痩せ細った体よりも、肉のついたがっちりとした体つきに憧れる――そんな思いから、前回は「太る専門ジム」のパーソナルトレーナーを取材し、“健康的で格好良い太り方”を探った。

そして今回話を聞くのは、人気お笑いコンビ「アンガールズ」の山根良顕さんだ。

彼に対して、“ヒョロヒョロ”や“ガリガリ”といった印象を抱く人が多いかもしれない。

しかし、最近ではプロレスラーばりの太マッチョを目指して、本格的な肉体改造に取り組む様子がYouTubeで話題となっている。

ここでは、山根さんが実践する日々の増量術を明らかにしよう。

話を聞いたのはこの人!
ガリガリからマッチョへ。アンガールズ山根が語る肉体改造メソッ...の画像はこちら >>


「体力の低下」が肉体改造のきっかけ

──肉体改造を思い立ったのはなぜですか?

いちばんの動機は体力づくりです。芸人は体力勝負。40歳を過ぎてから、長時間のロケや撮影がだんだん体に堪えるようになってきたんです。

このまま50歳、60歳と芸人を続けていくために、とにかく体力をつけなきゃ、と思ったんです。それに、ガリガリの僕がマッチョになったら面白いかなと思って、YouTubeで配信していくことにしました。

それが約1年前。最初は「いつまで続くかなぁ~」と軽い気持ちだったんですが、続けていくうちにトレーニングや食事によって体が変化していくのが楽しくなってきました。どうせなら、体重も増やして、まったくの別人になってやろうと。現在はプロレスラーの棚橋弘至さんの体を本気で目指しています(笑)。

約7年前の山根さんの体。
この頃は180cmの身長に対し、53kgの体重しかなかったという。確かに、肋骨が見えるぐらいに細い。

──以前のイメージと違って驚きました! ずっと痩せ体形なんですか?

物心ついたときから、痩せていましたね。中学、高校とサッカーをやっていて、当時はそこそこ体重があったんですが、一番重い時期でも58kgくらい

身長は180cmあるので、かなり痩せていたと思います。20代から30代はずっと53kgくらいでした。

もともと食が細くて、食べたいという欲求が人よりも強くない。体質なのか、無理にたくさん食べると胃腸の調子を崩して反対に痩せてしまいます……。両親も同じような体形なので、生活環境や遺伝も関係あるのかもしれませんね。


ウエイトトレーニングはダンベルが中心

山根さんの自宅ジムの全景。懸垂器具やトレーニングベンチなど、幅広く揃えている。

──日々のトレーニングはどんなメニューを?

自宅でできるメニューが中心です。初めの頃は腕立て伏せもままならなかったので、テーブルに両手を突いて体を斜めにしてやっていました。

回数やセット数は特に決めていなくて、自分ができる限界の回数をこなしていました。

そのうちパワーブロックという重さを調節できるダンベルセットを買って、ウエイトトレーニングを始めました。最近は16kgのダンベルを使っています。これで10回のダンベルプレスを1セットして、もう少し軽いので2セット。あとは20kgのダンベルでローイングなどを行います。

たまに、懸垂器具やチューブなどを使ったメニューも取り入れています。トレーニングは基本毎日やるようにしていますね。

こちらが、山根さん愛用のパワーブロック。これひとつで重さを10段階(4.5kg~23kg)に調整できるという。

──有酸素運動は取り入れたんですか?

有酸素運動もメリットはたくさんあります。しかし、体重が増えにくい自分の体質などを考えて、あえて有酸素運動はやっていません。

自宅でも極力動かないようにして、外出した時も階段をできるだけ使わず、エレベーターに乗っています(笑)。


ご飯3杯の代わりに餅を6個食べる

©︎gyro/iStock

──増量のカギを握る食事はどんな風に?

体重を増やすには、要は摂取カロリーを消費カロリーよりも多くすればいいんです。でも、少食の僕にはこれが大変で……。

ボディビルのメソッドなんかだと、1日に6食が理想らしいんですが、僕には到底無理。なので、1日3食、1食を1000キロカロリーくらいに設定して、1日の目標である3000キロカロリーをクリアするようにしています。

──主にどんなものを食べているんでしょう?

