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自身のメンタルダウンの経験を活かし、ココロの相談アプリ「メンタリー」を作った西村創一朗さん。

そして同じくうつ病の経験を持つ小林宣文さん、石井大樹さんを交え、ストレスマネジメント術について教わる本企画。


前編に続き、ここではストレスの原因そのものの対処法を伺った。

キーワードは“コーピング”。気づくべきストレスの原因とその対処法

メンタリー 代表
西村創一朗さん Age 34
リクルート在職中に株式会社ヘアーズを創業。パラレルキャリアの実践者として活動後、2017年に独立。同年に双極性障害を発症し、3度のメンタルダウンを経験。自身の経験をもとに、’22年にココロのオンライン相談アプリ「メンタリー」をリリース。4児の父でもある。
キーワードは“コーピング”。気づくべきストレスの原因とその対処法

メンタルヘルス支援団体アールイー 代表
小林宣文さん Age 37
自動車メーカーなどを経て精神疾患領域の創薬ベンチャーを設立。2020年にうつ病を発症し退職。回復後はメンタルヘルス支援事業と並行し、フリーランスとしても活動を開始。ブログに書いた闘病記を西村さんが読んだことがきっかけでメンタリーの公認メンターとしても活動中。
キーワードは“コーピング”。気づくべきストレスの原因とその対処法

企業役員
石井大樹さん Age 31
自身が設立したITベンチャー企業の代表取締役の在職中にうつ病を発症。1年半にわたる闘病ののち、回復にいたる。
事業を譲渡したあとはIT系企業の役員に就任。西村さんとはSNSで知り合い、公認メンターにスカウトされた。現在は育休を取得し、第一子の子育てに奮闘中。

悩みやストレスに上手に対処するコーピングとは?

編集部 悩みやストレスの原因そのものにうまく対処する方法はないものでしょうか?

西村 あります。それが「コーピング」です。簡単に言えば、ストレス要因そのものへの直接的対処です。「問題焦点型」「情動焦点型」「解消型」の3つに大別できます。


「コーピング」:ココロの疲れの因子を取り除くアプローチ
英語で「うまくやる」「対処する」という意味の言葉「cope」に由来するコーピングは、ストレスへの対処をうまく行うこと。

ストレスの原因であるストレッサーそのものに働きかける問題焦点型コーピング、ストレッサーに対する自身の反応を変える情動焦点型コーピング(ストレッサーそのものに働きかけられない場合でも効果を発揮する)、好きなものや趣味に打ち込む解消型の3つに分けることができる。
編集部 問題焦点型とはどういう意味ですか?

西村 簡単に言えば、ストレッサー(ストレスの原因)自体に働きかけること。たとえば、会社の上司からのプレッシャーがメンタル不調の原因だとしましょう。この場合、上司と直接話し合ったり、上司と距離をとったりすることも問題焦点型コーピングの対処行動のひとつです。

編集部 最近は企業のコンプライアンスも厳しくなっていますが、社風や上司の人柄によっては直接働きかけるのは難しい気も。


西村 問題焦点型コーピングは原因そのものを取り除くことが目的。そのため、他者や周囲の環境に働きかける必要があり、難しい場合も。それなりに労力も必要です。また、大切な人の死や別れといった問題にも対処が難しくなります。その点、情動焦点型コーピングは、他者や環境ではなく、自分に対するアプローチです。

編集部 ストレッサーに直接対処しないんですね?

