「初任者研修がしんどい」と感じる3つの主な理由

講義内容が難しく、覚えることが多い

介護職員初任者研修は、介護の仕事に就くための基本的な知識と技術を学ぶ研修です。しかし、多くの受講者がしんどいと感じる最大の理由の一つが、講義内容の難しさと覚えることの多さです。

初任者研修のカリキュラムは、厚生労働省の指針に基づいて構成されており、合計130時間の研修時間が設けられています。

講義内容は多岐にわたり、介護の基礎知識から医学的な知識、介護保険制度まで幅広く学ぶ必要があります。特に、介護未経験者にとっては初めて耳にする専門用語や概念が多く、理解と暗記に苦労する場面が多々あるでしょう。

これらの知識は介護の質を高め、利用者の生活を支える上で非常に重要です。例えば、医学的知識があることで、利用者の健康状態の変化に早期に気づき、適切な対応をとることができます。

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出典:『令和4年介護サービス施設・事業所調査の概況』(厚生労働省)を基に作成

訪問介護従事者の状況を見てみると、初任者研修修了者が約40%を占めています。上位資格の取得を目指すためにも、まずは初任者研修にしっかりと取り組むことが大切です。

レポートや課題の提出が大変

初任者研修では、講義や演習に加えて、レポートや課題の提出が求められることもあり、これが「しんどさ」を感じる大きな要因の一つとなっています。介護未経験者にとっては、専門的な内容についてのレポート作成が大きな負担となりやすいのが現状です。

これらのレポートや課題は、単なる講義内容の要約ではなく、学んだ知識を実際の介護現場でどのように活用できるかを考察することが求められます。このプロセスでは、知識の定着と実践力の向上を図るうえで必要ですが、同時に多くの時間と労力を必要とします。

特に苦労する点として、以下のようなことが挙げられます。

  • 専門用語を正しく使用すること
  • 具体的な事例を想像して記述すること
  • 自分の考えを論理的に展開すること
  • 学んだ知識を実践にどう結びつけるか考えること
  • 提出期限に間に合わせること

レポート作成に苦戦している方には、以下のようなアプロローチをお勧めします。

  • 講義ノートを整理し、キーワードをピックアップする
  • 分からない点は積極的に講師や同じ受講生に質問する
  • 実際の介護現場をイメージしながら書く
  • 時間に余裕を持って取り組み、締め切り直前の焦りを避ける
  • 添削されたレポートは必ず見直し、改善点を次回に活かす

これらを取り組むことで、必ず将来の介護の現場で活きてきます。

レポート作成の「しんどさ」を乗り越えることで、より深い学びと実践力を身につけることができます。

実技演習への不安が大きい

初任者研修の実技演習は、講義で学んだ知識を実際の動作として身につける機会ですが、同時に不安も伴います。

移乗介助や食事介助などの技術は、利用者の日常生活を支える上で重要なものであり、同時に利用者の安全と尊厳に直接関わる繊細な支援となります。そのため、正確な介護技術の習得が求められ、多くの受講者が苦戦します。

しかし、ここで重要なのは、この「しんどさ」こそが成長の証だということです。実技演習でつまずき、失敗することは、むしろ貴重な学びの機会なのです。

例えば、移乗介助の練習中にイメージ通りに介助ができなかった経験は、実際の現場で利用者の安全を確保する上で重要な気づきになるでしょう。

実技演習への不安を軽減し、効果的に学ぶためには、以下のようなアプローチが有効です。

  • 事前に動画などで介護技術のイメージをつかむ
  • 自宅で家族や友人と練習する機会を設ける
  • 分からないことは積極的に講師に質問する
  • 失敗を恐れず、むしろ学びの機会として捉える
  • 同じ受講生と協力して練習する

実技演習を通じて身につけた技術は、単に介護の仕事だけでなく、日常生活でも活かすことができます。例えば、家族の介護が必要になったときに、学んだ技術を活用することができるでしょう。

実技演習の「しんどさ」は、将来の自分と支援する人々のためのものだと考えれば、その意義がより明確になるはずです。一つひとつの技術を丁寧に習得していくことで、確実に成長を実感できるでしょう。

