固定資産税とは支払時期・計算方法や納税の流れについても解説の画像はこちら >>


固定資産税とは、1月1日時点で対象の固定資産を保有する法人・個人に対してかかる地方税のことです。固定資産の評価額に基づき決めた課税標準額に所定の税率をかけることで、税額を計算できます。



近年は不動産を所有する人だけでなく、相続や副業などで初めて固定資産を持つ人も増えています。「いくらかかるのか」「いつ支払うのか」「通知はどう届くのか」など、制度の仕組みや手続きに不安を感じるケースも少なくありません。

本記事では、固定資産税の基本的な仕組みはもちろん、計算方法や納税スケジュール、他の税金との違い、軽減措置や注意点まで、知っておきたいポイントをわかりやすく解説します。

固定資産税とは

固定資産税とは、対象の固定資産を保有する場合にかかる地方税です。ここから、固定資産税の対象となる固定資産や納税義務を負う人、納税時期について解説します。

対象となる固定資産

固定資産税の対象となる固定資産は、以下の通りです。

・土地
・家屋
・償却資産

土地の具体例として、住宅地や田・畑、山林などが挙げられます。また、家屋の具体例は住宅や店舗、倉庫などです。

償却資産とは、土地・家屋以外で事業に使用できる資産を指します。具体例は、事業用の車両や運搬具、備品などです。会社に勤める給与所得者でも、副業などで償却資産を所有しているケースはありえます。

納税義務者

固定資産税の納税義務者は、対象の固定資産を所有している個人や法人です。1月1日時点で所有者とみなされる人(課税台帳に登録されている人)に対して、固定資産税がかかります。

また、建築途中の家屋には固定資産税がかかりません。例えば、1月1日時点で所有する土地の上に住宅を建てている途中の場合は、土地に対してのみ固定資産税がかかります。



総務省によると、2023年度時点で固定資産税を納付した人は、土地に対して4,167万人、家屋に4,255万人、償却資産に490万人でした。

納税時期

一般的に、固定資産税の納税時期は年に4回で、6月・9月・12月・2月に分けて支払います。納税者が希望する場合は、一括納付も可能です。

納期については、各市町村の条例で定められています。気になる場合は、毎年4~5月(東京都は6月)に届く納税通知書などで確認するとよいでしょう。

なお、自治体によって納税通知書の発送日と1回目の納期の間隔が短いことがあるため、納付に遅れが生じないよう注意が必要です。

固定資産税と他の地方税の違い

地方税は、生活に欠かせない行政サービスにかかる費用を住民で負担するための税金です。固定資産税以外にも、自動車税や都市計画税などの地方税があります。

ここで、固定資産税と自動車税・都市計画税との違いについて、押さえておきましょう。

自動車税との違い

固定資産税と自動車税の主な違いとして、課税対象が挙げられます。

固定資産税が1月1日時点で土地・家屋・償却資産の所有者に対してかかる税金であるのに対し、自動車税は4月1日時点で自動車を所有する人に対してかかる税金です。そのため、自家用車を所有している場合は、固定資産税ではなく自動車税がかかります。

また、固定資産税は4期に分けて支払えるのに対し、自動車税は年に1回まとめて支払うことが原則です。

都市計画税との違い

税金がかかる範囲が、固定資産税と都市計画税の違いとして挙げられます。

都市計画税とは、市町村の定める地域における土地や家屋にかかる税金です。そのため、エリアによって両方かかる場合と、固定資産税しかかからない場合があります。



また、税金を徴収する目的も、違いのひとつです。固定資産税は普通税で税収の使途が定められていないのに対し、都市計画税は目的税のため、公共施設の整備など決められた事業に使われます。

なお、固定資産税と都市計画税が両方かかる場合は、一緒に課税されることが一般的です。都市計画税の概要について詳しく知りたい方は、以下の記事を参考にしてください。

都市計画税とは?計算方法や固定資産税との違いについても解説

固定資産税額の計算方法

固定資産税を計算する際の一般的な流れは、以下の通りです。

1. 固定資産を評価する
2. 評価額に基づき課税標準額を決める
3. 課税標準額に税率をかける

ここから、各手順ですることについて詳しく解説します。

固定資産を評価する

各市町村で、総務大臣が定めた基準に基づき、固定資産の評価額を決めています。土地・家屋は3年ごとに評価替えし、償却資産は毎年評価替えすることが原則です。

評価方法は、固定資産の区分などによって異なります。例えば、宅地の評価額の目処は、地価公示価格の7割です。また、家屋の場合は再建築価格に経年減点補正率などの指標をかけて評価額を計算します。

評価額に基づき課税標準額を決める

各固定資産の評価額に基づき、課税標準額を決めます。

住宅用地以外の宅地の場合は、原則として評価額に70%をかけた額が課税標準額です。住宅用地は、原則として200平方メートル以下の部分は評価額の6分の1、200平方メートルを超える部分は評価額の3分の1として課税標準額を計算します。

