秋冬の乾燥しやすい季節に、気になるのはお肌のトラブルです。私達も気を付けたいところですが、お肌のトラブルを守るためのスキンケアは高齢者にとっても重要なことです。
しかし、スキンケアに積極的でない高齢者の皮膚を守るためには、どうしたらよいかと悩む方もいるのではないでしょうか?スキンケアの重要性を本人に理解してもらえなくても、介護者であるご家族がスキンケアの目的と方法をしっかり理解し、工夫しながら保湿を進めていけたら問題ありません。
そこで、今回の記事では、高齢者の肌の特徴やトラブルの原因からスキンケアの方法までを紹介していきます。
高齢者の肌の特徴
高齢者の肌は、以下のようなことが原因でよりデリケートになっているのが特徴です。
- 汗や皮脂分泌の減少
- 加齢により新陳代謝の期間が長くなり、その影響で皮膚に弾力がなくなったり薄くなったりする
高齢になると皮膚が薄く弾力がなくなってしまい、少しのことで傷がつきやすい状態になっています。日常生活を送っていても、肌が傷つきやすい状態になっているため、少しのことで内出血や皮むけなどにも繋がってしまいます。
また、加齢に伴って肌が乾燥しやすくなります。以上を踏まえると、高齢者の皮膚を守るためには、適切なスキンケアを行うことが大切であるといえます。
スキンケアのメリット
高齢者のスキンケアの意識を持つことで得られるメリットは多いです。スキンケアは何よりも継続していくことが大切であるため、スキンケアのメリットを理解しておきましょう。
スキンケアを継続することで、具体的に次のようなメリットがあります。
安眠に繋がる
肌トラブルで痒みや痛みが起こると、良質な睡眠をとれない原因にも繋がります。不眠の原因になりえるトラブルをスキンケアによって予防することで、睡眠の質を保つことができます。
睡眠の質は、脳疲労やメンタル面にも大きく関わるため、肌トラブルによって妨げられないようにしたいところです。
肌トラブルの重症化予防になる
肌トラブルは重症化すると処置期間が長くなってしまいます。その間、高齢者は痒みや痛みを感じながら過ごさなければならないため、不快感も伴います。日常的にスキンケアを行っていくことで、重症化の予防にも期待できます。
生活へのモチベーションが上がる
肌が乾燥し、かさかさしてしまった朝、その日1日のモチベーションが下がる感覚を、みなさんも経験したことがあるのではないでしょうか?特に女性は、心のどこかでいつまでも綺麗でいたい気持ちがあるものです。
介護施設でのネイルケアやお化粧のレクリエーションで喜ぶ高齢者が多いのも、その表れではないかと思います。スキンケアをこまめに行い、肌に潤いが行き渡り、肌が常に整っている状態で過ごすことができれば、本人の自信にも繋がります。
「ちょっとお化粧をしてみよう」「お出かけする服を選びたい」など、自分の容姿への関心を上げるきっかけになるかもしれません。
肌の状態は、それほどまでに自身のアイデンティティに関わるものなのです。
リラクゼーション効果
優しい香りのクリームを塗ることで、リラクゼーション効果も期待できます。また、介護者が塗布する場合には、マッサージしながらクリームを塗れば、そこからコミュニケーションも生まれるでしょう。
スキンケアを続けるコツとしては、目的意識を持ち、楽しんで行うことが何よりも大切です。
本人がスキンケアに積極的でなかったり、嫌がったりする場合には、少し香りの優しいものを使用したり、マッサージしながらコミュニケーションを取ったりするなど、工夫して実践していくと良いでしょう。
スキンケア方法
日常生活に取り入れるべきスキンケアの方法は難しいものではありませんが、抑えておきたいポイントはいくつかあります。
ここからは、高齢者のスキンケアの流れと方法、抑えるべきポイントを解説していきます。
1:洗浄
入浴や清拭などで体を綺麗にする際には、皮膚を傷つけない意識が大切です。ボディソープは弱酸性などの低刺激のものを使い、ゴシゴシと皮膚をこするのではなく泡立てた後、泡で体を洗うようにして洗浄していきましょう。
また、入浴や清拭に使うお湯は、高温すぎると肌に負担がかかってしまうので、温かさが感じられる程度のぬるめのお湯を使用すると良いでしょう。
長時間の入浴も水分保湿機能を低下させる原因となってしまいます。入浴時間の目安は、体が温まったらさっと出るくらいの感覚でいると適切でしょう。
そのほか、手や足に水虫などがある場合には、菌が広がらないよう、手足を最後に洗うようにしてください。介助者が高齢者の体を洗う場合には、必ず入浴前後に介護者の手や足をしっかりと洗うようにしましょう。
2:保湿
入浴や清拭後の肌が清潔な状態のうちに、早めに保湿することが大切です。入浴後30分以内の保湿は効果的であるともいわれているため、体を拭いたら早めに保湿クリームを塗布するようにしましょう。
ワセリンなど硬めのものを塗りたい場合には、少し体が濡れた状態のほうが伸びやすいので、少し体を濡らした状態にしておくと良いでしょう。
高齢者の中には、保湿クリームに違和感を持ち嫌がる方もいます。その場合には、理由をていねいに説明して塗らせてもらうか、他の保湿クリームを試してみるのも良いかもしれません。
肌に良いからといってスキンケアを強要するのではなく、本人のペースに合わせた対応をしていきましょう。

3:保護
日常生活の中で、肌トラブルを防ぐための保護をする必要もあります。
例えば、皮膚が薄く内出血や傷ができやすい高齢者には、レッグウォーマーやアームウォーマーなどを使用することで、皮膚の保護に効果的です。
また、入浴しない日でも、保湿クリームで乾燥を防ぐことやケガをしない生活環境づくりもしていくことが望ましいでしょう。ぶつかりそうな物や転びそうな場所などを探し、事前に事故を防いでいくことも大切です。
重症化する前に受診を
上記のようなスキンケアを行っていても、肌トラブルが発生してしまうこともあります。その場合は、重症化する前に早めに受診しましょう。訪問看護サービスを利用している場合には、看護師にも早めに報告するようにしてください。
本記事では、スキンケアが高齢者の生活の質に大きく関わることを説明していきました。スキンケアの一番のメリットは「本人が快適に生活できるようになること」だと思います。
高齢者とコミュニケーションを取りながら、楽しく続けられるような本人に合ったスキンケア方法を探してみてください。乾燥から肌を守り、自信に繋がるケアを行っていきましょう。