僕らが大好きな、着心地の良いTシャツ。しかしそのアプローチはブランドごとにまったく異なる。

それぞれの信念とこだわりが詰まった究極の心地良さ。アナタはどれがお好み?

 


“心地いい”に男女の区別は不要

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SLOANE スローン
ソフトな風合いと上品な光沢。ひと目見ただけで、抜群の着心地だとわかる。2016年にスタートしたスローンというブランドの定番Tシャツだ。いつものコーディネイトに重宝するような、ベーシックなデザインのニットやカットソーを得意とするスローン。このTシャツを含め、手掛けるアイテムはすべて日本で生産しているという。

日本で生産するいちばんの理由とは何か。それは「ブランドと作り手の、メンタリティと距離感が近い」ことにある。スローンの服はシンプルに見えるが、ディテールやシルエットを徹底的に追求している。つまりひとつの服を作るときに、細かいニュアンスをどれだけ反映できるかが勝負。日本の職人と工場だからこそ、それが可能になるというわけだ。

このTシャツは一枚で着たときにサマになるよう、襟や袖口、裾のヘム(折り返し)が絶妙な幅に仕上げられている。また袖は細く長めに設定し、着丈も長め。

ニットと重ね着したときに、袖や裾のリブがちらりと覗くように計算されているのだ。

もちろん素材にもこだわりがある。シワになりにくく、光沢も長くキープする特殊加工を施した超長綿を使用。さらに今年のモデルからはUVカット加工もプラスされたそうだ。

シンプル、でも細部にこだわりがあって、上質な素材を使用し、機能的でもある。あらゆる意味の“心地良さ”を追求したこのTシャツには、ぜひとも伝えたいもうひとつの特徴がある。それはユニセックスであること。男女問わず着てもらえるよう全5サイズを用意。そう、心地良いTシャツにメンズ、ウィメンズの垣根は不要なのである。

 


老舗のヤミツキタッチを“今”のバランスで

5ブランドを徹底比較! 心地いい&格好いい無地Tシャツの魅力
1万6000円/サンスペル × ビームス(ビームス 公式オンラインショップ www.beams.co.jp)

SUNSPEL×BEAMS サンスペル × ビームス
英国というより米国の印象がTシャツにはつきまとうが、歴史を遡ると、Tシャツはどうも20世紀初頭の第一次大戦時に、ヨーロッパから米国へと伝わったようである。そして1860年に創業したサンスペルの歴史を紐解くと、初期の製品の中にTシャツの原型が見受けられる。つまりサンスペルは、世界に先駆けてTシャツの生産に着手し、今なお作り続けている老舗というわけだ。

そんな英国の老舗とビームスの初コラボとなれば興味を持たずにはいられないが、結論を言うと、完成したTシャツは“大人が今着たいTシャツ”の理想をなすものである。

本別注を手掛けたビームス メンズカジュアル統括ディレクターの中田慎介さんがテーマのひとつとして掲げたのは「今のTOKYOを感じるフィット」。身頃はたっぷりとしたゆとりを備え、肩はドロップ。リラックス感に溢れながら、首元はだらしなく見えぬようリブがキュッと詰まっている。

生地もトレンドど真ん中のヘヴィオンス。サンスペルの薄手の定番Tシャツを思い浮かべると、テイストの違いに驚くかもしれない。しかし当然というべきか、アスレチックブランドのそれとは風合いの良さが明らかに異なる。ポルトガルで編み立てているという肉厚のコットン生地は、仕上げに起毛が施され、しっとりとして柔らかい。ドレープの表情にも、どこかしら品があるのだ。

ちなみにビームス中田さんは、サンスペルのTシャツの魅力に「一度着ただけでヤミツキになるタッチ」を挙げる。今回のコラボでも、しっかりとした生地感とともにヤミツキタッチにこだわり、要望を熱く伝えたのだという。その想いにサンスペルが応え、完成した一枚は、当のサンスペルもいたく気に入り、ロンドンの直営店でも販売を始めたとのことだ。

老舗の上質に、見事“今”という別ベクトルの魅力が融合した本作は、コラボレーションの理想の姿といえる。

それもこれも、両者の深いリスペクトがあってこそだろう。


テクノロジーなくして生み得ない孤高の白T

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2万5000円/デサント オルテライン(デサント ブラン 代官山 03-6416-5989)

DESCENTE ALLTERRAIN デサント オルテライン
世に無地Tシャツは数あれど、こうもハイテクな作りの一着はないのではないか。「フュージョンニット」シリーズの本Tシャツには、デサントがスポーツウェアの分野で培ったハイテク技術の粋を投入。抜群の通気性、動きやすさ、肌当たりの良さ等、あらゆる快適を高次元で追求している。