西村 たとえば、上司がプレッシャーをかけてくる場合、相手の言動をあえてポジティブに捉えてみる。
「もしかしたら、上司は自分に期待しているのではないか」といったふうに。こうしたストレスの要因の解釈や認知を変える手法はリフレーミングと呼ばれています。

編集部 なるほど。自分のココロの持ち方を改めてみる。自分の思い込みで悩んでいる場合もありますしね。

西村 ほかにも、誰かに話すことで感情を吐き出すというメソッドがあります。
オーシャンズの読者なら、好きなスポーツや趣味に打ち込んでストレスを発散するという解消型もおすすめです。

編集部 なるほど。メンタリーで経験者に話を聞いてもらったり、対話をするのは、リフレーミングや感情を吐き出すことにつながりますね。
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ひとりで抱え込み思い込むことがいちばん危ない

キーワードは“コーピング”。気づくべきストレスの原因とその対処法



西村 そのとおりです。公認メンターは同じ経験を持つ人だから、気持ちをわかってもらいやすい。それに実生活で関わりがない人だから、気兼ねなく本音を話せます。

編集部 メンタルヘルスの問題を他人に話すハードルが下がります。

石井 それぞれの経歴やバックグラウンドもさまざまなので、仕事の復帰や今後のキャリアなど、精神科医やカウンセラーには相談しづらいことも話すことができるはず。実際、私は会社を経営していたので、経営者の相談によく回答しています。悩みを投稿すれば、複数のメンターが回答できますから、いろいろな体験談や意見を聞くことができます。

小林 また、投稿された悩みはサービスに登録したユーザーであれば、誰でも見ることが可能です。共感を示す「わかるボタン」を通じて、相談者はひとりではないという安心感を得ることができます。

編集部 心強そうですね。しかも、無料で投稿できるなんて!でも、個別の相談を望む人もいるのでは?

西村 そんな方のために公認メンターによる個別相談も用意しました。こちらは有料ですが、他人の目を気にすることなく相談できます。

小林 人と話して得る“気付き”で、気持ちが楽になることは少なくありません。メンタルダウンしているときに人と話していると、自分が考え方に“ロック”を掛けていることに気付くことがあります。そのロックを外すと、ウソみたいに気持ちが軽くなることがあります。

石井 話すのもいいですが、書くのもいいですよ。僕はメンタルダウン中、紙に感情を書き出すジャーナリングという作業をよくやっていました。ごちゃごちゃしていた気持ちが整理され、ずいぶん楽になれました。

小林 毎日歯を食いしばって働いている人に、あえて言いたい。「限界を感じたら、逃げても大丈夫なんだよ」と。私も退職して、今は別の仕事をしていますが、ココロもカラダも軽くて、毎日充実しています。戦略的な撤退は決して敗北ではない。何度でも復活してやり直せばいいんです。

石井 同感です。会社を辞めても、意外となんとかなるもの。社会復帰できたあと、僕はこう思うようになりました。自分の感情を優先することで気持ちが楽になる。最低限の責任感は持ったうえで、これからは自分自身の感情を優先しようと。今は背負っていた重い荷物を下ろしたように気持ちが軽いです。

西村 気持ちが落ち込んでいるときにいちばんやってはいけないのは、問題を自分ひとりで抱え込み、勝手に「〇〇に違いない」というふうに思い込むこと。私自身、そのせいで3度もメンタルダウンを経験しました。でも、その失敗があったからこそ、だんだん自分という乗り物をうまく乗りこなせるようになれたんです。同じような辛い経験をする人がひとりでも少なくなるよう、レジリエンスとコーピングを正しく啓蒙していきたいですね。


ひとりで抱え込まないために……
ピアサポートに特化したココロのオンライン相談アプリ

キーワードは“コーピング”。気づくべきストレスの原因とその対処法

初回利用500円[15分]、通常利用1980円。https://lp.mentally.app


精神科医・日本医師会認定産業医の監修のもと開発されたココロのオンライン相談アプリは、「思っていることを素直に表現できる」「ひとりではない安心感を得られる」「継続的な対話を通じて不安を解消できる」という3つのUXコンセプトに基づいて設計されている。

登録すると約70人の公認メンター全員に悩みを相談できる(無料)。登録者はほかの相談者の悩みを見ることができ、「わかるボタン」を通じて共感を示すことも可能だ。

また、公認メンターが1対1で悩みを聞いてくれる個別相談も。