介護が必要になっても在宅で生活を送りたい人はたくさんいます。そのような人が安心して生活を送るために訪問看護サービスはあります。
訪問看護は自宅などに訪問し、医療から生活支援まで幅広いニーズに応えます。
イメージとしては点滴などの医療行為ばかりが浮かぶかもしれませんが、実は食事のケアも行われます。
今回は訪問看護のサービス内容の一つである食事のケアに焦点を当てて解説します。
訪問看護のサービス内容
訪問看護のサービス内容の種類は幅広く、利用者さんに必要なサービスを提供しています。以下の表はそのサービス内容についての詳細を記したものです。
看護内容 医療処置に係る看護内容 ・病状観察・本人の療養指導
・家族等の介護指導・支援
・介護職員によるたんの吸引等の実施状況の確認・支援
・栄養・食事の援助
・嚥下訓練
・口腔ケア
・排せつの援助
・身体の清潔保持の管理・援助
・認知症・精神障害に対するケア
・呼吸ケア・肺理学療法
・その他リハビリテーション
・社会資源の活用の支援
・家屋改善・環境整備の支援 ・気管内吸引、その他の吸引
・在宅酸素療法の指導・援助
・膀胱留置カテーテルの交換・管理
・ドレーンチューブの管理
・褥瘡の予防、処置
・褥瘡以外の創傷部の処置
・中心静脈栄養法の実施・管理
・経鼻経管栄養法の実施・管理
・胃瘻による経管栄養法の実施・管理
・人工肛門・人工膀胱の管理
・自己導尿の指導・管理
・気管カニューレの交換・管理
・人工呼吸器の管理
・がん化学療法の管理
・薬物を用いた疼痛管理
・ターミナルケア
・緊急時の対応
・注射の実施
・点滴の実施・管理
・服薬管理・点眼等の実施
・浣腸・摘便
・在宅透析の指導・援助
・採血等の検体採取
・吸入
(出典:社会保障審議会 介護給付費分科会 第182回[令和2.8.19]資料)
このように、訪問看護にはさまざまなサービス内容があることがわかります。
その中でも今回は「栄養・食事の援助」「嚥下訓練」「口腔ケア」のケア内容について解説していきます。
訪問看護で行われる食事のケア内容
訪問看護で行われる食事ケアの内容は以下のようなものがあります。
食事動作と介助方法の指導
訪問看護による食事介助は食事動作を獲得したり、家族が介助しやすくしたりすることを目的に行います。ただ単に食事を摂ることを介助するのではなく、アセスメント(評価)をして食事が摂れない原因を探り、それに対してアプローチすることが大切になります。
食事動作のアセスメントは以下のようなことを行います。
- どのような環境で食べているか?
- 口腔機能の低下はないか?
- 食事の姿勢はどうか?
- 食器は適切か?
- 食の形態(硬さ、大きさ、とろみの有無など)は適切か?
食事動作のアセスメントをもとに利用者さんが食事を摂りやすくなるようなアプローチをします。
また、家族に食事の介助方法を指導することも訪問看護の役割の一つです。食事の食べさせ方、食器の選び方、調理方法などを指導します。
栄養状態の指導
訪問看護の対象者の中に低栄養状態の人や、肥満状態の人、生活習慣の指導の必要がある人(糖尿病、心臓病、腎臓病、呼吸器疾患など)がいます。そのため、病気が悪化しない・再発しないためにも栄養状態の指導が大切です。
そのような人に対して、栄養指導として以下のようなことを行います。
- 普段の食事状況の把握
- 食事内容の指導
- 体重の管理
- 栄養素の適切な摂取の確認
口腔ケア
食事を摂るためには口腔ケアも大切です。訪問看護では口腔ケアとして以下のようなことを実施します。
- 唾液腺マッサージ
- 口腔ケア方法の指導
- 口腔ケアの家族指導
- 口腔ケアグッズの紹介
口腔ケアを行うことで、口の中が清潔になり、潤いが与えられます。また、唾液腺マッサージをすると唾液が分泌され、食べ物を飲み込みやすくなります。
嚥下訓練
嚥下(えんげ)とは飲み込みのことです。嚥下機能が低下すると食事が摂りにくくなったり、誤嚥性肺炎のリスクが上がったりするので、日々のトレーニングが大切です。
嚥下訓練には以下のようなものがあります。
- 肩、頸部、胸郭の関節可動域訓練
- 舌、口唇、頬など口腔周囲のマッサージや運動
- ブローイング(吹く練習)
- 咀嚼(噛む)練習
- 頭部挙上訓練(舌骨上筋群、喉頭挙上筋群の筋力強化)
リハビリ専門職による食事のリハビリテーション
訪問看護ステーションには、リハビリ専門職である理学療法士、作業療法士、言語聴覚士も勤務しています。
訪問看護師の代わりとして、リハビリ専門職が訪問看護を行うことで専門的なリハビリをすることができます。
例えば、食事の姿勢・食器や自助具の検討などは作業療法士が得意としている分野ですし、言語聴覚士は嚥下訓練を得意としています。
看護師による食事ケアのほかにも、リハビリのプロによる食事ケアも一つの選択肢だと思います。
このように訪問看護による食事ケアはさまざまな種類があります。
自宅における食事ケアのサービス
自宅で生活している人が受けることができるサービスには、訪問看護以外にも次のようなものがあります。
訪問介護による食事ケア
訪問介護士(ヘルパー)による食事ケアです。介護職が食事を提供するサービスになります。
食事を摂ることが主な目的になりますが、最近では自立支援介護もすすめられています。
訪問リハビリによる食事の指導
理学療法士や作業療法士、言語聴覚士による訪問リハビリテーションによる食事の指導です。訪問リハビリでは食事を摂取してもらうことが目的ではなく、食事機能全般のリハビリが目的となります。
管理栄養士による食事の指導(居宅療養管理指導)
管理栄養士による食事の指導です。介護保険では居宅療養管理指導という位置づけで訪問します。
医師の指示に基づき、栄養管理に係る情報提供及び指導やアドバイスを行います。指導の内容は以下のようなことがあります。
- 食事形態の提言
- 必要な栄養量の算出
- 献立の提案
- 栄養補助食品の選択
- 使用する食品や調理法の決定
- 利用者の嗜好への対応
- 糖尿病利用者への対応
- 水分・電解質管理の評価
在宅生活をしていても、自宅で食事のケアを受けられるサービスはたくさんあります。今回は訪問系サービスを紹介しましたが、通院や通所すれば通所リハビリや外来リハビリなど、ほかのサービスも利用することができます。
まとめ
今回は訪問看護のサービス内容の一つである食事のケアに焦点を当てて解説しました。
そして、訪問看護以外の在宅生活を送る要介護者が利用できる食事のサービスを紹介しました。
在宅における食事ケアサービスの理解が深まりましたでしょうか?
食事は生きていくうえで楽しみの一つだと思います。
在宅でもさまざまな食事のケアを受けることができますので、もしご自身やご家族で困っている方がいましたら、担当のケアマネージャーや主治医に相談してみてください。