軽んずべからず「軽自動車」
日本が世界に誇るマイクロカー「軽自動車」。普通車なみの機能を持ってバリエーションも豊富、しかも何かと遊べる要素も満載で、国内の新車販売台数の約4割が軽自動車という事実もある。

決して軽んじちゃいけない「軽自動車」の魅力にズームイン!

人は制約があるほど燃える。サイズや排気量が決められている軽自動車の中には、まさにそんなチャレンジ精神が溢れ出た車が多い。

前編に続いて今回の後編では、小さな車体だからこそ、何か一芸に秀でたユニーク車を作りたかった! そんな開発者の声が聞こえて来そうな軽自動車の名作をご紹介。


「ジャングルでも、ジャングルじゃなくても楽しい!」
ダイハツ・フェローバギィ(1970年)

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戦後復興を果たし、家族や仲間と遊びに出かける「レジャー」という概念が日本に定着し始めた昭和40年代に限定100台で発売されたフェローバギィ。

ボディは強化樹脂製で2人乗り。屋根として付けられる幌も用意された。普通バギィは遊ぶ場所まで車に載せて運ばないといけないけれど、これならサバンナでも密林でも、好きなところへ自分で運転していける。

「そんな所に行かないよ」って? いやいやこれならコンクリートジャングルを走っても楽しいに決まってる。


「“いいとこ取り”とはこのことです」
ダイハツ・ハイゼット デッキバン(2004年~)

重すぎる想いを載せたクセモノ軽が示す、未来の車の可能性

約30年前に“軽”で「冷蔵庫を運びたい」というニーズから生まれたと言われている、4人乗りピックアップ軽トラ。

家族4人で乗れて、幅1360mm、奥行き850mmのデッキは意外にたくさん荷物が載る。デッキなら水も汚れも気にせず、背の高い家具や家電もOK。さらに後部座席を倒せば室内の収納も確保可能というから、泥や水が避けられない外遊び好きや、荷物のサイズが気になるキャンパーまで、使い勝手◎な軽トラなのだ。細道に入る消防団が消防車のベース車にしたり、獲物を載せたい猟師も好んで使うというから、現在も4代目が生産中という人気も納得だ。


「本田宗一郎を超えろ!」
ホンダ・バモス(1970年~)

重すぎる想いを載せたクセモノ軽が示す、未来の車の可能性

ダイハツのフェローバギィが、100台限定で販売されたのに対し、ホンダが月2000台の販売計画まで立てて本気で売り出したのがバモスだ。

2人乗りと4人乗りを用意するなど、フェローバギィより実用的で、レジャーというより建設現場や工場、農地や牧場など事業用途を見込んだのだが、わずか3年で生産終了。

ドアすらない独特のデザインは、まさにオンリーワン。これを楽しめたら、その遊び心は本田宗一郎を超えたかもしれない。


「安心感“満載”の三菱純製」
三菱・タウンボックスキャンパー(2011年)

重すぎる想いを載せたクセモノ軽が示す、未来の車の可能性

軽自動車ベースのキャンパーは人気だけど、基本的にはベース車となる軽自動車を専門業者が改造したものが主流。ところがこのタウンボックスキャンパーは、ディーラーで「これください!」と注文できた三菱純正の軽キャンパーだ。

ルーフテントやコンセントのほか、オプションでギャレー(小さなキッチン)やフルフラットのベッドも備えていた本格派。そして何かあったらメーカーに相談できるから、そのぶん思いっきり遊べる安心感“満載”の軽キャンパーなのだ。


「もう雪道、山道に行かざるを得ない」
三菱・ミニキャブトラック特装車4クローラー(1997年~)

重すぎる想いを載せたクセモノ軽が示す、未来の車の可能性

車体が軽くて、小さいから狭い道もガンガン行けるのが軽自動車の強み。

それにクローラー(※)をつけたら、もう天下無双!? とばかりに三菱自動車が販売した特装車。

ある意味雪道や山道タイヤの究極。軽自動車ファンの間でも「最強かも」との噂の一台だ。クローラー部分はノーマルタイヤとの交換もでき、ぬかるみや積雪地等以外は普通の軽トラとして使える。ほぼ同時期にホンダとダイハツにもクローラー仕様の“軽”があったが、現在はいずれも生産が終了している……。
※戦車や建築車両でよく見る、ゴムや金属のベルトを利用した駆動形式。

タイヤよりも地面との設置面積を格段に広くとれるため、圧倒的な悪路走破性を持つ。

それぞれの時代のなかで、さまざまなニーズに対応してきた軽自動車。熱すぎる想いを感じるひとクセもふたクセもあるこんな車が案外、軽自動車の未来のあり方を、示唆していたりして……。

重すぎる想いを載せたクセモノ軽が示す、未来の車の可能性

籠島康弘=文