皆さんは、朝起きてまず何をしますか?トイレに行く人、顔を洗う人、いろんな方がいると思います。そして、その後に何をするでしょうか?
食事を摂る人や朝からお風呂に入る人もいるかもしれません。
ADLは「Activities(動作)of Daily(日常)Living(生活)」の頭文字を取った略語であり、日本語では「日常生活動作」と呼ばれています。
リハビリテーションを進めるうえで、ADLの向上はひとつの目標になることが多く、介護の分野でもよく耳にする言葉です。そこで今回は、ADLの概要、評価法、予防法や改善のポイントなどについて理学療法士の視点から解説します。
ADLとは
ADLは日本語で「日常生活動作」と説明しましたが、大きく2つに分類されます。1つは、排泄や食事、入浴など自宅内で行う身の回りの動作。もう1つは、服薬管理や家事、金銭管理などの複雑な動作です。
前者は、BADL(基本的日常生活動作)と呼ばれており、ADLと言うと一般的にBADLのことを指すことが多いです。後者は、IADL(手段的日常生活動作)と呼ばれており、IADLは高度で応用的な動作と認識されています。
それぞれの具体的な項目は以下の通りです。
BADL- 食事
- 移乗
- 整容
- トイレ動作
- 入浴
- 歩行
- 階段昇降
- 着替え
- 排便
- 排泄 など
- 買い物
- 電話対応
- 家事
- 食事の準備(料理)
- 洗濯
- 移動
- 服薬管理
- 金銭管理 など
ADLの評価法
ADLが低下していないか、維持・改善していくために何が必要か、といったポイントを、介護・医療従事者が客観的に評価を行うことは非常に重要です。
それを助けてくれるのがADLの評価法です。以下に、リハビリテーションでよく用いる評価表をご紹介します。
バーセル・インデックス(Barthel Index)
“やればできる”ADLの評価法を指します。例えば、1人で歩ける力はあるものの精神的な不安定さから歩けない日があるといった方でも歩ける能力があると判断されます。
バーセル・インデックスを利用するメリットは、評価項目が10個と少ないため評価にあまり時間がかからないことです。ただ、自立・一部介助・全介助など大きな指標で点数化するため、細かな変化がわかりづらいことがデメリットです。
評価項目- 食事
- 移乗
- 整容
- トイレ動作
- 入浴
- 歩行
- 階段昇降
- 更衣
- 排尿コントロール
- 排便コントロール
FIM
“している”ADLの評価法で、普段の生活で実際に行っているADLのことを指します。例えば、リハビリとして着替えができても、普段の生活で着替えを行っていなければ点数は下がります。
メリットは、実際の生活を評価できる、点数が細かく設定されており変化を捉えやすい、などが挙げられます。デメリットは、点数をつけるのに時間がかかることです。
FIMの評価項目 評価項目 運動 セルフケア 食事 整容 清拭 更衣上半身 更衣下半身 トイレ動作 排泄コントロール 排尿管理 排便管理 移乗 ベッド・椅子・車椅子移乗 トイレ移乗 浴槽・シャワー移乗 移動 歩行・車椅子 階段 認知 コミュニケーション 理解 表出 社会的認知 社会的交流 問題解決 記憶日常生活自立度
リハビリテーションの場面では、上記2つの評価法を用いることが多いですが、より短時間で評価する方法に「障がい高齢者の日常生活自立度(寝たきり度)」「認知症高齢者の日常生活自立度」があります。
ここでの詳細は省きますが、短時間で評価できることに加え、具体的な説明書きがあるため、初めての方でも評価がしやすい特徴があります。
障がい高齢者の日常生活自立度は、介護保険の認定調査でも用いられている指標であり、知っていて損はない評価法です。
評価をどのように活かすか
さまざまな評価法をみてきましたが、それらをどのように活かしていけばよいでしょうか。
生活の困りごとや強みを確認する
評価表に沿って、一つひとつの項目を確認することで、生活の困りごとやその方の強みが見えてくることがあります。
例えば、デイサービスに通っているときは自分で着替えができていても、自宅ではできていないかもしれません。
その原因が、手すりの場所や声かけの仕方によるものであれば、自宅にも同じような環境を整えたり、声かけの方法を介護者に伝えるとADLに変化が出てくる可能性があります。
ADLが低下する原因
ADLが低下する原因には、次のようなことが考えられます。
- 体の痛みや認知機能の低下
- 筋力低下
- 介護力の低下
- 耐久性の低下
- 内科的疾患 など
また、昨今のコロナウィルス感染拡大により、外出の機会や人と会うことが少なくなり、活動量が減ったことでADL低下を招いたケースなどもあるようです。
日常生活の中で改善・維持するポイント
ADLのどの項目が低下しているかによりますが、まずは筋力や体力を落とさないことが非常に重要です。普段から歩く習慣を身につけ、スクワットやかかと上げ、もも上げの運動などを行いましょう。
そして、できることは自分で行う意識も大切です。時間がかかってしまったり、少しでも不安定な場面があったりすると手伝いを求めたり、つい周囲も手伝いをしがちです。
もちろん、サポートが必要な場面もありますが、本人のできる力を活かすように必要最低限のサポートに留めることも大切です。また、生活リズムを整え、充分な栄養摂取も心がけましょう。

いかがでしたでしょうか。いつまでも元気に生活するために、ADLを高い状態に保つことは重要です。そのためには「できることは自分でやる」「筋力や体力が低下しないように運動を継続する」意識が大切です。
しかし、病気や加齢によりADLの維持が難しいケースも多々あります。ADLの改善を目指すだけではなく、介護保険などを利用しながら安全で無理のない生活を送ることも必要ですので、体調や状況に合わせて適切にサービスを活用しましょう。