高齢者の歩行や運動時の安全性を高める方法の1つとして、「リハビリシューズ」の使用があげられます。しかし、どのリハビリシューズを選べば良いのかわからない方もいるのではないでしょうか。
リハビリシューズにはさまざまな種類があり、利用する方の状況によっておすすめできる機能が変わります。
今回は、リハビリシューズの種類と、状況にあわせたおすすめの選び方をご紹介します。最適なリハビリシューズを使用することで、より安全に運動や生活を送れるようになるでしょう。
リハビリシューズとは?
リハビリシューズとは、病気や怪我などでリハビリが必要になったときに使用される靴です。一般的な靴とは異なり、身体が不自由な方でも歩きやすいように開発されているのが大きな特徴です。たとえば、伸縮性がある、靴の着脱が容易に行えるなど、種類によってさまざまな機能が備わっています。
また、リハビリシューズのほかにも、日常生活でもスムーズに履けて安全に歩けるようにデザインされた「介護靴」と呼ばれる靴もあります。しかし、どちらも明確な違いはなく、日常生活でもリハビリシューズを使用することも珍しくありません。
リハビリシューズを履くメリット
リハビリシューズにはどのようなメリットがあるのでしょうか。リハビリシューズを履くメリットについて解説します。
怪我の防止になる
リハビリシューズのメリットの1つは、怪我の防止になる点です。リハビリシューズを使用すると安全に歩きやすくなるので、転倒の予防につながります。シューズの種類によってはつま先がそり返って、つまずきにくくなっているタイプもあります。
足に合わない靴を長期間履くと、外反母趾や靴ずれなどにつながる恐れもあるでしょう。足にフィットしやすいリハビリシューズであれば、そのような怪我も防止できます。
運動しやすい
リハビリシューズは、運動しやすいデザインになっています。リハビリシューズは着脱も容易で、歩きやすいように設計されています。また、種類によっては歩行時の蹴り出しや接地をサポートしてくれるシューズもあるでしょう。安全に運動できれば、その分リハビリに対してのモチベーションや効率の向上にもつながります。
足の状態にあわせて使用できる
足の状態にあわせて使用できるのも大きなメリットです。リハビリする方のなかには、片麻痺で装具を使用する方やむくみが出やすい方などもいるのではないでしょうか。リハビリシューズであれば、そのような方にも対応可能です。
リハビリシューズは、種類によって履き口の調整や柔らかい素材の使用など、誰でも履きやすいような工夫がされています。また、大きさが左右で異なるシューズの購入もできるので、どんな状態でも足にフィットするでしょう。
屋内・屋外用のリハビリシューズの特徴
リハビリシューズは屋内用・屋外用の2種類に分かれており、それぞれ機能が変わります。屋内用・屋外用リハビリシューズの特徴について解説します。
屋内用のリハビリシューズの特徴
屋内用のリハビリシューズは、軽く柔らかい素材でつくられているのが特徴です。これは屋内での移動がしやすいようにするだけでなく、履き心地をよくするためです。また、靴底には滑りにくい素材を使用しているため、靴下やスリッパよりも安定感があり、転倒防止につながります。シューズの着脱もしやすいので、屋内で頻繁に脱ぎはぎを繰り返してもストレスになりにくいでしょう。
屋外用のリハビリシューズの特徴
屋外用のリハビリシューズの特徴は、水をはじく撥水(はっすい)加工によって、天候に関係なく外出できる点です。滑りにくい加工になっているのはもちろん、シューズが脱げないように靴底が厚めにデザインされている種類もあります。また、つま先部分のそり返りがある種類の場合、さらに転倒のリスクを軽減できるでしょう。
このように、リハビリシューズは屋内用と屋外用によって特徴が異なることがわかります。リハビリシューズを購入する際は、履く場所にあわせた種類のものを選択することが大切です。
症状・状況に応じたリハビリシューズの選び方
その方の症状や状況によっても、おすすめのリハビリシューズの種類は変わります。それでは、ケースごとにおすすめしたいリハビリシューズの特徴についてみていきましょう。
足のむくみや腫れがみられる方
足のむくみや腫れがみられる方は、サイズの調整が簡単なリハビリシューズがおすすめです。とくにファスナー型のリハビリシューズは自由にサイズを調整できるため、フィット感を得られやすくなります。
また、シューズを履いたときの圧迫感を軽減するためにも、素材の柔らかい種類が望ましいでしょう。サイズがあわないと足の痛みや不快感などが強くなるので、なるべく調整しやすい種類を選択してみてください。
装具を使用する方
足の装具を使用する方の場合、装着したままでも履きやすいリハビリシューズを選びましょう。以下のような特徴を持つリハビリシューズがおすすめです。
- 履き口を調整しやすい
- 足の幅が広い
- インソールの取り外しが可能
なかには、片麻痺の影響で装具を使用する方もいるでしょう。その場合、足だけでなく手にも麻痺の影響が出ている可能性もあるので、片手でも着脱が容易なシューズにしましょう。靴ひもではなく、面ファスナーを使用したシューズであれば、片手でも着脱しやすくなります。
車椅子を使用する方
車椅子を使用する方であれば、滑りにくく足を保護できるようなリハビリシューズがおすすめです。車椅子を使用している方は、歩くのが難しい、あるいは介助が必要なケースが多いといえます。そのため、歩行をサポートする種類のものではなく、介助が楽になるような機能が備わっているシューズを選ぶことが大切です。
滑りにくいシューズであれば、車椅子からベッドやトイレに乗り移るときの安定性が高まります。また、足全体を保護できるシューズなら、車椅子のフットレストや車輪に接触した際の怪我を防げます。
足の感覚が低下している方
病気や怪我による原因で足の感覚が低下している場合、足を保護できるようなリハビリシューズを選びましょう。足の感覚が鈍いと、何かにぶつかったときに気づかず、知らないうちに怪我をしてしまう恐れがあります。
特に糖尿病の方の場合、足の傷からの感染によって組織が死んでしまう「壊疽(えそ)」のリスクもあります[1]。そのような状況を防ぐためにも、素材が丈夫な種類や足先が出ていないような種類のシューズがおすすめです。
足に痛みがある方
靴との接触によって足に痛みが出やすい方は、柔らかい素材でつくられたリハビリシューズがおすすめです。素材が柔らかいリハビリシューズであれば、圧迫感が軽減されて接触時に痛みが出にくくなります。締めつけが強くならないように、履き口のサイズを自由に調整できるような種類も良いでしょう。
一方で、痛みを避けようとしてシューズ全体のサイズを大きくすると、安定性が低下する恐れがある点にも注意してください。
用途にあわせたリハビリシューズを選択しよう
リハビリシューズは、高齢者や病気・怪我をした方でも安全に歩けるようにデザインされており、種類によって特徴や機能も大きく異なります。そのため、その方の状況によってどの種類のシューズがおすすめなのかは、大きく変化します。
【参考サイト・文献】
[1]糖尿病足病変(糖尿病情報センター)2023/10/13