例えば、評価額が840万円で190平方メートルの住宅用地を所有する場合、課税標準額は140万円です(840万円 ÷ 6)。

ただし、例外となる場合もあるためあくまで参考としてください。

また、家屋については、評価額をそのまま課税標準額とすることが原則です。

課税標準額に税率をかける

課税標準額に所定の税率をかけた額が、固定資産税額です。

税率は1.4%が原則ですが、各市町村は必要に応じて条例を定めることで、異なる税率を設定できます。例えば、課税標準額が140万円で税率が1.4%の場合は、固定資産税額は1.96万円です。

なお、計算過程で課税標準額に千円未満の端数がある場合はその端数を切り捨て、税額に百円未満の端数がある場合はその端数を切り捨てます。

固定資産税に関する情報を確認する方法

毎年自宅に送られてくる納税通知書を見れば、さまざまな情報を確認できます。

納税通知書の1枚目には、所有者名・納付期限・課税標準額・合計税額などが記載されていることが一般的です。また、納税通知書の中には課税明細書も含まれています。課税明細書に記載されているのは、各土地・家屋の所在地・課税標準額・面積・適用される特例などです。

固定資産税の納税方法

固定資産税の納税方法は、主に以下の通りです。窓口支払以外の場合は、一般的に領収書が発行されないため注意しましょう。

・役所・金融機関・コンビニエンスストアなどでの窓口支払い
・口座振替
・クレジットカード払い
・スマートフォン決済

なお、年の途中で不動産を売却して現在は所有者でなくても、1月1日時点で所有していれば固定資産税を納付しなければなりません。そのため、不動産売買時に買い手が代金と一緒に固定資産税の日割り分を売主に対して払うことが一般的です。

固定資産税を滞納することのリスク

納付を失念していた場合や、資金に余裕がなく固定資産税の納付期限に間に合わない場合、延滞金が発生します。2025年時点では、延滞して1カ月以内の場合は年2.4%、1カ月を超える場合は8.7%を納付額にかけた金額が延滞税です。



また、固定資産税の滞納を続けると、差し押さえされる可能性があります。対象の固定資産を所有している場合は、支払いを失念しないよう注意が必要です。

固定資産税の軽減につながる制度の例

以下の制度を適用して、固定資産税を軽減できることがあります。

・小規模住宅用地の特例・一般住宅用地の特例
・新築住宅の軽減措置
・認定長期優良住宅の特例

ここから、各制度を紹介します。

小規模住宅用地の特例・一般住宅用地の特例

住宅用地には小規模住宅用地の特例と一般住宅用地の特例が適用されるため、税負担を軽減できます。小規模住宅用地は住宅用地で住宅1戸につき200平方メートルまでの部分、一般住宅用地は小規模住宅用地以外の住宅用地のことです。

課税標準額の決め方で説明した通り、原則として200平方メートル以下の部分は評価額の6分の1、200平方メートルを超える部分は評価額の3分の1として課税標準額を計算します。

新築住宅の軽減措置

新築住宅の軽減措置とは、床面積についての要件を満たす新築住宅を購入した場合に、家屋にかかる固定資産税を軽減できる制度のことです。

該当する場合は、課税される年度から3年度分(3階以上の耐火・準耐火建築物は5年度分)、固定資産税額の2分の1が減額されます。ただし、1戸あたり120平方メートル相当までが減額の限度です。

例えば、面積が110平方メートルで税額1万円であれば、軽減措置で5千円まで減額できます。

認定長期優良住宅の特例

認定長期優良住宅の特例とは、新築した住宅が認定長期優良住宅に該当する場合に、家屋にかかる固定資産税を軽減できる制度のことです。

該当する場合は、課税される年度から5年度分(3階以上の耐火・準耐火建築物は7年度分)、固定資産税額の2分の1が減額されます。ただし、新築住宅の軽減措置と同様に、1戸あたり120平方メートル相当までが減額の限度です。

なお、認定長期優良住宅とは、バリアフリー性・耐震性・省エネルギー性などで定められた条件を満たし、認定通知書を受け取っている住宅を指します。



固定資産税とは固定資産にかかる地方税

固定資産税とは、土地・家屋・償却資産を保有する場合にかかる地方税です。1月1日時点で対象の固定資産を所有している人が、税金を支払わなければなりません。

固定資産税に関する内容は、毎年4~5月(東京都は6月)ごろ送られてくる納税通知書で確認できます。納付期限に遅れることがないように、通知書が届いたら必ず内容を確認しましょう。

参考:総務省「固定資産税」
参考:総務省「加算金、延滞金、還付加算金」
参考:東京都「固定資産税・都市計画税(土地・家屋)」

ライター:Editor HB
監修者:高橋 尚
監修者の経歴:
都市銀行に約30年間勤務。後半15年間は、課長以上のマネジメント職として、法人営業推進、支店運営、内部管理等を経験。個人向けの投資信託、各種保険商品や、法人向けのデリバティブ商品等の金融商品関連業務の経験も長い。2012年3月ファイナンシャルプランナー1級取得。2016年2月日商簿記2級取得。現在は公益社団法人管理職。

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