目次
  • 牛乳・乳製品に含まれる栄養素と働き
  • 骨が弱くなるのはカルシウム不足だけではない
  • 体質や食事量に合わせて牛乳・乳製品を接取することが大切

高齢になると骨格筋重量が減少し、瞬発力や持久力、筋力が低下して転倒しやすくなります。

さらに骨密度も低下し、骨粗鬆症になると圧迫骨折や変形性膝関節症などが起こりやすくなります。

そうした筋肉や骨、関節などの運動器の障がいにより、骨折や転倒をしてしまい、要介護状態になるリスクが高い状態を「ロコモティブシンドローム」といい、その予防が高齢化社会における大きな課題となっています。

今回は牛乳や乳製品がそのリスクを軽減できるのかを考察します。

牛乳・乳製品に含まれる栄養素と働き

牛乳・乳製品の種類は、乳類である牛乳、飲むヨーグルト、ヨーグルト、チーズ、粉乳が含まれます。

牛乳は、たんぱく質を構成する必須アミノ酸がバランス良く含まれています。

骨や歯を形成するカルシウムは、体内で吸収・利用されにくいとされていますが、牛乳に含まれている乳糖やカゼインホスホペプチドがカルシウムの吸収率を高めてくれます。

このほか、臓器や筋肉などをつくるタンパク質や体を動かすためのエネルギー源、細胞膜をつくる脂質、皮膚や粘膜の健康を保つビタミンA、エネルギーの代謝を助けるビタミンB2などを含みます。

さらに、牛乳は加熱しても栄養成分にほとんど変化がないため、シチューなどに入れて、たっぷり野菜と一緒に摂取できる点も優れています。

ヨーグルトは、牛乳などの乳汁を発酵させてつくられており、整腸作用や免疫力アップにも効果的です。ヨーグルトに含まれる乳酸菌は、腸内でビフィズス菌などの善玉菌を増やし、腸内環境を整えてくれる働きがあります。

チーズは牛乳や羊乳を発酵させたもので、栄養成分が凝縮されています。栄養価も高く、種類が豊富なこともあり、さまざまな料理に使用されますが、塩分と脂質が多いため食べすぎには注意が必要です。

牛乳や乳製品が高齢者の骨折や転倒リスクを軽減させる?の画像はこちら >>

骨が弱くなるのはカルシウム不足だけではない

ただし、「カルシウムをたくさん摂る=骨が強くなる」ではないことを頭に入れておかなければなりません。

骨折しやすくなる原因はさまざまですが、カルシウム不足だけでなく、運動不足、痩せすぎ、ビタミンD(食べる物や日にあたる時間)摂取不足などがあります。

つまり、カルシウムだけを気にして、たくさん摂れば摂るほど骨が強くなるというわけではないことがわかります。

もちろん、カルシウムを不足しないよう摂取していくことも大切です。

『日本人の食事摂取基準(2020年版)』で推奨されている1日のカルシウム摂取量は、男性は18~29歳で約800㎎、30~74歳で約750㎎、75歳以上で約700㎎。女性は18~74歳で約650㎎、75歳以上で約600㎎とされています。

一方で、『令和元年国民健康・栄養調査報告』によると、実際のカルシウム摂取量は、総数の平均値で505㎎となっており、カルシウム摂取量は不足している状態にあります。

牛乳・乳製品はこのカルシウム摂取不足を解消するためにも手軽で摂りやすい食品が多いため、普段の食事や間食におすすめです。

体質や食事量に合わせて牛乳・乳製品を接取することが大切

牛乳・乳製品に対する嗜好は人によって異なり、また乳糖不耐症(牛乳を飲むとお腹がゴロゴロしてしまう)や牛乳アレルギーの方など、体質により摂取することが難しい場合があるため、すべての方に牛乳・乳製品の摂取を勧めることはできません。

乳糖不耐症の方でも、シチューなどに入れて温めたり、同じ乳製品でもヨーグルトやチーズであれば食べられることもあります。

また、脱脂粉乳にもタンパク質やカルシウムなどの栄養素が含まれているので、飲み物やお料理に加えることで摂取しやすくなるでしょう。

高齢者で1回の食事量が少ない方は、牛乳やヨーグルト、チーズを間食に取り入れてみてください。

生クリームやアイスクリームは乳製品を利用していますが、糖分や脂肪が多いため、乳製品ということではなく、お菓子扱いになります。

牛乳や乳製品が高齢者の骨折や転倒リスクを軽減させる?
お腹がゴロゴロしやすい人は温めるなどの工夫を!

牛乳・乳製品を摂ることで骨折や転倒リスクを軽減させるとまではいえませんが、栄養価が高く、身近で手に入る食品が多くあります。体質上問題のない方は毎日の食事に取り入れていただくことで日本人に不足しがちなカルシウム補給ができることは確かです。

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