主食はご飯ですが、餅もよく食べています。カロリーが多い割に見た目が小さいので、たくさん食べることができます。切り餅1個50gで、約118キロカロリーなので、2個食べるとご飯1杯程度。僕にとってはご飯3杯よりも餅6個食べるほうが簡単です。

栄養を吸収する腸内環境も整えた方がいいと聞いていたので、整腸剤のエビオスを飲んだり、ヨーグルトを食べたり。

野菜も体にいいんですが、僕の場合、野菜でもお腹いっぱいになってしまうので、カロリーの低い野菜類は控えめにしています。その代わり、ビタミン類はマルチビタミンサプリで摂るようにしています。

──筋肉づくりに欠かせないタンパク質の摂取は?

普通の食事では十分なタンパク質を摂るのが難しいので、食事とは別にプロテインを飲んでいます。朝、トレーニング中、夜の1日3回。

必須アミノ酸が9種類入ったEAA9というプロテインが気に入っています。

プロテインの摂取も日々の日課に。

──間食はどんなものを?

摂取カロリーを増やすためには、間食をしたほうがいいのですが、食の細い僕にはこれも厳しい……。1度間食をしてしまうと、次の食事までお腹が空かないので、おやつを食べる余裕がありません(汗)。

ただ、コンビニに寄ったときは、必ずザバスのミルクプロテイン温泉卵を買って、タンパク質を補給しています。卵は毎日2~3個食べていますね。

──食事のほかに生活で気をつけていることは?

筋肉を増やすには、トレーニングで筋肉を破壊して、休息で回復させるというサイクルを継続することが大切。そのためには睡眠が第一です。毎日0時には寝るようにして、8時間くらいの睡眠時間を確保しています。


腰痛が減って、姿勢が良くなった

──開始から約1年。くじけそうになったことは?

肉体改造を始めてから約3カ月ではっきりとした手応えを感じて、しばらくは楽しかったんです。ただ、半年くらい経ってから、いくら筋トレしても、たくさん食べても、体重が一向に増えない時期があったんです。

増量中のあるあるらしいんですが、「なんのためにこんなに食べているんだろう……」と憂鬱になりました。ただ、「体重が増えなくても、筋肉は増えているはず」とプラスに考えて、黙々とトレーニングと食事を続けているうちに、再び体重が増え始めました。

──モチベーションを持続するコツは?

YouTubeの配信が助けになっています。僕はトレーニングをリアルタイムで配信しているので、みんなに見られている意識があって、動きに集中できます。

「今日はサボろうかな」と思うこともありますが、コメント欄で励ましてくれたり、アドバイスをくれることもあるので、本当にありがたいです。SNSで発信したり、誰かと一緒に取り組んだりするのはモチベーションを持続するのに効果的だと思います。

YouTubeでの生配信の様子。

──肉体改造の成果を実感することはありますか?

以前は新幹線や飛行機での移動中に腰が痛くなることが多かったのですが、筋肉がついたからか、今ではほとんどなくなりました。人間ドックでもA判定が出ましたし、姿勢も良くなったと思います。

周囲の反応で印象的だったのは、以前ナイツさんのラジオ番組に出演したとき、「声がでかくなりましたね!」と驚かれたこと。おそらく腹筋などが発達したことが理由なのかもしれません。以前より体も軽くなり、気持ちも前向きになりました。

はた目から見るとストイックに映るかもしれないが、とにかく体づくりを楽しんでいる様子の山根さん。

「トレーニングや食べるもの、毎日の積み重ねで、体が微妙に変化していくのが面白い。体を“つくる”よりも“育てる”という感覚。難しい植物を栽培していると考えれば、体づくりはワクワクの毎日ですよ」。

取材を行った現在(2021年1月中旬)、山根さんの体重は64kgで、体脂肪率は17%。すでに均整のとれた、格好良い体つきになっているものの、「棚橋ボディへの道はまだまだ遠い。とにかく今年中に70kgを突破したいです!」とハリのある大きな声で今後の意気込みを語ってくれた。

 

押条良太(押条事務所)=取材・文

編集部おすすめ