介護報酬・診療報酬の同時改定のタイミング

皆さん、こんにちは。厚生労働省老人保健課長の古元と申します。本日はこのような機会にお呼びいただきまして、本当にありがとうございます。

介護保険制度の改正について少しお話をさせていただきたいと思います。特に介護保険制度というのは、非常に幅の広いテーマですが、現場の皆様はご興味があるかなと思います。そういったところを中心に、少しお話をしてまいりたいと思います。よろしくお願いいたします。

まさに今、介護報酬改定の議論が進んでおります。その介護報酬改定についてを皮切りに、大きく4点に分けてお伝えしていきたいと思います。

まず、1つ目が介護報酬改定についてです。介護報酬改定は3年に1回。また、診療報酬改定は2年に1回ということで、6年に1度、この両方の改定が同時期になります。2024年の春はこの同時期の改定となるため、6年に一回の大きなチャンスということになります。

そして今行っている検討といたしましては、次の4つに分けられます。

①地域包括ケアシステムの深化・推進

②自立支援・重度化防止を重視した質の高い介護サービスの推進

③介護人材の確保と介護現場の生産性の向上

④制度の安定性・持続可能性の確保

介護報酬改定は社会保障審議会介護給付費分科会、診療報酬は中央社会保険医療協議会の総会が担っており、ホームページでは資料をご覧いただくことができます。

2023年11月、介護給付費分科会は週に1回ペース、中医協も週1~2回のペースで行われています。年末に向けて、今が勝負のときということで頑張っているところでございます。

これまで政府では、介護職員の処遇改善に向けた取り組みを随時行ってまいりました。介護職員の方の平均勤続年数というのは延長傾向にあります。また、最近の調査では、事業所が実施をしている職場環境改善の取り組みを、職員が認知をしていることによって、その職場の満足度や継続就業意向が高いレベルになるといった傾向も分かってきています。

職場環境の改善という面では有給休暇の取得も大切です。

それには身近な上司などからの声掛けや、グループで業務をすることによって属人化させない取り組みが有用であるという傾向があります。今回の改定でも、このような職場環境の改善に着目をして取り組んでいこうと思っています。

賃金の推移をごらんいただきますと、平成21年以降7回に渡って処遇の改善対策を行い、少しずつですけれども、全産業平均と介護職員の方の給与の格差が縮まってきている状況です。

【みんなの介護アワード2023レポート】2024年度の介護保...の画像はこちら >>

※当日のスライドより抜粋

また、平成19年度は平均勤続年数が3.1年でしたが、令和4年度には8年まで伸びており、職場環境が改善していることが見て取れます。

一方、離職の要因として一番多いのは職場の人間関係。この件に関して最も効果があった方策として、休養を取りやすくすることやご本人の意向に沿った職場環境の実現が重要です。

こちらについても、有給休暇取得の声かけや、業務の属人化解消への取り組みを進めていこうと考えています。

現状では介護職員の処遇改善に向けたさまざま加算を設けておりますが、そこに職場環境等要件にそのような職場環境をさらに改善する項目を追加することで、底上げを図れないかなとも考えています。

医療と介護の境目のない仕組みづくり

2つ目のテーマが「介護サービスと医療サービスの連携」です。皆さん、普段接していらっしゃる利用者の方は疾病をお持ちの場合もありますよね。どうしても提供者サイドが「私は医療関係者」「私は介護関係者」と線を引いてしまうということも耳にするのですが、そこを乗り越えていこうというのが、今回の同時改定の大きな課題になります。

リハビリテーションを例にお話をすると、まず、入院した方は入院中にリハビリテーションが行われます。退院後も必要な方には、速やかに介護保険によるリハビリテーションが行われることが望ましいのですが、必ずしも行われていないケースがあるため、仕組み作りを今回の改定の中で検討していきたいと思います。

また、リハビリテーション、口腔、栄養についての取り組みは更なる評価を検討しています。医療のリハビリテーションというのは機能の回復が中心ですが、介護保険になるとさまざまな社会参加を含めたアプローチが重要になってきます。利用者からすると、医療も介護も一つの大きな流れの中ですので、境目なく提供していく仕組みを目指していこうと考えています。

例を挙げると、退院後2週間未満に訪問リハビリテーションを開始された方は68%しかいらっしゃらなかったというデータがございます。2週間以内に開始すると機能回復の程度も高いということが分かっていますので、それまでにリハビリを開始できる体制が望ましいということです。

さらには介護保険のリハビリテーションの実施者の52%は、病院で行われてる医療のリハビリテーションの計画書を入手していないということで、それぞれの連続性を持てるように改善することを今回の改定では考えております。

もう一つ口腔に関して申し上げますと、要介護の高齢者のうち64%の方が歯科医療にかかる必要があるにもかかわらず、実際に歯科治療を受けた要介護者の方が24%というデータもあります。私たちとしてもこの点には問題意識を持っていますので、何とか改定の中でも、少し手当てをしていきたいと思っています。

さらには、要介護度が上がれば上がるほど低栄養の恐れのある方は増えていきます。やはり、リハビリテーションと口腔、栄養の3本柱を、今回もしっかり手当てしていきたいと思っています。

【みんなの介護アワード2023レポート】2024年度の介護保険制度改定におけるポイント
古元氏

医療機関との連携体制の構築

続きまして、高齢者施設と医療機関の協力機関の体制についてお話をしていきます。皆さんの事業所は、医療機関との連携体制はいかがでしょうか。コロナもありましたが、病院との連携を深めていくことが重要だと思っています。

相談や診断を受けられる体制を準備したり、必要な場合に入院できる約束を事前にしていただくことが大切です。ちょっと体調が悪いとすぐ救急車を呼んで入院させてしまうと、高齢者の方のQOLやADLは非常に悪化します。そのようなことを避ける必要があるのは、これまで私たちが学んだ教訓だと思います。

また、病院とどのような協力関係をとっているかも重要です。多くの事業所が施設の設立時にお約束して以降、なかなかその約束内容を更新していないというデータがあります。ですから、定期的に協力医療機関との連携をしていただくことは、皆さんにもお願いしていきたいなと思っています。

今回の同時改訂では、介護と医療の両方にニーズを有する高齢者の方への対応が急務でございます。口腔や栄養対策、ぜひ皆さんと力を合わせて取り組んでいきたいと思います。これからも皆さんと力を合わせて少しでも良い形をつくっていければと思いますので、ぜひ今後とも力を押していければと思います。本日はどうもありがとうございました。