入院時情報連携加算とは

要件は厳格化

厚生労働省は、2024年1月の社会保障審議会・介護給付費分科会にて居宅介護支援事業所における入院時情報連携加算の見直しを決定しました。

この加算は、ケアマネージャーが担当する利用者が病院に入院する際、医療機関に情報を提供することで算定されます。その種類には(Ⅰ)と(Ⅱ)の2種類があります。

現行では(Ⅰ)が入院後3日以内、(Ⅱ)が入院後7日以内に情報を提供することが要件とされていますが、改定後には(Ⅰ)が入院当日、(Ⅱ)が入院後3日以内になります。なお、営業時間の終了後や営業日でない日に利用者が入院したケースについては、入院日の翌日でも算定できるような仕組みになっています。

報酬は引き上げられる

今回の改定では、厳格化に伴って報酬が引き上げられます。(Ⅰ)は200単位から250単位、(Ⅱ)は100単位から200単位と大きく拡充されました。

改定の目的として挙げられているのは、入院時の情報連携をさらにスピードアップすること。現状では、入院時情報連携加算を算定している事業者のうち、ケアマネージャーから医療機関への情報提供が1日以内のケースは43%、3日以内のケースは90.6%に上ると報告されています。

現状でも多くの事業者が算定していますが、厚生労働省としてはより迅速な連携を求めていると考えられます。

医療機関との関係性がポイント

入退院時の支援の大切さ

そもそも入院時情報連携加算によって迅速な情報連携が求められるのには、どのような理由があるのでしょうか。

この加算が設けられた理由には、在宅(施設)と入院での医療の差を埋める「入退院支援」というケアの考え方があります。

当然ながら在宅と入院では提供される医療の質だけでなく、その環境にも大きな違いがあります。特に高齢者は複合的な疾患や不調を抱えていることが多く、その心身状態は人によってさまざま。そのため、ケアの方針も個別性が高くなります。

一方で、医療機関では、専門的な治療をより多くの患者に届けるためにもできる限り早く退院してもらうことも大切になります。そこで必要性が高まったのが入退院支援です。

例えば、認知症で在宅介護を受けていた高齢者が、大きな骨折をして入院を余儀なくされたとしましょう。その際、医療機関の医師や看護師は骨折の治療についてはスペシャリストでも、認知症のケアについては詳しい状態がわからないため、適切な介護的なケアを提供できない可能性もあります。

適切な介護的なケアがない場合、認知症がより進行してしまうリスクが高まります。実際に退院までに認知症が重度化するなどのケースも少なくありません。

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そこで、入院時にあらかじめケアマネージャーから詳しい状態やケアの状況などを通達してもらうことで、より具体的な支援につなげていくことができます。

そのため、入退院時に医療機関と介護の連携を強化するため、ケアマネージャーを橋渡し役として情報連携を強化する狙いがあるのです。

医療機関側の入退院支援加算との兼ね合い

2024年は、介護報酬だけでなく診療報酬も改定される6年に1度の「ダブル報酬改定」になります。つまり、医療と介護を一体的に変革できるチャンスでもあります。

特に在宅介護では、医療機関と介護関連サービスの円滑な連携が欠かせません。そのため、介護報酬と診療報酬では、それぞれに対応する加算が少なくありません。

介護報酬における入院時情報連携加算に対応する診療報酬の加算には、入退院支援加算が挙げられます。

入退院支援加算を医療機関が算定するためには、現行で「退院困難な要因を有している患者」を(Ⅰ)の場合は3日以内、(Ⅱ)の場合は7日以内という期限が設けられています。これは現行の入院時情報連携加算のタイミングと同じです。

また、入退院支援加算は、患者の入院後に退院支援計画を立て、その計画に沿って円滑な退院に向けた入院中の療養支援を行なうことが求められます。

2024年度改定では、この退院支援計画の内容として「リハビリ、栄養管理、口腔衛生管理などを含む療養支援の内容」を含むことが明確に定められました。つまり、医療機関側の計画立案にはケアマネージャーによる入院前の状態に関する情報をより早く把握することが必要になるのです。

ケアマネージャーからの情報提供が遅れると、医療機関でも入退院支援加算を算定するための退院支援計画の策定が遅れるリスクが高まります。

介護報酬における入院時情報連携加算の日程を早めることは、医療機関での計画策定の時間を確保するうえで重要なポイントになるでしょう。

現場はどう対応すべきか

同一の連絡ツール導入などが必要か

医療機関側への情報提供をスムーズに行うためには、紙情報よりもデータで送付するほうが早く済むのは当然です。しかし、電子メールでは先方にきちんと送付され、データが開封されたかどうか送った側はわかりません。

そのため、メール送付後に電話連絡で確認するなどの二度手間が発生するケースもありました。

こうした手間を省力化するためには、同一のコミュニケーションツールを用いたデータの受け渡しがポイントになります。今では広く一般に利用されているため、導入のハードルは低いと考えられますが、介護・医療情報は秘匿性の高い個人情報のため、セキュリティ面も重要なポイントです。

そのため、一般で利用されるような無料ツールではなく、医療情報などに特化した同一のツールを医療機関とケアマネージャー側で用いるとより円滑な情報提供が可能になるでしょう。

活用しやすい補助金制度が必要か

今回のダブル報酬改定では、入院時情報連携加算のほかにも、医療と介護の連携を強化するためのさまざまな事項が含まれています。

例えば、すべての介護施設の運営基準に「後方支援の協力医療機関の指定」が義務づけられることも決まっています。

つまり、すべての介護施設において何らかの医療機関との連携が求められるようになるのです。

このようなルールから考えれば、各種介護サービス事業所と居宅介護支援事業所、医療機関がより一体的かつ安全に連絡を取り合う方法を模索する必要性が高まります。

今のうちから自治体などともよく話し合い、統一された連絡ツールの導入などを決めておくと良いのかもしれません。