「初任者研修がしんどい」と感じる理由と乗り越え方!研修の実態と成功のコツとは

働きながら初任者研修を受講することの難しさとその対策

仕事と研修の両立がきつい理由

フルタイムで仕事をしながら研修を受講する場合、時間的・体力的な負担が大きく、多くの受講者が「しんどい」と感じる要因となっています。

仕事と研修の両立がきつい理由として、以下のような点が挙げられます。

  • 時間的制約
    仕事の後や休日に研修を受講する必要があり、自由な時間が大幅に減少します。特に、夜間や休日に研修がある場合、プライベートな時間が削られることへのストレスが大きくなります。
  • 心身の負担
    仕事で疲れた後に研修を受けることは、身体的にも精神的にも大きな負担となります。集中力の維持が難しく、学習効率が低下する可能性があります。
  • 睡眠時間の減少
    研修の課題や予習・復習のために睡眠時間を削らざるを得ないケースも多く、慢性的な睡眠不足に陥りやすいです。
  • ワークライフバランスの崩れ
    研修期間中は仕事と学習に時間を取られ、家族や友人との時間、趣味の時間などが減少します。これにより、ストレスが蓄積しやすくなります。
  • 仕事への影響
    研修に集中するあまり、仕事のパフォーマンスが低下する可能性があります。また、研修のために有給休暇を使用せざるを得ないケースもあります。

しかし、働きながら研修を受講することには、以下のようなメリットもあります。

  • 実践と学習の融合
    仕事で得た経験を研修で学ぶ理論と結びつけることができ、より深い理解につながります。
  • 時間管理能力の向上
    限られた時間を効率的に使うスキルが身につきます。
    これは将来のキャリアにも活かせる重要な能力です。
  • 強い意志と忍耐力の獲得
    研修を受けることで自信が身に付き、業務上で直面する課題に向き合う力となります。
  • 即時的な学習の活用
    研修で学んだことを直ぐに仕事で試すことができ、学習の定着が早まります。
  • キャリアアップの機会
    現在の仕事を続けながら、新たなキャリアへの準備ができます。

効率的な時間管理のコツと具体的な学習計画の立て方

働きながら初任者研修を受講する上で、最も重要なスキルの一つが効率的な時間管理です。限られた時間を有効活用し、仕事、研修、そして私生活のバランスを取ることが、「しんどさ」を軽減し、充実した学びを実現します。

では、具体的にどのような時間管理の方法が効果的なのでしょうか。1日のタイムスケジュール例を見てみましょう。

  • 6:00 起床、朝食
  • 7:00-8:00 通勤時間を利用して教材を読む
  • 8:00-17:00 仕事
  • 17:00-18:00 帰宅時間を利用して音声教材を聴く
  • 18:00-19:00 夕食、休憩
  • 19:00-21:00 研修の課題や予習
  • 21:00-22:00 復習、翌日の準備
  • 22:00 就寝

このスケジュールの特徴は、通勤時間や隙間時間を有効活用していることです。また、研修の学習時間を確保しつつ、休憩時間も設けているのがポイントです。

定期的に学習計画を見直し、必要に応じて調整することが大切です。自分の進捗状況や生活リズムの変化に合わせて、柔軟に計画を修正していきましょう。

「初任者研修がしんどい」と感じる理由と乗り越え方!研修の実態と成功のコツとは

初任者研修のしんどさを乗り越えるための心構えとモチベーション維持法

研修修了者の体験談から学ぶ乗り越え方

初任者研修の「しんどさ」を乗り越えるためには、どのようにモチベーションを維持していくのかという視点も重要です。

時間管理の難しさや学習内容の理解、仕事との両立で難しさを感じる点もあるかもしれませんが、以下のような点を意識すると良いでしょう。

  • 積極的な姿勢
    分からないことはすぐに質問する、実技演習に積極的に参加するなど、受け身ではなく積極的に学ぼうとする姿勢が重要です。
  • 効果的な時間管理
    隙間時間の活用や優先順位の明確化など、限られた時間を効率的に使う工夫が必要です。
  • 周囲のサポート
    職場や家族の理解を得ること、同じ立場の仲間との交流など、周囲のサポートを積極的に求めることが大切です。
  • 継続的な努力
    日々の復習や自宅での練習など、継続的な努力が成果につながっています。
  • 前向きな心構え
    失敗を恐れず、それを学びのチャンスと捉える前向きな姿勢が重要です。

重要なのは、どんなに「しんどい」と感じても、乗り越えられない壁はないということです。多くの先輩たちも同様の研修を経験し、乗り越えて現場で活躍しています。

介護の仕事の魅力と初任者研修修了後のキャリアパス

初任者研修を乗り越えるためには、その先にある介護の仕事の魅力や、研修修了後のキャリアパスを明確にイメージすることが重要です。将来の自分の姿を思い描くことで、現在の困難を乗り越える強い動機づけになるからです。

