいたら頼んで、周囲を上手く巻き込んでいけるようにしておくと良いかもしれません。

    また、兄弟などには、親の状況を細かく伝えておくこともおすすめです。

    「状況をよくわかっていなかった」「協力が必要だとは思ってなかった」と、家族が介護の悩みを抱えていることに気付いていない可能性もあるため、協力してもらうためにも事前に状況を伝えておくようにしましょう。

    認知症の親との暮らしが不安… 覚えておきたい3つのポイントを解説
    画像提供:adobe stock

    ケアマネにも相談してみよう

    悩みが解決できなかったら、ケアマネに相談してみるのも方法の一つ。状況に応じて、以下のような提案をしてくれます。

    • グループホームへの入居
    • デイサービスへ通う日を増やす
    • 訪問介護サービスの利用
    • 福祉用具の貸与

    上記のサービスは、介護保険内で受けられるため、必要となれば早めに相談するようにしてください。

    生活のなかでちょっとした工夫を

    漠然と不安を抱えたまま頑張りすぎてしまうと心身が壊れやすくなってしまいます。

    不安や悩みを適切に解決できるような工夫をしていきましょう。

    また、在宅介護は一人で乗り越えるのは難しいです。周りに協力者がいなくて自分の負担が大きい場合は、介護サービス利用を検討するのも一つの手です。

    一人で抱え込まず、社会全体で高齢者の生活を守るイメージで、必要であれば遠慮なく介護サービスを頼ってみてください。

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