▶︎すべての画像を見る

アメリカを代表するブーツブランド、レッドウィング。

彼らはその長い歴史のなかで、多くの銘品を生み出した。
それらが今なお愛され続けるのは周知の事実だ。しかも、アーカイブに改めて光を当てる「アップサイクルプロジェクト」も始まった。
こちらの記事もチェック!
▶︎パリコレでカニエが履いていた噂のブーツを拝見!
▶︎【保存版】レッドウィングの主要品番を徹底解説!
▶︎レッドウィング「アップサイクルプロジェクト」を深掘りそこで今回は、代表作・アイリッシュセッターにフィーチャー。過去作と現行品とを徹底的に比較していく。

話を聞いたのはこの人!

40年前と今のレッドウィング「アイリッシュセッター」を徹底比較!  その違いは……

阿部聖也●レッドウィング・ジャパンのアジア マーケティング マネージャー。ブランドのオフィシャルYouTubeのMCも務めている。


ということで、レッドウィングのアジアマーケティングマネージャーを務める阿部聖也さんを直撃。
「用意しました」と差し出されたのは、こちらの875だ。

40年前と今のレッドウィング「アイリッシュセッター」を徹底比較!  その違いは……



あれ? アイリッシュセッターじゃないの?

「875は1950年代にリリースされた大定番の6インチブーツでして、アイリッシュセッターという名前は使っているレザーの色に由来します。いわゆるアイリッシュセッターといえばこちらで間違いないのですが……」。

と、なにやら複雑なご様子。実は、アイリッシュセッターと呼ばれるモデルには紆余曲折があり、本国アメリカでは一度“ディスコン”になった背景も。その後「アイリッシュセッター」という名前の別ブランドとして立ち上がったりするなど、事情が入り組んでいるのだ。


それでは気を取り直して、こちらの875について聞かせていただこう。


40年前と今で、実はほとんど変わってなかった!

40年前と今のレッドウィング「アイリッシュセッター」を徹底比較!  その違いは……

左が1982年に発売された875、右が2022年の現行モデルだ。


「今回アーカイブとしてお持ちしたのは、1982年に作られた875です。会社の倉庫で保管しているデッドストックの状態ですが、今から40年前の靴ならではの味が出ています。対してこちらが、ジッパーユニットが付いた2022年の現行モデル。で、いきなりで恐縮なんですが、基本的にはほとんど違いはありません!」。

 
40年前と今のレッドウィング「アイリッシュセッター」を徹底比較!  その違いは……



え! そんなはずじゃなかったんですが……。


「厳密にいえば、アッパーの質感であったり、年代によって革の感じが変わっているのは確かです。例えば今日お持ちした2つのブーツですが、使っているのは同じ種類の革。にも関わらず微妙に違って見えるのは、牛の飼育方法など環境そのものが異なるからです。

本当に細かいことを言えば、甲の部分のステッチなどにも若干の変化はあります。でも、大きな変更やアップデートは一切していないんです。あとは、製造された年代によってアッパーの刻印の有無や種類は異なります」。


 
40年前と今のレッドウィング「アイリッシュセッター」を徹底比較!  その違いは……



ソールを見ると古いほうが少し黄色っぽく感じるが、これは経年変化によるもの。もとは現行品同様のホワイト色だったそうだ。波の山の数もほぼ一緒。

「スニーカーだと加水分解が起きがちですが、875のトラクショントレッドソールは加水分解しません。ただし、どうしても硬化するので、ソールの返りが弱くなってしまいます。ですので、古くなったら新しいソールに交換していただくことを推奨いたします。
今もオフィシャルのロゴが入った自社製ソールは、昔からまるで変わりませんから」。

とはいえ何か違いはあるでしょうと食いさがると……。

40年前と今のレッドウィング「アイリッシュセッター」を徹底比較!  その違いは……


 
「年代ごとに異なる点といえば、ブーツの内側に付いたタグですね。この古いモデル(写真右)には、タンの裏にアイリッシュセッターのタグが付属しています。一方の現行品(写真左)のタグは先ほどのいわゆる“犬タグ”ではなく、レッドウィングの“羽ロゴ”が記されています」。

犬タグは年代によってバラバラで、そのタグを見ることで発売の年代がわかるようになっている。
ちなみに羽ロゴも2006年のアップデートにより、羽の視認性を高めたものに変わっているとか。
--{}--

現行モデルはカスタマイズして楽しもう!

それではそろそろ、最初から気になっていた現行品に付くジッパーについて教えてもらおう。

40年前と今のレッドウィング「アイリッシュセッター」を徹底比較!  その違いは……



「2年前くらいに登場したディテールですが、紐を結ぶ必要がないため着脱がとても楽になります。もともとはレッドウィングのファイヤーマンブーツなどにも用いられていた仕様ですが、875に採用されたきっかけは諸説ありますね(笑)」。

つまりは、ジッパーユニットの装着は875の歴史上でも類を見ない大幅アップデート。着脱が楽なうえ、デザインのアクセントにもなるグッドディテール。我々にとって大歓迎の進化である。

「今日は新旧の違いをわかりやすくするために装着していますが、そもそもジッパーユニットは別売りのパーツです。あくまでカスタムの一部として楽しんでいただければと思っています!」。


今回、2つの875を比較して出た結論はなんと、“ほとんど変わっていない”というもの。となると、完成された逸品にさらなる味を付与するのは、ともに歩む年月だけ。それもまた、ロマンだ。