奨学金制度とは?種類や給付対象についてもわかりやすく解説の画像はこちら >>


奨学金制度とは、家庭の事情や経済的理由で進学が困難な人に対して、学費を給付したり貸与したりする制度です。貸与型を利用する際は、将来の返済負担について考慮しなくてはなりません。



大学進学にかかる費用負担が増す中、多くの学生や保護者が奨学金制度の利用を検討しています。しかし「給付型と貸与型の違いがわからない」「どの機関が提供しているのか整理できない」といった声も少なくありません。

本記事では、奨学金制度とは何か説明した上で、利用可能な機関や給付対象についても解説します。

奨学金制度とは

奨学金制度とは、学習意欲があるにもかかわらず家庭の事情や経済的理由などで進学が困難な人に対して、独立行政法人や民間団体が学費を給付・貸与する制度を指します。

制度の主な根拠は、日本国憲法第26条第1項に定められている「教育を受ける権利」です。また、教育基本法第4条第3項には、能力があるにもかかわらず経済的理由によって修学が困難な人に対して、国・地方公共団体が奨学の措置を講じなければならないことが規定されています。

奨学金の種類

奨学金には、給付型と貸与型があります。それぞれの特徴について、押さえておきましょう。

給付型

給付型とは、返済義務のない奨学金のことです。返済の負担がかからない分、社会人になってから家計を圧迫する心配もありません。

一方で、給付型を受けるには、成績や収入面などでの要件を満たすことが必要です。また、申請する機関によっては、採用人数が限定されていることもあります。

さらに、給付型の受給が認められても、入学後の学習態度によって支援を打ち切られる可能性がある点に注意が必要です。

貸与型

貸与型とは、卒業してから返還していかなければならない奨学金のことです。毎月(もしくは毎月と半年ごと)一定額を返還する方法と、所得に応じて決められた額を返還する方法があります。

また、貸与型は無利子型と有利子型にも分類可能です。

利子の負担がかからない分、一般的に無利子型の方が有利子型よりも厳しい要件を設けています。

奨学金制度を利用できる機関

奨学金制度を利用できる主な機関は、以下の通りです。

・日本学生支援機構(JASSO)
・学校(大学・専門学校など)
・地方公共団体・民間団体

各機関の奨学金制度の特徴について、解説します。

日本学生支援機構(JASSO)

独立行政法人 日本学生支援機構(JASSO)とは、主に「奨学金事業」「留学生支援事業」「学生生活支援事業」の3事業を手がける、文部科学省所管の公的機関です。2004年4月1日に設立され、日本育英会が実施してきた事業を引き継いでいます。

JASSOの奨学金は、給付型の給付奨学金と貸与型の貸与奨学金です。貸与奨学金には、無利子で借りられる第一種奨学金と、有利子で借りる第二種奨学金があります。

また、2020年4月からは高等教育の就学支援新制度も始まりました。世帯収入の基準を満たし、学ぶ意欲があると認められれば、給付型奨学金と授業料・入学金の免除や減額により、大学や専門学校などの無償化を実現できる可能性があります。

学校(大学・専門学校など)

生徒が入学する大学・専門学校などで、独自に奨学金制度を設けている場合もあります。学校が取り組む奨学金は、給付型の占める割合が大きい点が特徴です。

2019年度の日本学生支援機構による「奨学事業に関する実態調査」によると、調査対象の学校における奨学金事業のうち、給付型の占める割合は83.2%でした。受給要件や受給可能な金額などについては、各学校によって異なります。

地方公共団体・民間団体

地方公共団体も、奨学金制度を設けている団体のひとつです。居住地や学校の所在地などの自治体で、奨学金を受けられる可能性があります。

また、成績や家庭の事情などによっては、民間団体からも奨学金を受給可能です。

卒業してから就職した企業で、奨学金の一部もしくは全部の返還を支援しているケースもあります。

なお、2021年4月より、企業が従業員の日本学生支援機構の奨学金返還を支援する際には、代理返還制度で企業から日本学生支援機構に直接送金できるようになりました。

奨学金の対象

利用する機関や奨学金の種類によって、受給できる人が異なります。

例えば、日本学生支援機構の奨学金に申し込むには、自身と生計維持者の収入基準が一定額を下回っていなければなりません。給付奨学金・第一種奨学金・第二種奨学金で、それぞれ収入基準が異なります。

