「偏愛スニーカー三番勝負」とは……
「スニーカーは名刺代わりになる」と力説するのはキングオブコント王者、シソンヌの長谷川忍さんだ。
ゆえに人の足元を見ては、「きっとこの人の好きな音楽のジャンルは……」と妄想にふけるのだとか。
①先鋒 ニューバランス「M990v5」
ニューバランスで名品番が多いのは、やはり990番台だろう。もっとも人気のある「996」や唯一のイングランド製(一部を除く)で知られる「991」、国内では手に入りづらい「993」などなど……もうマニア垂涎の名作のオンパレードである。
とはいえ、やはり代表格なら「990」ではないか。’82年に誕生し、時代とともにアップデートされ続けるタイムレスなモデル。長谷川さんが手に取ったのはその最新作である。
当時の技術の最高水準を具現化したランニングシューズ、それが「990」の初代だ。
「とにかく機能性が抜群ですから、地方遠征や長期ロケの際にかなり重宝します」と信頼は揺らがない。なによりグッときたのは、その見た目だそうだ。
「一見、おじさんシューズっぽいんですけど、全然野暮ったくない。上質なピッグスキンを使い、シルエットはクリーンで現代的。
②中堅 ナイキ「ダンク ロー プロ SB フューチュラ」
「言ったら、僕らはナイキ世代ですから」。
そう手に取ったのはナイキ・ダンクの、スケートボードライン「SB」モデルだ。シーンでは再びその熱量が上昇傾向にあるが、長谷川さんのSB好きは今に始まったことではない。
「SBは大好物ですね。これも17年前のものですが、いまだに僕のシュークローゼットに鎮座している。
長谷川さんを虜にし続けるポイントは、ズバリ“配色”である。
「これはフューチュラの別注カラーで、別名“シャーク”と呼ばれています。名は体を表すで、このグレーとネイビーのなんとも不気味なカラーパレットが最高にイケてますよね」。
フューチュラが描くグラフィティもお好きなようで。ただし、スケートボードは滑れないそうな。
③大将 ナイキ「エア ジョーダン6 トラヴィス スコット」
「数多あるスニーカーのどれを選ぶかで個性も出ますし、その人のバックボーンも見える」と長谷川さんは豪語する。
長谷川さんがナイキを好きになったのは、「当時からことごとく自分の好きなラッパーが履いていたから」なのだとか。シグネチャーモデルも多いことから、「とにかく嫌いになれない」と言う。
コチラはアメリカを代表するラッパー、トラヴィス・スコットとのコラボモデルで、スーパーボウルのハーフタイムショーに出演した際、本人が着用したことで一気に話題をさらった。
アッパー上部に搭載した小さなポケットや、暗闇でグリーンに光る蛍光素材ソールなど、随所に遊び心を盛り込んだスペシャルな一足となっている。ヒールのロゴ「カクタスジャック」はトラヴィスのレーベル名だ。あれ、よく見ると長谷川さんが被っているキャップも……!
「もともとエア ジョーダンシリーズでは6が断然好きなんですよ。マイケル・ジョーダン本人が積極的に開発に携わったこともありますし。そのうえ、大好きなラッパーのトラヴィス・スコットとコラボしちゃうなんて……もうラーメン付きトンカツ定食みたいな贅沢さですよ。
……なんか安いな、と思わないでもないが、ゴージャスで満足感もハンパじゃないということはよく伝わってくる。
スニーカーはあらゆるカルチャーと結びつくことで深くシーンに浸透してきた。だからこそ、どんなスニーカーをセレクトするかで持ち主の人となりが見えてくるということなのだろう。そうやって目の前の人の正体をあれこれ妄想してみるのも、なかなか面白そうだ。
「偏愛スニーカー三番勝負」とは……外に出られずとも眺めているだけでアガる、それがスニーカー。スニーカー愛に溺れた生粋のスニーカー好きたちが偏愛する一足を披露する、スニーカー三番勝負。
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菊地 亮=取材・文