テキーラで夏の初体験●もしもあなたが、テキーラを罰ゲームの酒だと思っていたらまだまだ若輩。テキーラは世界を夢中にする今いちばんHOTな酒なのだ。

多くの日本人が知らないテキーラのディープな魅力。クッとアツい酒の初体験をテキーラで!

昨今のプレミアムテキーラブームの火付け役はアメリカ西海岸であり、その優雅な嗜み方は日本でのそれとは大きな隔たりがある。我々にそう教えてくれたのは、世界最大級のテキーラバー「AGAVE(アガヴェ)」のバーテンダー兼マネージャー・佐々木宗彦さんだ。

デ・ニーロとテキーラ、両者の関係を追ったら見えたディープな話...の画像はこちら >>

佐々木宗彦さん
「アガヴェ」のマネージャー兼バーテンダー。テキーラに魅せられて20年余り。現地の蒸留所やバーを訪れるなど、テキーラに関する博覧強記ぶりは業界でも知られている。
テキーラカクテルのレシピは本場メキシコ仕込みで絶品。趣味は愛車のハーレーダヴィッドソンでのツーリング。

日本では何かと誤解されがちなテキーラだが、実は美味しいだけでなく、とてもお洒落で、カッコいい、歴史のある酒らしい。知ればきっと飲みたくなる、テキーラのディープな魅力を佐々木さんにうかがった。


あのロバート・デ・ニーロも虜にした「ポルフィディオ」の反骨精神

デ・ニーロとテキーラ、両者の関係を追ったら見えたディープな話
佐々木さんをテキーラ道へ導いた「ポルフィディオ」。なかにはサボテンのガラス細工が。ボトルのひとつひとつが職人の手作りなのだ。

今では日本テキーラ界の“プロフェッサー”である佐々木さんだが、実はキャリアのスタートからテキーラ党だったわけではないらしい。テキーラにハマったキッカケって何だったんですか?

「20年前くらいに『ポルフィディオ』というテキーラを見かけて、デザインに惹かれて買ったんです。特に期待せずに飲んだのですが、その芳醇な味わいはテキーラに抱いていた固定観念を根底からひっくり返すものでした。

ちなみにこれは、あのロバート・デ・ニーロも溺愛している銘柄なんですよ」。

デ・ニーロとテキーラ、両者の関係を追ったら見えたディープな話
『ダーティ・グランパ』でディック役を演じるロバート・デ・ニーロ(写真右)。

なんとあのハリウッドのレジェンド俳優まで虜にしているとは、テキーラ恐るべし。でも佐々木さんによると「ポルフィディオ」は厳密にはテキーラではないらしい。

前回紹介したとおり、メキシコの指定5州で決められた製法と原料に基づいて造られたものしか「テキーラ」とは名乗れない。ポルフィディオはそのどちらも満たしているが、メキシコの権威ある非営利団体「テキーラ規制委員会」に属していないため、名乗ることが許されないのだという。

「もともとは委員会に加盟していたのですが、脱退しました。

生産者がオーストリアからやってきたニューカマーだったのですが、その飛躍的な活躍を古参の生産者たちに疎まれ、いろいろケチもつけられたみたいで。で、『だったらテキーラを名乗れなくてもいい!』と脱退したんです。

ただ、中身は紛れもなくテキーラで、その品質と味はプレミアムテキーラのなかでもトップクラス。自由な身となった今はさらに面白い試みに挑戦していますよ」。

カ、カッコいい……。その反骨精神は、ミュージカル界における世界最高峰の「トニー賞」の授賞式で「ファ○ク・トランプ!」とスピーチしたロバート・デ・ニーロの気概と通じるところがある!?

NEXT PAGE /

ちょっと危険なところも魅力! ボトルデザインの秘密は「禁酒法」にアリ

デ・ニーロとテキーラ、両者の関係を追ったら見えたディープな話
約600種類ものテキーラを揃える世界最大級のテキーラバー「アガヴェ」。そのボトルデザインはさまざまで見ているだけでも面白い。

それにしても「アガヴェ」の棚には、うっとり見とれてしまうほど美しくもユニークなボトルが並んでいる。瓶の中にサボテンがデザインされたものやヨーロッパの香水瓶を思わせるボトルなど、その形はさまざまだ。

「デ・ニーロは映画『アンタッチャブル』で、禁酒法時代に酒の密輸で財を成したシカゴのギャングのボス役を演じていましたが、実はテキーラボトルのユニークな形には、禁酒法時代の名残があるんです」。

……と言いいますと?

「細長いボトルや陶器のボトルがありますが、当時、これはメキシコからアメリカへ密輸する際にコートの袖にしのばせたり、酒であることを隠すための工夫だったんですよ」。

オモシロイ! そんなちょっとアウトローな感じがまたツボ!

デ・ニーロとテキーラ、両者の関係を追ったら見えたディープな話
テキーラボトルにはドクロをモチーフにしたものも多数。その理由は……。

「また、メキシコには死者の魂がこの世に戻ってくるといわれる『死者の日』があります。毎年11月1日と2日がそうで、日本のお盆みたいなものですね。ただ、日本と違ってお祭りのような雰囲気で、公園には露店も並びます。このお祭り騒ぎで使われるのが、デコレーションされたドクロの飾り。

これは死者を恐れるのではなく、死者とともにお酒を飲んで楽しく笑おう、という考え方によるもの。ちなみに2日目は大人の死者の魂が戻ってくるため、お供え物は酒がメイン。だからテキーラには、昔から死の象徴であるドクロをモチーフにしたボトルが多いんです」。

たしかにドクロなのにおどろおどろしい雰囲気はない。なんとなく明るくポップなドクロが多いのは、そうしたメキシコの死生観に関係があったのだ。

NEXT PAGE /

インテリアとしても飾りたい! “洒落た”テキーラボトル6選

そしてこんなにカッコいいボトルは家のインテリアにもピッタリ。

洒落てるうえにウマいとは、なんて、酒好きにとってかなり好都合。ということで、「アガヴェ」で発見したユニークなボトルをご覧あれ。

デ・ニーロとテキーラ、両者の関係を追ったら見えたディープな話
[画像をもっと見る]

カウンターで佐々木さんのテキーラ話に耳を傾けているだけで、心地よい酔いが回ってきた気がする。では、プレミアムテキーラに馴染みがない我々がまず味わうべきテキーラを飲ませていただけますか?

「ひと口にプレミアムテキーラといっても膨大な種類があります。ですので、このお酒の神髄が味わえる、とっておきの3銘柄をご紹介しましょう」。

次回へ続く。

[取材協力]
「AGAVE(アガヴェ)」
住所:東京都港区六本木7-18-11
DMビル B1F

電話:03-3497-0229
営業:18:30~25:30LO(金、土曜27:30LO)
日・月曜、祝日定休

押条良太(押条事務所)=取材・文