なお、日本学生支援機構の「学生生活調査」によると、大学学部(昼間部)の学生のうち55.0%が何らかの奨学金を受給しているとのことです(2022年度調査結果)。

奨学金を利用する際の注意点

奨学金を利用するにあたっては、以下の点に気をつけなければなりません。

・使い道が決まっていることがある
・成績によって停止されることがある
・貸与型は将来の返済負担を考慮しなければならない

ここから、各注意点について解説します。

使い道が決まっていることがある

団体によって、奨学金の使い道が決まっていることがある点に注意が必要です。奨学金の利用を検討している団体の要項などを確認すれば、使い道が授業料などに限定されているかがわかるでしょう。

なお、一般的には奨学金の使い道は限定されていないため、授業料だけでなく通学費・食費・教材購入費・住居費などにも利用できます。ただし、奨学金が振り込まれる時期によっては、入学金には間に合わないことがあるでしょう。

成績によって停止されることがある

奨学金の受け取りが決まっても、入学後の成績などで要件を満たさないと停止されることがある点にも注意しましょう。

例えば、日本学生支援機構の給付奨学金は、習得単位数・GPA(平均成績)・出席率が一定水準を下回る場合に「警告」が出され、「警告」が続くと奨学金が「停止」もしくは「廃止」される可能性があります。



貸与型は将来の返済負担を考慮しなくてはならない

貸与型の奨学金制度の利用を検討している場合は、将来の返済負担を考慮した上で申し込みましょう。

受け取る金額が大きいと、その分返済負担も重くなり、卒業後の生計を圧迫する可能性があります。親子で話し合った上で、必要かつ返還が現実的な額を利用することが大切です。

なお、日本学生支援機構の奨学金は、経済困難などの事情で約束通りの返還が難しい時に、返還期間の延長と月々の返還額の減額を利用できる場合があります。

奨学金制度を利用する流れ

奨学金制度を利用する際の一般的な流れは、以下の通りです。

1. 各機関の奨学金制度の概要や条件について調べる
2. 奨学金を申し込む
3. 返済・返還を始める

ここから各手順について解説します。

1. 各機関の奨学金制度の概要や条件について調べる

奨学金を利用することを決めたら、まず各機関における奨学金制度の概要や条件について調べましょう。機関によって手続き方法や要件、申込時期などが異なるため、慌てないよう早めに調べておくことが大切です。

日本学生支援機構の場合は、予約採用と在学採用によっても、申込時期や方法が異なります。予約採用は進学前にインターネットで申し込みする手続きで、在学採用は進学後に在籍する学校に必要書類を提出する手続きです。

2. 奨学金を申し込む

時期が来たら、奨学金の申込手続きを進めます。必要書類を揃えて、指定された場所に提出しましょう。日本学生支援機構の奨学金を利用するための申込書類は、在籍する学校で受け取れます。

なお、日本学生支援機構の奨学金を申し込む際に、「機関保証制度」「人的保証制度」のどちらを利用するか決めなければなりません。機関保証制度は日本学生支援機構が指定する保証機関の連帯保証を受ける制度、人的保証制度は対象学生の父母や親戚などに連帯保証人と保証人になってもらう制度です。

3. 返済・返還を始める

貸与型の奨学金を利用する場合は、卒業後に返還を開始しなければなりません。

日本学生支援機構の奨学金は、貸与終了月(一般的には卒業学年の3月)の翌月から数えて7カ月後に口座振替で返還を開始します。

主な返還方法は、期間内に毎月一定額を返済する「定額返還方式」と所得に応じて決められた額を返還する「所得連動返還方式」です。2017年4月以降に第一種奨学金の奨学生として採用された場合に、「所得連動返還方式」を選択できます。

奨学金とは学費の給付や貸与を受けられる制度

奨学金制度とは、学習意欲があるにもかかわらず、家庭の事情や経済的理由などで進学が困難な人が、学費を給付や貸与を受けられる制度です。利用するにあたっては、さまざまな要件が定められています。

利用する際の主な注意点は、成績によって停止される可能性があること、貸与型の場合は返済負担を考慮しなければならないことなどです。卒業後に奨学金の返還で生計が圧迫されることがないように、利用前に妥当な額について家族で話し合っておきましょう。

参考:文部科学省「奨学金事業の充実」
参考:独立行政法人 日本学生支援機構「令和元年度奨学事業に関する実態調査」
参考:独立行政法人 日本学生支援機構「令和4年度学生生活調査・高等専門学校生生活調査・専門学校生生活調査」

ライター:Editor HB
監修者:高橋 尚
監修者の経歴:
都市銀行に約30年間勤務。後半15年間は、課長以上のマネジメント職として、法人営業推進、支店運営、内部管理等を経験。個人向けの投資信託、各種保険商品や、法人向けのデリバティブ商品等の金融商品関連業務の経験も長い。2012年3月ファイナンシャルプランナー1級取得。2016年2月日商簿記2級取得。現在は公益社団法人管理職。



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