いま時計業界で大きな注目を集めている「復刻腕時計」。様々なブランドが復刻モデルを発表し、オーシャンズもたびたび紹介してきた。
これらはただ同モデルを再現しただけではない。オリジナリティを残しつつ現在の技術を取り入れた、まさに“温故知新”な腕時計なのだ。
創業160周年を飾る精悍なホワイト&ブルー
TAG HEUER
タグ・ホイヤー/タグ・ホイヤー カレラ 160周年 モントリオール リミテッドエディション
創業160周年を祝した記念モデルのベースに選ばれたのは、やはりブランドの顔である「カレラ」だった。デザインモチーフは1972年に発表した「モントリオール」。シルバーストンやモンツァといった世界に名だたる名門サーキットの名をモデルに冠したシリーズのひとつだ。
オリジナル同様のホワイト&ブルーのカラーリングに、控えめな39mmケースが調和。そして内蔵する自社キャリバーのホイヤー02により、約80時間の長時間パワーリザーブとケースの薄型化を実現する。
ミネルバの伝統を先進技術で現代に甦らせたクロノグラフ

MONTBLANC
モンブラン/モンブラン 1858 スプリットセコンド クロノグラフ リミテッドエディション100
ミネルバの伝統的なモノプッシャークロノグラフを復刻し、新たに2つの経過時間を同時に計測するラトラパンテを加えた。
渦巻き状のタキメーターと外周のテレメーターを併設した1930年代の特徴的なデザインのダイヤルには、ブルーのグランフーエナメルを採用。独特の艶感を持つ工芸品的な美しさに、ケースはあえてグレード5のチタンを組み合わせ、軽量や耐磁性を誇る。低い熱伝導率により着用感は外温に左右されない。
ディテールに秘める往時のミリタリーマインド

PANERAI
パネライ/ラジオミール カリフォルニア-47MM
本格的なプロフェッショナルダイバーズの歴史は、1936年にイタリア海軍の特殊潜水部隊がパネライに開発要請したことから始まった。
クッションケースにワイヤー式ラグを備え、ローマ数字とアラビア数字のインデックスを用いたユニークダイヤルには、軍事機密の保持のため、ブランド名が記載されていない。また内蔵するムーブメントも手巻き式にこだわりつつ、3日巻きのロングパワーリザーブという現代的な実用性を併せ持つ。
あのウォーホルも虜にした腕元のアート

PIAGET
ピアジェ/エクストリームリー・ピアジェ・アーティー
ピアジェは、マニュファクチュールとハイジュエラーという2つの側面を持つ。時計では特に極薄ムーブメントの技術に長け、そこから生まれるデザインの自由度を活かし、多くの個性派モデルを発表した。
その虜になったのがポップアートの巨匠、アンディ・ウォーホルである。彼が愛用した多層構造からなるクッションケースの時計を復刻させたのが本作であり、ひと目見ただけで強く印象に残る。
卓越した美意識から生まれた自由な発想は、稀代のアーティストの創造力を刺激したのだろう。
1940年代のクラブシーンをダンディズムとともに再現

LONGINES
ロンジン/ロンジン ヘリテージクラシック“タキシード”
1832年創業の歴史にオマージュを捧げるロンジンの「ヘリテージ」コレクション。今年登場した最新作は1940年代のスタイルを復刻した。ブラックリングとシルバーのセンターサークルからなるモノトーンダイヤルは当時のままで、その時代のタキシードがモチーフだという。
終戦を迎え、自由な開放感が溢れる中、ナイトクラブでは従来のスイングジャズからビ・バップの熱狂へと移り、ジャズ絶頂期が始まる。エレガントなスタイルにもそんな高揚感が伝わるのだ。
100年の時を超えたポートワインの芳醇にも似て

TISSOT
ティソ/ティソ ヘリテージ ポルト
フランス語で酒樽を意味する、優美な“トノウ”シェイプ。1919年に登場した名作の名は、ポートワインの一大出荷地で知られるポルトガルの港街ポルトに由来し、まさにそのフォルムとネーミングが合致する。
滑らかなカーブを描くケースにクラシカルなワイヤーラグを備え、ダイヤルにはエレガントなアラビア数字インデックスが際立つ。12時位置の旧ロゴはもちろん、スモールセコンドにあしらわれたトノウパターンとレイルウェイの組み合わせも当時の意匠を忠実に再現した。
※本文中における素材の略称:SS=ステンレススチール、K18=18金、PG=ピンクゴールド

柴田 充=文