「What’s AIR JORDAN」とは……
1990年代のスニーカーブームをリアルに体験した世代の永遠の憧れ「エア ジョーダン」。
一方、少し下の世代である今年30歳の山木 悠さんにとって「エア ジョーダン」はどのような存在なのか。
その出合いと所有する“ジョーダン”を紹介してもらった。

スニーカー観が一変した「エア ジョーダン」との出合い
中学生の頃からゴローズやテンダーロインに憧れて、アメカジにドハマリしていたという山木さん。サッカー部に所属していたことから「エア ジョーダン」を含め、バッシュとは縁がなかったらしいが、突然、転機が訪れる。
「15歳のときだったと思います。同級生が『エア ジョーダン 3』を履いているのを見てカルチャーショックを受けたんです。それが、ジョーダンを愛用している人に初めて会った瞬間でした。友人や先輩など周りの影響って、若い時こそ強く受けますよね。その瞬間のことは今でもよく覚えています」。

『スラムダンク』で主人公の桜木花道が履いていたことから“その存在”は知っていたものの、実物を目の当たりにしてスニーカーの見方が180度変わった。
「コレは避けては通れない道だと直感(笑)。この機会に“ジョーダン”を知っておきたいという衝動に駆られました」。
それから間もなく、山木さんは記念すべき“マイ・ファースト・ジョーダン”を手に入れる。
最もアメカジに合うと思えた「エア ジョーダン 1」
“直感”に従った山木さんはすぐさま行動。地元・横浜にある古着店をハシゴして出合ったのは「エア ジョーダン 1」の復刻モデルだった。
「当時、よく履いていたスニーカーといえばコンバースとヴァンズ。その延長にあると思えたのが『エア ジョーダン 1』でした。周りが履いていたので欲しくなったのですが、バスケットボールをやっていない僕がハイテク系のバッシュを履くことに抵抗があったので、自分ならコレかなと」。

それから十数年経った今も山木さんは「エア ジョーダン 1」を所有し続けているという。
「あれから何度か買い足してますが、今日持ってきたのはこの2足です。履くからにはバックグラウンドを理解したうえで楽しみたい。
ファッションなので表層的な楽しみ方もいいんですけど、せっかくならカルチャーを理解したほうがより楽しめると思います」。

そう言いながら山木さんは、「これからもコレクトするつもりもありませんね」とキッパリ。マジメなジョーダン愛が伝わってくる。
ジョーダンとはどう付き合っている?
「インスタントなファッションが苦手」だと話す山木さんはリアリティにとことんこだわる。よって、自分なりに咀嚼してからでないと、ワードローブには取り入れられないとか。
「『エア ジョーダン 1』はプロダクトとしてもすごく好きだし、常に手元に置いておきたい気持ちがある一方で、履くからには納得ができるコーディネイトで楽しみたい。

そう話しながら靴紐を結ぶ山木さんに思わず笑みがこぼれる。

「僕が持っている2足はオリジナルカラーを踏襲した復刻だから、昔ながらのアメカジに合せると、どうしてもいなたく見えてしまう。だから、普段なら絶対にやらないネガティブ履きならどうだろう? とか、ああでもないこうでもないと『エア ジョーダン 1』との着こなしについて考える時間も楽しいですね」。

ナイキが発明した究極のスニーカー「エア ジョーダン 1」。こいつの懐の深度はいったいどれだけあるのか? もう少し掘っていきたいと思う。
恩田拓治=写真 戸叶庸之=編集・文