皆さんは、日常的に使用する靴をどのように選んでいますか?
おしゃれのために素敵な靴を履くこともあるかもしれませんが、日常生活で使用するときは履きやすさなどを重視される方が多いのではないでしょうか。
特に高齢者の方は爪や足の皮膚が厚くなり、合っていない靴だと歩行に支障をきたすこともあります。
そこで今回から前後編に分けて、足にぴったり合った靴を選ぶポイントを解説していきたいと思います。前編では「靴のサイズ」と「厚み」についてのポイントをみていきましょう。
現在お使いの靴を見ながら、ぜひ最後までお読みください。
靴のサイズは長さだけでなく、幅も大切
靴の大きさを選ぶとき、踵の端からつま先の先端までの長さしか考慮されていない方もいらっしゃるかもしれません。
ですが、ご自身の足に合う靴を選ぶためには、踵からつま先までの長さである「足長」に加え、足幅の一番広いところである「足囲」もポイントになります。つまり、靴のサイズには長さだけでなく、幅も大切なのです。

よく勘違いされがちですが、靴の中の空間と足長とが同じでピッチリしているのは適切なサイズとは言えません。また、足に対して靴幅が細すぎると痛みにつながりやすく、広すぎると靴の中で足がずれてタコなどができたり、外反母趾を誘発しやすくなります。
では、どのような靴が「ちょうど良い」サイズなのでしょうか。靴のサイズが自身の足に合っているかどうかを確認する方法をご紹介します。
靴を履いた状態だと、靴の中にどの程度の捨て寸があるかわかりにくいかもしれません。そんなときは、靴の中敷を取り出して踵を合わせて立ち上がると良いでしょう。中敷のつま先部分を見て、足より中敷が1cmほど大きい(捨て寸)ものがちょうど良いサイズです。
※ドイツなどでは1.2~1.7cmの捨て寸が推奨されていますが、日本で販売されている靴の特徴から、国内では1cm程度が良いと考えられています。
なぜ、靴の大きさが足の大きさと同じではいけないのか不思議に思われるかもしれません。
その理由は、私たちの足が立体的な構造をしているからです。体重がかかるとき、かかっていないとき、歩行時など、それぞれの状況に応じて上下左右に変化し続けています。
特に、歩いたり走ったりして足を蹴り出すときは、足の指で地面をしっかり捉えて蹴るために、足の指がそれぞれ動かせる状態であることが必要です。そのためには足のつま先に最低1cmの捨て寸がないと靴の内壁に足の指が当たってしまって思うように動かせず、動きに制限が生じかねません。
足の指がちゃんと動かせないと、うまく踏ん張ったり、蹴り出すことができなくなってしまいます。
つま先の厚み(トゥボックス)にも気をつけよう
私たちは歩いたり走ったりするときに、足の指を動かしています。これには足の指を反らす動きも含まれています。靴のつま先部分の空間に足の指を反らせる空間の高さがないと、爪や足の指にトラブルが現れる原因にもなります。
捨て寸が十分取られていても、高さが不十分だと足の指の動きの妨げになってしまうことがあります。そのため、靴のつま先部分にも指を動かせるだけの高さが必要になります。
【事例】
高齢のAさんから親指が痛くて、歩きたい気持ちになれないとご相談がありました。痛みのある親指は爪の周りが赤く少し腫れていました。
そこで、Aさんのはいていた靴を確認させていただいたところ、捨て寸がほとんどなく、靴のつま先部分も高さが低かったため、厚い爪が靴に当たってしまっていたのです。これがAさんの親指が痛む原因でした。
そこで、Aさんやご家族にお話しして、サイズを大きく、つま先部分にも指を動かせる高さがある靴に変えていただいたところ、後日「痛みが軽減し、足趾の腫れも引いた」といううれしい報告をいただきました。
高齢になると、Aさんのように爪が厚くなっているケースが多くなります。爪が靴に当たり、指を痛めてしまうことを避けるために、つま先の厚みが充分にある靴を選ぶように意識しましょう。
まとめ
今回ご紹介した靴の選び方のポイントをおさらいしましょう。
- 靴選びの最重要項目である「サイズ」は足長と足囲の両方が重要
- つま先が自由に動かせるトゥボックスの高さが必要
必ず正しく履くことをセットにして生活に取り入れることを意識していただくと、歩行の安定感が増し、つまずきやすさを低下させる効果が期待できます。
次回は、ほかの5つのポイントについて解説します。サイズが合っていて、トゥボックスがある靴を選んでも、適切に履くことができる靴でないと機能を発揮できません。
ぜひ、次回も楽しみにしていてください。