在宅介護をする場合、介護者自身がストレスや疲労によって限界を迎えることは避けなければなりません。

そこで注目されているのが「レスパイトケア」です。

Respiteとは英語で「小休止」の意味であり、「レスパイトケア」とは介護者が一時的に介護から離れる時間帯を確保することです。

介護疲れが起こる要因

頑張りすぎてしまう

入所待ちの間に介護保険制度を活用しながら在宅介護でつなぐ場合や、できる限り在宅介護を継続していこうとする場合、「頑張って介護する」という根性論で乗り切ることは極めて困難です。

頑張りすぎると、そのしわ寄せが介護にあたる家族側の介護うつに発展してしまったり、最悪の場合要介護者への虐待という形で表れてしまったりという事態も考えられます。

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ケアプランの変更をしない

介護保険サービスの利用は居宅介護計画書(ケアプラン)に基づいて行われます。ですが、変更する際にはケアマネージャーと相談する必要があるため、その暇がなかったり遠慮してしまったりして「一度作ったケアプランを延々と踏襲する」というケースをよく見かけます。

しかし、実際には状況は変化するのが常です。要介護者の症状や病状、状態の変化はもちろんのこと、支える家族の側の生活変化や、諸事情が重なることはごく当たり前に起こります。当然ながら介護負担が増えることもありますので、当初のプランのまま在宅介護を行っていると、支える側が倒れてしまうかもしれません。

ケアプランは、曜日の追加や時間帯の変更といった軽微な変更についてはサービス担当者会議(ケアカンファレンス)を開かなくても良いとされていますし、緊急時は後から会議を開催することも認められています。

今現在の状態や環境、生活リズムとケアプランの内容が適切かどうか見直しも含めてしっかりとチェックしてみてください。

在宅介護の継続を考える場合にはケアマネージャーと相談し、状況に合わせた介護の方向性を考えましょう。

デイサービス活用の考え方

リハビリによって介護状態の改善や軽減が期待できるようであれば、リハビリ型のデイサービスを積極的に検討し、介護をせずとも在宅生活ができるようになってもらうのが理想的です。

もちろんすぐに効果が出るというようなことはありません。ですが、定期的にケアプランに組み入れることで、体力的な維持改善だけでなく、本人の意欲や自信といったメンタル面でも良い傾向が期待できます。

ただし、リハビリ特化型のデイサービスは短時間利用が多いため、要介護状態の解消や維持を目指すうえでは有効ですが、在宅介護にあたる家族の休息時間の確保という点ではあまり向いているとは言えません。

そうした時間の確保を含めて、利用時間の比較的長いデイサービスで日中はしっかりと活動し、夜はぐっすりと休んでもらう、といった形を整えると良いでしょう。

在宅介護者の負担を軽減する「レスパイトケア」とは? 具体例も踏まえおすすめの利用法を解説
画像提供:photo AC

日中の活動量やコミュニケーション機会が少ないと生活リズムの乱れや昼夜逆転などが起こりかねません。そうなると夜間に活動する時間帯が増えてしまい、介護者の寝不足の原因になったり、心理的なストレスが生じたりして大きな負担となる場合があります。

デイサービスの機会を多めに確保する場合には、複数のデイサービス利用もおすすめです。例えば、Aデイサービスは月曜日と金曜日、Bデイサービスは水曜日に利用する、といったこともできます。

認知症の症状が重くて混乱するようであればおすすめはできませんが、2つのデイサービスで状態を把握してもらうことで、突発的な事情ができた場合でもどちらかのデイサービスで追加利用を頼むことができたり、どちらかのデイサービスが諸事情により休業した場合でも、もう一つのデイサービスに依頼しやすくなります。

もちろん、リハビリ型デイサービスと日中滞在型のデイサービスを両方使うことも問題なくできます。状態が良くなることを期待してリハビリ型デイサービスを主軸に組み、もう一日はしっかりと利用してもらえるデイサービスを入れて休息の時間を確保する、ということもできます。

利用する本人にとっても家族にとってもリズムが狂うことは心身面と社会面において大きな負担となります。あらかじめ複数の事業所を利用しておくことで、リスクヘッジの意味合いも持たせることができます。

ショートステイを組み入れる

介護状態や症状が重い場合、また家族側の生活リズムや働き方などによっては、デイサービスだけで休息機会を確保するのは十分と言えない場合が多々あります。

そうした場合にぜひ活用したいのが、施設に短期間宿泊して介護や生活支援を受けることができるショートステイ(短期入所生活介護)です。

要介護度などによって泊まれる日数は大きく変わりますが、家族にとって「心配せずに介護をお願いできる期間」が確保されることは在宅介護を継続していくうえで極めて大切です。

「ショートステイの利用はいざ必要となったらで良い」と本人も家族も検討を先送りするケースが多くありますが、実際には利用したい状況になってから契約して利用するのは大きなストレスになります。また、ショートステイ側にとっても利用者とのかかわりがないために、受け入れのハードルが高くなります。

実際、ショートステイの利用は人気が高く、すぐに希望する日程を確保するのは困難で、1~2ヵ月前からの予約が主となっています。人気のショートステイ先ともなると3~4ヵ月先の予約となることも珍しくありません。

そうしたことも考慮し、本格的に利用を検討するよりも早い段階から2泊3日といった短い期間のお泊りに慣れておくのもおすすめです。

ちょっとした小旅行のような感覚で月に1回程度定期的に組んでおくとショートステイの側からしても本人の状態把握が進みますので、いざ、急なお泊りの必要が発生した際にもスムーズに受け入れが可能です。

要介護度が重度化し、在宅介護の負担が大きくなってきたケースの場合は、ショートステイを主軸とした居宅介護計画を立てるのも方法の一つです。

ショートステイは「連続30日以下」「介護認定の有効期間内の半分以下」といった利用の制限があります。ほかにも細かなルールがありますので、担当するケアマネージャーに計画を組んでもらいましょう。

要介護度が中重度である場合、月の半分程度すなわち15日までの利用としておけば、介護保険の利用限度額以外の制限の心配はまずありません。単純に月の半分を利用するのも予約が確保さえできればもちろん可能でしょう。

そのほか週ごとにショートステイを利用する、週末ごとに定期的に利用する、などと、それぞれの生活事情やリズムの維持に適した利用方法も検討してみてください。

在宅介護が長期化してくると、本人はもちろん支える家族にとっても介護疲れの問題は重くのしかかってきます。そんなときにレスパイトケアができているのといないのとでは、精神的にも肉体的にも大きな差が生まれます。

まとめ

一昔前のような「親の面倒は家族で看るもの」といった考えにとらわれている方はある程度減ってきているとは思いますが、まだ根性論を口にされる方も目立ちます。

残念ながら、「もっと頑張って支えます」「どうにかして看ていきます」といった気力や根性だけでは、時間と労力を生み出すことはできません。

在宅介護を継続する場合には、本人にもある程度保険制度を利用したサービスに慣れてもらい、支えていく家族の側は「しっかりとレスパイト(小休止)を意識的に確保する」ように努めていきましょう。

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