37.5歳、”性”と向き合う(セックスレス編)Vol.2
みな同じく、“レス”には心的プレッシャーがかかるもの。前回はそれを踏まえ、“セックレスは自然なこと”との意見を専門家から得た。
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妻とのセックスがない状況に対し、なんとなく気まずくなる――。そんな男性は多いだろうが、決して「セックスレス=悪」だと思う必要はない。前回、話を聞いた臨床心理士・山名裕子氏の言葉を借りれば、「男性は40代から体力と性欲が顕著に減退しますし、そもそも同じ女性に対しての性的興奮も低下するのが普通です」という。
それなら、頑張る必要なんてない。そう結論付けたくなるところだが、少しだけ待ってほしい。半分正解、半分間違いなのだ。なぜなら、セックスは特別なコミュニケーションであるからこそ、相手の心情、そして夫婦間のコミュニケーションに多大な影響もたらす行為だからだ。
妻がイライラ、自分もイライラ……。背景にセックスレスがあることも
「お互いに不満がなければ、無理にセックスをする必要がないということは前回もお話しました。でも、本当に妻にも不満がないかは確認しにくいもの。

「まず大きいのは、夫婦の日常的なコミュニケーションが円滑になることです。セックスやキスなどのセクシャルコンタクトがあるかどうかで、同じ会話でも妻の受け取り方は変わりますし、ちょっとした言葉をネガティブに捉えられたり、イライラされたりというケースは起こりにくいでしょう」。
既婚男性の日常的な悩みとして、「妻の不機嫌」を挙げる男性は多い。言うまでもなく、笑顔の多い妻といたほうが幸せだ。
「女性は『妻から母になったこと』を悩むケースが多いです。『夫が自分を女性として扱ってくれなくなった』と考えてしまったり……。セックスレスはその悩みを増大させます。もし、夫が妻を女性的に扱う瞬間が多ければ、その心理的不安は軽減されますし、身体的に見ても、セックスによりホルモンが分泌されて精神的な安定が生まれます」。
山名氏は、「女性は不安が多い、あるいは、ひとつの言動から不安に発展しやすい傾向にある」と説明する。理由はいくつか考えられるが、例えば、女性は右脳と左脳の連動性が優れており、マルチタスクが得意とされる。それは思考の発展しやすさに通じているという。
また、家庭にいる女性はひとりでいる時間が多く、ちょっとしたことから考えが発展して、自己嫌悪に陥りやすい面もあるようだ。
総括すると、セックスレスやそれを象徴するような夫婦間の状況が、実は妻のイライラや不機嫌を生んでいる可能性がある。さらにそれは、「“感情感染効果”により、夫にも伝わりがち」だとのこと。であれば、セックスレスの解消が夫婦の円満を生むひとつの有効手段といえる。
子育てに影響を及ぼす、セックスの効能

セクシャルコンタクトが増えれば、妻は「女性として見てくれていること」に安心を感じる。これは「子育て」の面にもメリットを与える。
「奥さんが“女性として”いられることで、きつい言葉が少なくなります。また、気持ちも安定します。これは子育ての面で大きく、母親が情緒不安定だと、子供は攻撃的になる傾向があるんですね。攻撃性が出たり、トラブルを起こしやすくなったりするという学説もありますよ」。
妻の持つ寂しさや精神的な不安定が、子に影響する可能性があるということ。もちろん、そこまで大きな問題にならなくても、夫婦円満の家庭で育つほうが、子供が幸せなのは言うまでもない。セックスや妻を愛でる行為が、その一助になると見ることもできる。
妻にはいつまでも美しくいてほしい。そんな夫こそ性生活を見直したほうがいい
「セックスなど、妻を女性的に扱う行為は女性ホルモンの分泌を促します。それは女性が美しさを保つ上でプラスですし、精神的にも奥さんは『女性でいよう』とし続けるでしょう。セックスレスの理由として、『妻の見た目の変化』や『女性性の欠落』を挙げる男性も多いですが、実はその原因こそ、妻に対する男性のコミュニケーションにあるかもしれません」。
一生を添い遂げるパートナーなら、妻にはいつまでも美しくいてほしい。ならば、セックスのある関係は明らかにプラスなのだ。
腰が重くなりがちなテーマだが、これらのメリットを考えれば、セックスレスを回避するのは賢い判断ともいえる。また、すでにセックスレスに陥っている夫婦は、40代に向けて少しずつ挑戦してみるのも良いだろう。
では、どうやってセックスレスを解消すれば良いのだろうか。それは最後にして最大の難題だ。「今さら恥ずかしくて、そんな雰囲気作れない」「以前断られたし、そもそも妻は求めていないはず」という声もあるはずだが、次回はそれにお答えしよう。セックスレスが生まれる背景と、どのように解消していくかを、専門家の見知から迫っていく。
有井太郎=取材・文
【Profile】
山名裕子
1986年5月7日、静岡県生まれ。臨床心理士。「やまな mental care office」を東京青山に開設。心の専門家としてストレスケアからビジネス、恋愛などあらゆる悩みへのカウンセリングを行っている。まだカウンセリングに対する偏見の多い日本で、その大切さを伝えるためにメディア出演や講演会活動を行う。日本テレビ「ナカイの窓」では心理分析集団「ココロジスト」を務める。新書に『読むと心がラクになる めんどくさい女子の説明書』(サンマーク出版)がある。