連載「Camp Gear Note」
90年代以上のブームといわれているアウトドア。次々に新しいギアも生まれ、ファンには堪らない状況になっている。

でも、そんなギアに関してどれほど知っているだろうか? 人気ブランドの個性と歴史、看板モデルの扱い方まで、徹底的に掘り下げる。

前回のブランドヒストリーに続き、’80年代からモンベルの看板モデルである「ストームクルーザー」を紹介。アップデートを繰り返し、驚異のロングセラーとなっている傑作について、広報部課長の金森 智さんに伺った。


防水性とムレにくさを両立させた高性能レインウエアの先駆け

モンベルの看板レインウエア「ストームクルーザー」が名作とされ...の画像はこちら >>

——「ストームクルーザー」とはどういったアイテムですか?

最初に発売されたのは’82年。今ほど普及していなかったハイテク素材のゴアテックス(R)を採用した、全天候型のジャケット&パンツとなります。雨を通さないのにムレにくい! というのは非常に画期的でした。

モンベルの看板レインウエア「ストームクルーザー」が名作とされる由縁

——それだけ先進的だと、やはり開発は容易ではなかったのでは?

1986年に発表したストームクルーザーは30デニールゴアファブリックスを採用し、ジャケットが約570gと当時にしては驚異的な軽さ。開発当初、ゴア社は30デニール(※)の薄い生地を使用することに難色を示しました。素材の本領が発揮できる強度にならないと判断されていたのです。製品に求めるレギュレーションレベルが高く、細かい部分まで確認するゴア社ですが、「ストームクルーザー」は数々のテストを突破。発売されるやいなや大反響となりました。

※「デニール」とは、9000mの糸の質量をgで表した単位。この場合、9000mの糸で30gしかない薄さの素材だったことを意味する。


バージョンアップし現在も最先端の機能を保有

モンベルの看板レインウエア「ストームクルーザー」が名作とされる由縁
「ストームクルーザー ジャケット Men’s」 2万2464円

——現行モデルはさらにバージョンアップを?

もちろん! ゴアテックス(R)由来の防水透湿性だけでなく、裏地に極薄のニットを使用するGOREC-ニットバッカー テクノロジーにより、着心地の良さも確保。強度と軽量性を兼備するバリスティックナイロンを採用しています。ウェイトは約254g。軽いと評判だった初期モデルの半分以下まで落としています。「K-monoカット」により縫製を減らし、防水性と動きやすさを向上しています。

——長く愛用するためのメンテナンスはどのようにすれば良いですか?

意外と敬遠する人が多いですが、汚れたら洗ってください。これはレインウエア全般に言えること。特に透湿性にとって表面の汚れは大敵なんです。表面の細かい穴から内側の蒸気を放出しているのですが、汚れて撥水性が落ちると、生地表面に汚れが広がり、その穴をふさぐことになります。結果、透湿性を著しく低下させることに。生地表面に水がコロコロと玉になっていないと性能は発揮できないのです。

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撥水性キープが真価を発揮させ続けるカギ

——洗うと撥水性がダウンしますよね?

はい。撥水剤を使ってメンテナンスしてください。ムラなくしっかりと溶剤が行き渡るので、「O.D.メンテナンス S.R.ウォッシュイン」のような漬け込みタイプをオススメします。

摩擦の影響を受ける肩や袖口は、使いやすいスプレータイプでこまめにカバーすると良いでしょう。

モンベルの看板レインウエア「ストームクルーザー」が名作とされる由縁
モンベル直営店と公式オンラインショップでは、レインウエア用の洗剤や撥水剤などを数多く取り扱っている。

——クリーニング店に出さなくても平気ですか?

神経質にならないで済むのがアウトドアウエア。普通の洗濯機で十分です。ただ、専用洗剤を使った方がトラブルなく済みます。また、脱水はNG。水を通さないため、大きな遠心力が洗濯機にかかり、故障をまねく場合があります。乾燥機の使用は問題ありません。むしろ、熱を加えることで撥水性が強まりますよ。いずれにせよ、洗濯表示を必ずチェックしてから行ってください。

モンベルの看板レインウエア「ストームクルーザー」が名作とされる由縁
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速乾素材のインナーでもっと快適に

モンベルの看板レインウエア「ストームクルーザー」が名作とされる由縁
「洗濯機の使用は問題ありませんが、洗剤が残っていると機能半減。しっかりすすいでください」。

——ケアするうえで他に注意点はありますか?

撥水剤の多くが、吸引すると有害です。スプレー式の撥水剤は風通しの良いところで使ってください。そして、洗濯はすすぎをしっかりと。

洗剤残りも機能を低下させる原因となります。

——「ストームクルーザー」をより気持ち良く着用するコツを教えてください!

登山などの運動時は速乾素材のインナーを着用することで快適性が上がりますよ。一方、高温多湿な条件下では、ジッパーを開けるなどして内部の湿気を外部へ逃がす工夫をすることで快適につながります。透湿性素材の特性として、ジメジメした環境だと内側の湿気が外に放出されにくくなってしまうんです。少しでも蒸気を逃がすよう工夫すれば、ドライで気持ち良くなるかと。

本格アウトドアからキャンプ、街着と、いかなる環境でも役に立つ「ストームクルーザー」。オールウェザークロージングとして、1枚は持っておいて損はないはずです!

【取材協力】
モンベル 品川店
住所:東京都港区高輪4-8-4 モンベル高輪ビル1階
電話番号:03-6866-7501
営業:平日11:00~21:00、土・日曜、祝日10:00~20:00
無休

連載「Camp Gear Note」
・「コールマン」編
・「ogawa」編平安名栄一=写真 金井幸男=取材・文
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