「しつらい」とは行事の意味や願いを、思いを込めてそなえるという形でもてなすこと。『趣味の園芸 やさいの時間』では9月号から、しつらい教室「食和家(しょくといえ)」を主宰する大田サチさんの連載「四季折々のやさいのしつらい」がスタートしました。
自然からの頂きものである野菜や果物、植物を「盛(も)りもの」と言います。自然の恵みに感謝し、季節を感じてみましょう。第1回目は9月9日の「重陽(ちょうよう)の節供(せっく)」を取り上げます。

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今月の「しつらい」は九月九日「重陽の節供」です。中国の陰陽(いんよう)思想では奇数を陽、偶数を陰と考え、最大の陽数である九が重なる重陽の節供は「菊節供」とも言われ、菊酒を飲み、長寿を願ったとされています。
平安時代、宮中では、一夜、菊の花に真綿をかぶせ、九月九日早朝に菊の香をいっぱい含んだ綿を体にあて、若さを願った「菊の着綿(きせわた)」という行事が執り行われました。

重陽の節供の盛りものでは、会津の伝統野菜「小菊かぼちゃ」を菊に見立てています。自然の色はじつに綺麗(きれい)です。菊玉も作りました。そして茄子(なす)。しつらいに茄子はよく登場します。「物事が成しえますように」と願う気持ちを託します。
仕上げに菊酒もそなえました。このように、しつらいでは自分の思いが成しえますようにと願い、皿にさまざまな物を盛ります。
自然のものと接するとなぜか、楽しく穏やかな気持ちになるものです。身近なもので「しつらい」の初めの一歩を行ってみてください。
■『NHK趣味の園芸 やさいの時間』2014年9月号より