近年、高齢者のタンパク質摂取不足が話題になることが増えました。テレビ番組などでも、「フレイル(虚弱)予防にはタンパク質が良い」などの言葉を耳にすることがあります。
確かに、タンパク質は筋肉や臓器、血液、皮膚、毛髪など体をつくる大切な材料です。しかし、エネルギー源として重要な炭水化物(糖質)が不足していると、タンパク質が適切に代謝されません。また、体の様々な細胞の材料としては、タンパク質だけでなく必須脂肪酸などの脂質も必要です。高齢者でも、これらを適切なバランスで摂取することが大切です。
エネルギー産生栄養素とは
「タンパク質」「脂質」「炭水化物」は身体を動かすエネルギーをつくり出す三大栄養素で、エネルギー産生栄養素といわれています。それぞれの栄養素の役割は以下の通りです。
タンパク質 アミノ酸がつながったもの。骨や、筋肉、臓器をつくる(4kcal/g) 脂質 神経組織、細胞膜、ホルモンなどをつくる(9kcal/g) 炭水化物(糖質) 糖がつながったもので、消化吸収されてすぐに脳や体のエネルギーとなる(4kcal/g)厚生労働省が発表した「日本人の食事摂取基準」(2020年版)では、これらの栄養素をバランスよく摂取するためのエネルギー産生バランス(%エネルギー)という目標量が示されています。エネルギー産生バランスとは大まかに栄養の質を評価する指標のひとつであり、食事のエネルギー構成比をみることによって、各種栄養素が不足せずバランスよく摂取できているかを判断することができます。
年齢 タンパク質(%エネルギー) 脂質(%エネルギー) 脂質(飽和脂肪酸※)(%エネルギー) 炭水化物(%エネルギー) 18~29歳 13~20 20~30 7以下 50~65 30~49歳 13~20 20~30 7以下 50~65 50~64歳 14~20 20~30 7以下 50~65 65~74歳 15~20 20~30 7以下 50~65 75歳以上 15~20 20~30 7以下 50~65※飽和脂肪酸とは、牛や豚の脂肪やパーム油、バターなどに多く含まれ、エネルギーの生成やコレステロール値を上げるとされている脂肪酸のこと
難しく考えずに続けることが大事
タンパク質の多い食品に限らず、いろいろな栄養素をバランスよく食べたほうが良いですが、どのくらいのエネルギーを目安に摂取すればいいかと悩む方も多いと思います。
「日本人の食事摂取基準」(2020年度版)では、以下の通り年齢や性別、日ごろの活動量で必要なエネルギー量の参考値が明らかにされています。
性別 年齢 身体レベル(kcal) 低い 普通 高い 男性 65~74歳 2050 2400 2750 75歳以上 1800 2100 - 女性 65~74歳 1550 1850 2100 75歳以上 1400 1650 -食べる量や食べたものを吸収する量に個人差はあるので、毎日の食事で自分がどのくらいの栄養を摂れているのか計算するのは難しいかもしれません。
そこで、栄養量の過不足を簡単に推測する方法として、定期的に体重を計ることをおすすめします。毎日が難しい方は週に1回でも体重を計り、1~3ヵ月後に体重が減ってきたら、活動量に対して食べている量が少ないということになります。
逆に体重が増えてきたら活動量に対して食べている量が多いということになり、過体重が考えられます。
低栄養はフレイルにつながりやすく、過体重は生活習慣病につながりやすいと考えられるため、毎日の食事の量や質を見直すきっかけになります。
また、食生活を見直す際には、エネルギー産生栄養素を参考にバランスよく食べるようにすると良いでしょう。
「バランスよく食べるのは難しい」とよく言われますが、普段の食事に何かを足したり減らしたりするだけでも改善できることがあります。
食事は毎日行うことなので、気になったときだけ見直すのではなく、少しずつでも続けられることを見つけましょう。
三大栄養素が摂れる!栄養バランスを考えた簡単メニュー
高齢者は、1回の食事ではたくさんの量を食べられず、必要な栄養を摂取しきれないことがあります。3食でも必要な量を食べきれない方は、間食に軽食(サンドイッチ・おにぎり)のようなものを追加しても良いでしょう。
それでは、毎日の食事を簡単にバランスアップできるおすすめのメニューを紹介します。
【朝食】このほか、保存ができる肉や魚の缶詰も常備しておいて、栄養素が不足していると感じた食事に追加するのも良いでしょう。
上記のメニューは順番を変えて食べても問題ありません。とにかく1日の食事で全部の栄養を摂らなくては!と頑張りすぎるのではなく、無理なく続けることが大切です。
「今日食べ過ぎたら明日少し減らそう」など、気楽に考えながら毎日の食事を楽しんでください。