これら快適性の根幹をなす要素は、主に3つある。1つは部位によって編み方を変化させ、最適な機能を与える技術。たとえば脇や背は特殊なメッシュ構造に編むことで、高い通気性が確保されている。2つ目は立体裁断を駆使し、腕振りのしやすさなどの運動性を追求した独自のパターン設計。

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そして3つ目が要所を超音波溶着にしたシームレス設計で、これら異なる技術のフュージョン(融合)が、名称の由来にもなっている。なお素材には、抗菌消臭加工を施した再生ポリエステル繊維を使用。環境にもばっちり配慮しているわけだ。

先端技術を駆使したその白Tには、どことなく近未来的な雰囲気も漂う。真似しようとて真似できない、孤高の白Tである。

 


パックTの王様をさらにブラッシュアップ

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9000円[2枚セット]/ヘインズ フォー RHC(RHC ロンハーマン 045-319-6700)

HANES FOR RHC ヘインズ フォー RHC
無地Tシャツを語るうえで、その代名詞にしてキングともいえるヘインズのパックTシャツは絶対に避けては通れない。ただし、皆がよく知るレギュラーアイテムは今さらじっくり語るまでもなく、その魅力は十二分にご存じだろう。

今回は昨年夏の発売より大好評を続け、早くもショップの新定番となりつつあるRHC ロンハーマンによる別注モデルを紹介したい。

ベースとなっているのは、ブランドのハイエンドに位置づけられるプレミアムライン。上質なコットン素材が使われた糸の紡績、透けすぎず厚すぎない絶妙な天竺生地の編み立て、美しくもタフな縫製など、全工程をクオリティ重視のメイド・イン・ジャパンにこだわる。

これを活かしたうえで、シルエットはインナーでもTイチでもバランス良くキマるよう計算された完全オリジナルへと変更。デニムのシュリンク・トゥ・フィットよろしく、洗って縮めて自分の体型に合わせることを前提に、デフォルトの着丈が長めに設定されているのも特徴だ。さらにボディは肌着のイメージが強い丸胴ではなく、あえてサイドシームを入れることで洋服としての佇まいを向上させているのだ。

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しかも2枚セットのうち、一方はソリッドなクルーネック、もう一方はいっそうアンダーウェア感のない胸ポケット付きのクルーネックと、異なるタイプが1組になっているので、1粒で2度オイシイお得感まで味わえるのだ。

そして見逃せないのが、専用にデザインされたスペシャル仕様のパッケージ。ストックバッグのようなスライドジッパー式を採用しており、海やジム、旅行の着替えを収納するなど、開封後も活用できるのが何とも心ニクイじゃないか。


21世紀に蘇った国産Tシャツのオリジン

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1万1000円/久米繊維 https://kume.jp

KUMESEN-I 久米繊維
日本では、それをまだ“Tシャツ”と呼んでいなかった。1950年代半ば、東京・墨田区にある久米繊維の「色丸首」は、既に世に生まれていた。

当時はメリヤスと呼ばれる肌着の扱い、日本ではフラワームーブメントが起こる70年代まで、それ一枚で着ることがほとんどなかったものだ。

時代は変わって21世紀。この老舗の4代目が、当時の味わいと現代の技術を融合させて、国産Tシャツの原点ともいうべき「色丸首」を復活させた。

当時の資料を紐解き、綿花の厳選から、紡績、編み立て、染色、裁断といった各工程を検証。通常ではTシャツに使われないような超長綿の双糸を用いて、自然なシャリ感としなやかな肌触りを再現したのだ。さらに、筒状に編むためにサイドシームが発生しない、昔ながらの丸胴編みのボディとすることで、時間をかけて編まれたゆえの優しいフィット感が得られている。

5ブランドを徹底比較! 心地いい&格好いい無地Tシャツの魅力

同社がこだわるのは、日本製。60年代より続く千葉の工場では、各工程のスペシャリストの熟練した手仕事によって、長持ちする高い品質を実現している。端材の出にくい丸胴編みとともに、サステナブルの点でも同社のポリシーを満たしているといえるだろう。

カラーバリエーションは、和のテイストを採用。「利休鼠」と呼ばれる写真のTシャツの色は、グレイッシュなオリーブカラーが奥深い。このほか、基本となる白に加えて「紺青」「栗梅茶」「璃寛茶」など、日本の伝統色に基づいたベーシックな全10色。

他の服との合わせやすさと個性が共存するチョイスも、現代の目線を持つ4代目らしいセンスの賜物だ。

ヘリテージに立ち返り、時代にかなった物作りを果たした本作。日々肌に触れる相棒とするには、論を待たないものなのだ。

 

清水健吾=写真 菊池陽之介=スタイリング 加瀬友重、髙村将司、いくら直幸、秦 大輔、今野 塁、菊地 亮=文

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