認認介護とは
「認認介護」とは、認知症の高齢者を同じく認知症の家族が行うことです。認認介護よりも聞き馴染みがある「老老介護」は、高齢者の介護を高齢者が行うことを指します。主に65歳以上の高齢夫婦や親子など、どちらかが介護者であり、もう一方が介護される側となる場合を指します。
日本における老年人口(高齢者人口)は2022年時点で29.1%となっており、高齢化が進むことによってさまざまな介護問題が出てきています。老老介護はもちろん、認認介護の問題もこれからさらに顕在化すると予想されます。
認認介護の世帯はどのぐらいあるのか?
山口県での調査
2010年に行われた「在宅介護における認認介護の出現率」という山口県内の在宅介護状態にある5,734人を対象にした調査によると、老老介護にある人が1,403人(24.5%)、どちらか一人が認知症は722人(12.6%)、二人とも認知症が146人(2.5%)でした。また、老老介護にあるケースを100%とした場合にどちらか一人が認知症は51.5%、二人とも認知症は10.4%の割合でした。
調査の結果としては、在宅介護にある老老介護世帯の10.4%が認認介護であるとされていますが、調査方法の課題もあり、把握できていない部分が多い状況です。
全国での認認介護世帯数を予測
平成29年の高齢社会白書によると65歳以上の高齢者の認知症有病率は15.0%(2012年時点)とされています。65歳以上の認知症有病率が15.0%と仮定して予測を行ってみると、以下のようになります。
厚生労働省の国民生活基礎調査のデータによれば、65才以上の「夫婦のみの世帯」が 827 万世帯(2019年)ですから、認認介護世帯は827万世帯×2.25%=20.6万世帯いると予測できます。あくまで予測の数値ですが、認認介護世帯は希少で特別な世帯ということでもなさそうです。
認認介護のリスク
認認介護の事例
私が知っている認認介護の事例では、自分自身の体調や配偶者の体調変化に気付くのが遅くなり、熱中症になってしまいました。その方々は幸い介護保険を利用している方でしたので、ケアマネージャーがヘルパーやデイサービスなどの利用を促し、第三者の眼を定期的に入れることで、些細な体調の変化にも適切な対応ができるようになりました。
ただ、認認介護をしている全ての方が、家族のフォローや介護サービスによる支援を受けているとは限りません。
認認介護の考えられるリスク
認認介護の考えうるリスクは以下が挙げられます。
- 金銭管理がうまくいかない
- お互いの体調の異変に気付くのが遅れる
- 内服薬の管理ができなくなる
- 火の不始末
- 介護放棄や虐待
認認介護ということで、お互いが程度はあれ認知症を有しているわけですから、さまざまな問題が発生する可能性があります。特殊な例かもしれませんが、介護殺人にも発展する可能性もないとは言い切れないでしょう。
2009年には、富山県で介護者の認知症の妻が、認知症の夫を殺害してしまうという事件もありました。
常に第三者が連絡しあえる体制を作ろう!
読者の方の中には、高齢のご両親が遠方に暮らしている方もいらっしゃると思います。
ご両親が元気なうちは心配することも少ないでしょうが、仮にどちらかの介護が始まり「老老介護」となった時点で、さまざまなリスクが発生することを知っておきましょう。
離れて暮らす両親が老老介護になった時には、家族や第三者のサポートが必要です。介護疲れや将来への悲観などが原因とされる親族間での殺人や無理心中事件が2021年までの10年間で、全国で少なくとも計437件(死者443人)発生しています。
ご両親が介護保険サービスを利用していないのであれば、役所や地域包括ケアセンターに相談することが必要ですし、ご家族も可能な範囲でご両親の生活状況を把握すると良いでしょう。遅くともご両親のどちらかが認知症になった場合には、必要なサービスを利用することを検討しましょう。
老老介護がスタートした時点で生活状況を把握して適切な対応を行うことで、認認介護という状況を防ぐことができます。場合によっては悲惨な事件が起きてしまう認認介護ですが、有用な情報を知ることや関係者を巻き込み適切な行動を行うことで防いでいきましょう!