まず、介護の仕事の魅力について、挙げていきましょう。

  • 人の役に立てる喜び
  • 利用者との心の触れ合い
  • 自己成長の機会
  • 社会的意義の高さ
  • 多様な働き方ができる

介護の仕事が単なる身体的介助だけでなく、人との深い関わりを持てることや自己実現の場であることは魅力だといえるでしょう。

次に、初任者研修修了後のキャリアパスを見ていきましょう。介護職のキャリアパスは多様で、個人の希望や適性に応じてさまざまな道が開かれています。

以下は一般的なキャリアパスの例です。

  • 介護職員(初任者研修修了)
  • 実務者研修修了
  • 介護福祉士
  • ユニットリーダー
  • サービス提供責任者
  • 事業相談員
  • 介護支援専門員(ケアマネージャー)
  • 施設長・管理者
  • このキャリアパスを進むにつれて、収入も増加していきます。介護職員の平均給与額の状況を見ると、初任者研修だけでも資格なしと比べて約3万円の差があります。

    「初任者研修がしんどい」と感じる理由と乗り越え方!研修の実態と成功のコツとは
    保有資格別介護職員の平均給与額
    出典:『認知症施策の総合的な推進について』(厚生労働省)を基に作成

    それだけではありません。キャリアアップに伴い、以下のような成長の機会があります。

    • 専門知識・技術の向上:より高度な介護技術や医療知識を習得できます。
    • マネジメント能力の獲得:チームリーダーや管理職として、人材育成や組織運営のスキルを磨けます。
    • 多職種連携の経験:医療職や福祉職など、様々な専門職と協働する機会が増えます。
    • 社会貢献の実感:より多くの利用者や職員に影響を与えることで、社会貢献の実感が強まります。
    • 自己実現の達成:自身の理想とする介護を実践し、後進の育成にも携わることができます。

    これらの成長の機会は、初任者研修で学んだ基礎知識や技術が土台となっています。また、介護職のキャリアパスは決して一本道ではありません。

    例えば、介護の経験を活かして福祉用具専門相談員になったり、介護施設の運営に携わるために経営学を学んだりする人もいます。介護の世界は、個人の興味や適性に応じてさまざまな可能性が開かれています。

    初任者研修を受講中の皆さんには、ぜひこの先にある多様なキャリアパスを意識してほしいと思います。しんどいと感じる時こそ、5年後、10年後の自分をイメージしてみてください。今の努力が、きっと今後の業務に活かせるはずです。

    そして、介護の仕事の本質的な魅力である「人の役に立つ喜び」や「心の触れ合い」を常に心に留めておいてください。これらの価値観は、どんなに技術や制度が変わっても変わることのない、介護の仕事の核心です。

    しんどいときこそ成長のチャンス!マインドセットの重要性

    初任者研修のしんどさを乗り越えるためには、適切な学習方法や時間管理も重要ですが、それ以上に大切なのが自分自身の心の持ち方、つまりマインドセットです。しんどいと感じる瞬間を、どのように捉え、どう向き合うかによって、研修の成果や自己成長の度合いが大きく変わってきます。

    では、具体的にどのようなマインドセットを持つことが効果的なのでしょうか。以下に、一例を紹介します。

    • 困難は成長の機会だと捉える
      しんどいと感じる瞬間こそ、自分が成長している証拠だと考えます。新しい知識や技術を習得する過程で感じるしんどさは、自分の能力が拡大している証なのです。
    • 失敗を学びの機会と捉える
      実技演習で失敗しても落ち込まず、そこから学ぶべきことを見出します。失敗は成功への重要なステップだと考えることで、前向きに取り組めます。
    • 長期的な視点を持つ
      目の前のしんどさだけでなく、研修修了後の自分の姿をイメージします。この研修が将来のキャリアにどのようにつながるかを常に意識することで、モチベーションを維持できます。
    • 小さな進歩を認識し、称える
      日々の小さな進歩を認識し、自分を褒めることが重要です。「今日は1ページ多く読めた」「新しい介護技術を1つマスターできた」など、些細な進歩でも自覚し、喜びを感じましょう。
    • 完璧を求めすぎない
      すべてを完璧にこなそうとするのではなく、まずは全体を把握し、徐々に理解を深めていく姿勢が大切です。「完璧にできなければならない」というプレッシャーから解放されることで、学びがより楽しくなります。
    • 仲間と競争するのではなく、協力する
      他の受講生と比較して落ち込むのではなく、互いに助け合い、高め合う関係を築きます。「一緒に頑張ろう」という姿勢が、モチベーションの維持につながります。
    • 「なぜ」を大切にする
      単に知識や技術を覚えるだけでなく、「なぜそうするのか」を常に考えます。理由を理解することで、学びがより深く、記憶に残りやすくなります。

    マインドセットの重要性は研修期間中だけでなく、介護の現場に出てからも大きな影響を与えます。難しい判断に迫られたとき、それを成長の機会として捉えられるかどうかが、長期的なキャリアの成功を左右するのです。

    この研修期間を通じて、知識や技術だけでなく、困難に立ち向かう力強いマインドセットも身につけていってください。それこそが、長く充実した介護職のキャリアを支える大きな力となるはずです。

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