新トレンド!? 「ペットと暮らせる」老人ホームに注目
いま、「みんなの介護」利用者の間で「ペットと暮らせる」施設が注目を集めています。
こうした施設は、「ペットと一緒に入居できるタイプ」と、「施設で動物が飼育されていて入居者が触れ合えるタイプ」の2種類に大別できますが、いずれにも共通しているのは老後を「ペットと暮らせる」ということです。
近年では、人と動物とのふれ合いを通じて心身をより健康に保つ ”アニマルセラピー” が世界的に注目されていることもあり、「ペットと暮らせる」ことを求める高齢者の方の声が「みんなの介護」にも多数寄せられています。
実際、国内外の最近の研究で、動物と触れ合うことは認知機能や運動機能の維持・改善や情緒の安定に繋がることが示唆されており、リハビリテーションの観点からも「ペットと暮らせる」ことに意義があるという認識が広がりつつあるようです。
「みんなの介護」掲載施設数をみても、「ペットと暮らせる(ペット・犬・猫可)」の老人ホーム数は増加傾向にあります。
2020年は+24件の増加でしたが、2021年には前年比+42件。さらに、2022年は8月現在ですでに前年比+146件の増加となっています。
関連:「みんなの介護」より「ペット可」の施設一覧
https://www.minnanokaigo.com/search/pet/
ペットと暮らせる老人ホームが多い地域は?
2022年8月29日時点では、「みんなの介護」には「ペットと暮らせる」老人ホームが全国で409件掲載されていました。
特に、どの地域に多いのかトップ10をランキングにまとめました。

1位は東京都で33件。次いで2位は神奈川県で29施設。そして、3位は大阪府で26施設となりました。
ランクインした上位の地域に共通しているのは、ペットの飼育頭数自体が多いということです。
例えば、東京都の場合、犬の登録頭数(厚生労働省発表)でも全国最多の約51万頭。トップ10入りした地域のうち、群馬県を除く全ての地域が犬の登録頭数でも全国トップ10入りしていました。
参考:都道府県別の犬の登録頭数と予防注射頭数等(平成26年度~令和2年度)|厚生労働省
https://www.mhlw.go.jp/bunya/kenkou/kekkaku-kansenshou10/01.html
「ペットと暮らせる」そのメリットは? 課題は?
「ペットと暮らせる」ことには入居される方にどんなメリットがあるのか? また、実際の施設運営においてはどんな課題があるのか?
専門のペットシッターのサポートが受けられる東京都杉並区のサービス付き高齢者住宅「ハートランド・エミシア久我山」さんにお話を伺いました。
―なぜ「ペットと暮らせる」ように環境を整えているのですか?
「代表が介護に関わって20年になりますが、一緒に暮らしていたペットと離れることがつらいと仰る高齢者の方を多く見てきました。
―入居者の方々は、もともと飼育されていたペットと一緒に入居されたのですか?
「大半の方はそうですが、入居後にペットを迎える方もいらっしゃいます。居室でペットと一緒に暮らしていなくても、看板犬の豆柴(フクちゃん)と随時ふれあいを楽しまれている方もいらっしゃいます」
―老人ホームでペットを飼育する上での課題や苦労はありますか?
「実は、ペットが増えると、ニオイの問題が出てきます。そこで、私たちの施設ではカーテンを消臭効果のあるものにしたり、空間除菌脱臭機を8台稼働させて重点的にフォローをしています。また、安全対策にも力を入れる必要があります。例えば、犬の場合は滑りやすい床が苦手なのでノンスリップ素材のものにしたり、コンセントの位置をあえて高くして犬が触らないようにするなどの工夫もしています」
―特に力を入れている独自の取り組みはありますか?
「仮に、入居される方がペットの面倒を見られなくなっても、専門の職員が適切にケアできるように取り組んでいます。一般的には、ペット可の施設でも、入居者の方自身がお世話することが前提となっているケースがほとんどです。仮に認知症などの症状が進行して適切にお世話が出来なくなっても大丈夫な体制を作ることで、安心してペットと一緒に入居して頂けるように努めています」
ハートランド・エミシア久我山さんでは、YouTubeでワンちゃんたちの日常も配信しています。
老人ホームで「ペットと暮らす」日常について、より詳しく知りたい方はぜひご覧になってみてください。
ハートランドエミシア久我山わん!チャンネル
https://www.youtube.com/channel/UCqjnrNfFWYODyRL8N7b6rVg
「ペットと暮らせる」は新たなトレンドとして定着するか?
確かに「ペットと暮らせる」ための環境を整えるためには専用の設備や人員への投資が必要となります。しかし、犬・猫だけではなく、うさぎやモルモットなどの小動物、さらには亀や魚と一緒に暮らせる老人ホームなど、きめ細やかな利用者のニーズに応えようとする施設が次々に登場しています。
動物とのふれあいはQOL(クオリティ・オブ・ライフ)の向上にも繋がるとされています。今後、様々な「ペットと暮らせる」は新たな老人ホームのトレンドになるかもしれません。
関連記事:
アニマルセラピーの効果は?動物を飼っている人は「とても健康」と感じ取っているデータも(ニッポンの介護学)