連載「Running Up-Date」
ランニングブームもひと昔まえ。体づくりのためと漫然と続けているランニングをアップデートすべく、ワンランク上のスタイルを持つ “人”と“モノ”をご紹介。

街ランからロードレース、トレイルランまで、走ることは日常でできる冒険だ。
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ランニングを始めるきっかけが「30歳を過ぎて少し経ってから、体型維持のために」という人は少なくないだろう。つまりは運動不足の解消だ。

ベイクルーズ グループのプレス業務を請け負う谷本春幸さんもそのひとり。人前に出る職業柄、お腹が出ていないに越したことはない。だが、35歳を超えアラフォーへと向かうここ数年は、走ることの意味やペースが自然と変化していったのだそう。

1日を前向きに整える。朝30分のランニングが仕事にもたらすいいリズム


ルーティン化したら、走ること自体が好きになった

中学・高校と陸上部でハードルに打ち込んでいた谷本さん。専門は短距離だったが、社会人になって夜遊びにも精を出すようになり、お腹回りの“借金”を減らすためにランニングを選んだのは自然な流れだった。

「そのころは社員としてエディフィスのプレスを担当していたのですが、32~33歳でしたでしょうか。自分なりにハードに追い込んでいて、1kmあたり5分を切るペースで8kmくらい走っていました。効果ですか? これだけの強度で走ってましたからね、それなりにありましたよ」。

さすが元陸上部、走るフォームもダイナミックで格好いい。そこまで頻繁に走っていたわけではなく、体型維持が狙いなので大会参加にも無縁だったが、スポーツジムなどでときには真剣に追い込んでいた。

そんなランニングスタイルに変化が訪れたのは、一昨年の春だった。

1日を前向きに整える。朝30分のランニングが仕事にもたらすいいリズム

「フリーランスになったんです。ベイクルーズのプレスはフリーの立場でそのまま担当していたのですが、そのほかにもいろいろな人からお誘いをいただき、深く考えないまま仕事を詰め込みすぎて、パンク寸前になっちゃったんですよね。繁忙期は週7勤務もザラで、ひとりブラック企業みたいな。フリーランスなので定時という概念もありませんから。そこで考えたのが、1日の生活リズムを整えるためにいくつかのルーティンを作ることでした」。

現在のルーティンは次のような感じだ。

「まず、起きてからトイレ、洗顔を済ませます。そして白湯(ぬるま湯程度に温めた水)を飲む。そこから10分ほど、ちょっとした瞑想の時間を取ります。今風にはマインドフルネスとでもいうのでしょうか。ここで頭をスッキリとさせて、整えます。

それから外に出て、家の周りの多摩川河川敷や二ヶ領用水沿いを軽く走るんです」。

谷本さんの自宅は神奈川県の溝口あたり。朝起きて30分後には外にいて、30分ほどのランニングを行うのだ。帰宅後はシャワーを浴びて、洗濯機を回し、その間に朝ご飯を作って食べる。

「このルーティンを意識してから、仕事に忙殺されて飲み込まれるようなことはなくなりました。いいリズムで仕事へと入っていけるので、月並みですが、その日を前向きにスタートできるんですよね」。

頭をからっぽにするために走るというランナーの話もよく耳にするが、谷本さんはどちらかというと「前向きに気持ちに整えて、毎日のモチベーションを高めるため」に毎朝靴紐を締める。

ランニング中にイヤホンで聴くのは、もっぱらvoicyなどの音声放送コンテンツだ。

「キングコング西野さんの考え方が好きで、彼のコンテンツを聴くことが多いでしょうか。仕事のことや、自己啓発のコンテンツに耳を傾けて、頭を回転させながら走ってます」。


いつかは世田谷ハーフを走りたい

「ランニングをルーティンにしてはいますが、無理はしないというか、身体の声に耳を傾けて、走りたくないときは走りません。雨が降っているときとか。

でも、大抵は走りたくなっちゃいます。そのほうが気持ちいいから。だから体型維持、という思いはあまりなくって、メンタル的なセルフケアのために走っています」。

晴れた日の多摩川沿いは格別で、空気の澄んだ冬の日などは富士山が見えることも。ペースもいたってリラックスしたもので、かつて体型維持のために走っていたときのようにジムで走ることは、今はもうない。

「夜遊びも相変わらず好きですけど、頻度はやっぱり少なくなりました。いつもの朝ランはウィークデイが中心ですが、休日は服飾業界の友人と駒沢公園に集合して一緒に走ったりもします。で、そのままご褒美として食べ放題の焼肉へ。健康的ですよね」。

1日を前向きに整える。朝30分のランニングが仕事にもたらすいいリズム

そんなこんなでレースには参加したことはないという谷本さんだが……。

「でも、その駒沢公園仲間が世田谷のハーフマラソンに出て、タイムを狙って一喜一憂しているんですよ。それを間近で見ていると、ゆくゆくは自分もチャレンジしてみたいな、と。実はエントリーしてみたことがあるのですが、そのときは抽選で外れて出走できませんでした。アラフォーになると、ひとつのことに真剣に打ち込む機会ってこういうのでもなければまずないですよね。近い将来、仲間と世田谷ハーフに挑むのがちょっとした目標です」。

陸上部出身だけど、歳を重ねて身体の声に耳を傾けることで、そのときとは180度以上違う自分なりのランニングスタイルへとアップデートを果たした谷本さん。でも、ギア選びには陸上部出身者らしいちょっとしたこだわりを持っていた。後編に続く。

1日を前向きに整える。朝30分のランニングが仕事にもたらすいいリズム

RUNNER’S FILE 05
氏名:谷本春幸
年齢:37歳(1982年生まれ)
仕事:フリーランスPR、ライター
走る頻度:週4日、30分程度
記録:レースへの参加はなし
instagram:@haruyukitanimoto

礒村真介(100miler)=取材・文 小澤達也=写真