「そんなに太ってはいないけど、足腰に自信がない」
「体重はそんなにないけれど、体型が太っている」
このような悩みを抱えている方は、もしかしたらサルコペニア肥満かもしれません。
筋肉は重く、脂肪は軽いため、肥満は体重だけで判断することはできません。
そこで、今回は高齢者が気をつけておきたいサルコペニア肥満について紹介します。
高齢になり、健康が心配な人や少し太ってきたと感じる人は、ぜひ参考にしてください。
サルコペニア肥満とは?
サルコペニア肥満とは、別名「隠れ肥満」とも言われ、見た目はそれほど太っているように見えないとしても、筋肉量の減少により脂肪の量が相対的に多い状態のことを指します。
サルコペニアは、「サルコ=筋肉」+「ペニア=減少」という意味です。主に加齢により、全身の筋肉量と筋力が自然低下し身体能力が低下した状態と定義されています。よって、サルコペニア肥満とは、筋肉が減少した状態の肥満と言えます。
よく肥満の指標としてBMIが用いられます。しかし、BMIは体重と身長だけで計算されるため、筋肉量や脂肪量は考慮されません。
そのため、BMIが正常であっても筋力量が少ない場合はサルコペニア肥満の状態である可能性があります。また、サルコペニア肥満は高齢者に多いため、高齢者の肥満は必ずしもBMIだけでは測れません。
サルコペニア肥満による体への影響
次にサルコペニア肥満が体に与える影響について解説をしていきます。
①基礎代謝が少なくなる
基礎代謝は筋肉量に比例します。そのため、筋肉量が少ないサルコペニア肥満の場合は基礎代謝が少なくなり、太りやすい状態になってしまいます。そのような状態が続くことによって太りやすい負のサイクルにはまってしまいます。
②免疫力が下がり病気になりやすくなる
免疫力は筋肉と深く関係します。免疫細胞は筋肉の中に多く蓄えられているグルタミンというアミノ酸によって活性化するため、筋肉量が減少してしまうと免疫力が低下すると言われています。
③認知機能が低下する
エビデンスとしては乏しいですが、サルコペニア肥満は単なる肥満よりも認知機能低下のリスクが高かったという研究報告もあるようです。
④転倒リスクが高くなる
筋肉量が少なく、その分脂肪がついているとうまく体を支えることができなくなり、転倒リスクが高まる可能性があります。脂肪のおもりをつけている状態を少ない筋肉で支えることになるので、バランスを崩しやすくなるのも当然だと思います。
⑤運動パフォーマンスが低下する、関節が痛くなる
筋肉量が減少していると運動パフォーマンスが低下します。関節が筋肉で支えているため、その関節が不安定になることで、例えば、変形性膝関節症などの病気になり関節が痛くなる原因になる可能性も高まります。
⑥さまざまな生活習慣病のリスクが上がる
サルコペニア肥満の状態が続いていても、見た目ではわからないこともあるのでさまざまな病気になりかけている可能性もあります。例えば、糖尿病、心疾患、脂肪肝、脳血管疾患などのリスクが高まる可能性があります。
サルコペニア肥満の原因と改善のための方法
サルコペニア肥満の主な原因は、バランスの悪い食事と運動不足が挙げられます。
例えば、体重を落とす(ダイエットする)ために炭水化物を抜いた食生活をしていると体重は落ちますが、一緒に筋肉も落ちてしまい、結果的にサルコペニア肥満になってしまう可能性もあります。
また運動不足の状態が続くと筋肉量が減少してしまう可能性があります。
それぞれの原因に対する改善方法を説明していきます。
食事療法
大切なことは以下のような種類をバランスよく毎回の食事で摂ることです。
- ご飯やパンや麺などの糖質
- 魚や卵、大豆などのタンパク質
- 野菜など
運動療法(リハビリ)
運動は軽く負荷をかけた運動をしてインナーマッスル(深いところにある筋肉)を鍛えることが大切です。
代表的な運動の具体的な方法としては以下のようなものがあります。
スクワット、椅子からの立ち座り スクワットはややきついと感じるくらいの負荷量で実施しましょう。スクワットを正しい姿勢でできない場合は、椅子から立ったり座ったりする運動から始めてみることをおすすめします。 階段昇降 自宅などの階段を使用して階段昇降を実施しましょう。階段昇降は運動強度が高いため、少しずつ無理しない範囲で増やしていくことをおすすめします。この運動も「ややきつい」と感じるくらいの回数で実施しましょう。サルコペニア肥満の予防・改善にはバランスの良い食事と適度な運動が最善の方法です。日頃の生活習慣を少しずつ見直して健康な体づくりを目指しましょう。