今回は高齢者施設での薬の管理についてご紹介いたします。
一般家庭でもミスは起こりやすいので、それぞれの事例やシチュエーションを知り、しっかりと対策しましょう。
ちょっとしたミスが重大事故になることも
服薬管理や服薬介助は介護事業所の大切な業務の一つです。加齢とともにさまざまな疾病を抱えるため、介護を必要とする高齢者は長期的に服薬を必要としています。
一度の服薬で複数種類を服用する人や、一日に何回も服薬が必要な人がいます。数や回数が増えると同時に増加するのが誤薬です。
飲み忘れ、飲みすぎ、飲み間違いなどの誤薬が報告されています。高齢者が共同で生活を送る介護施設では、誤って他人の薬を服用してしまうという誤薬も報告があります。
薬は健康を維持するために必要なものですが、誤った使い方をすると健康被害を引き起こすおそれがあります。
服薬介助に従事されている方は、薬の怖さを認識されている方が多く、服薬管理や服薬介助には日ごろから十分に注意を払っていただいている印象です。それでも人はミスをする生き物です。忙しい日常業務に追われる中で、ちょっとしたミスが重大な事故につながりかねません。
高齢者施設での特徴的な誤薬①
他人の薬を飲ませてしまう
非常に危険な誤薬の一つに、他人の薬を飲ませてしまうという事故があります。
高齢者施設では、服薬を必要とする多くの高齢者が共同生活を送るので、服薬のタイミングが重なってしまいます。個人宅であれば、その人の薬はその人しか手にしませんが、大勢で生活をしていると、誤って他人の薬を手にしてしまうことがあります。
高血圧ではないのに血圧を下げる薬を服用したり、糖尿病ではないのに血糖値を下げる薬を服用すると、血圧や血糖値が下がりすぎてしまい、最悪の場合、意識を失い命を落とすことにもつながりかねません。
服用前に必ずその人の顔と名前を確認することが大切です。
服薬のタイミングを間違える
薬は効率的に効果を示すように設計されているため、それぞれ服用時点が決められています。起床時、食前、食間、食後、食直後、食直前、就寝前、頓服のように、医師からの指示はさまざまです。
介護施設のように大勢の高齢者の服薬介助を限られた職員で行う場合、一人ひとりの服薬時点を正確に把握していないと、うっかり食事が終わってから食前の薬を飲むといった誤薬が起きてしまいます。
どのような服用時点で処方されているのか、一覧表などにまとめて把握しておくと良いでしょう。
高齢者施設での特徴的な誤薬②
服用量を間違える
これは複数人の介護職員が交代で服薬介助にあたるときに多い誤薬の一つです。
例えば、便秘に用いるピコスルファートナトリウム内用液という下剤があります。目薬のようなボトルの形状をしており、一滴ずつ必要な量をカウントしながら服用する液状の下剤です。
医師から一回10滴という指示があれば、ポタポタと10滴数えながら服用しましょう。ボトルの腹を指で押して滴下するため、押す力が強すぎると一度にたくさんの量が出てしまうことがあります。
扱う職員によって薬の量が変動してしまうと、排便コントロールにも影響を及ぼします。量が多すぎると下痢になってしまうこともあるため、かかわる職員は全員が共通認識として滴下数を把握しておく必要があります。
また服用する人によって医師からの滴下数の指示も異なるため、用量の間違いにも注意する必要があります。
飲ませ忘れる
薬の準備をし忘れたり、新たに薬が追加になったときなどに多い誤薬です。
薬は何かしらの症状に対して処方されているため、使わないと治らないだけでなく、症状が悪化してしまうこともあります。
他科の受診をされた場合や、風邪などで臨時で処方された薬などは、日常的な服薬時点とは異なったタイミングや錠数での服用となるため特に注意が必要です。
薬を落としてしまう
薬が床に落ちているということは、封を開けて口に入れるまでに落とすか、口に入れてから吐き出すかの二つしかありません。
封を開けて口に入れるまでの落薬を防ぐには、注意深く取り扱うことと、その人の服薬能力を把握することです。薬は小さくて掴みづらいものが多いので、その人が自分の手で薬を保持できる人なのかを把握しておく必要があります。
もしも落薬に気づいたときは、不衛生な環境であれば、その薬は廃棄して新しいものを服用しましょう。
口に入れてから吐き出してしまうことを防ぐには、飲み込むまでしっかりと見守ることが大事です。嚥下機能が低下している人は特に注意して見守りましょう。
また、飲み込むまでに時間がかかっている人は、もしかすると嚥下機能が低下しているのかもしれません。医師や薬剤師に伝え、薬のかたちが適したものであるかを相談してみましょう。
ボックスへの入れ間違い
服薬管理に配薬ボックスなどを利用されている方も多いと思います。このような場合、薬の入れ間違いに注意しましょう。施設では服用する人の間違いなどが多く、一般家庭でも用法の間違いには気をつけましょう。
配薬ボックスに入れ間違えてしまうと、間違えた薬を数週間飲み続けることにもつながりかねませんので、複数人で確認し、ボックスに入れるときと取り出すときにあらためて適したものであるかを確認する習慣をつけておきましょう。
まとめ
今回は、高齢者施設で多い誤薬について紹介いたしました。
薬の管理でお困りのときは薬剤師に相談し、具体的なアドバイスをもらうことも有効だと思います。
忙しい日常業務の中で、うっかりミスをしてしまうということもあり得ますが、薬のミスは命に関わるミスになってしまいます。不幸な事故を防ぐためにも、適切な管理体制を整えておくことが求められています。
また、複数の薬を服用している方を施設に通わせている場合は、注意してもらうように施設に対してあらかじめ申し送りしておくといいかもしれません。