1909年に創業したブガッティ。

ある経済誌が掲載したブガッティのCEOインタビューでは、例えばヴェイロンのオーナーは平均で車両を84台、プライベートジェットを3機、ヨット(大型のクルーザー)1艘を所有している、と明らかにした。

そんな異次元の雲上車、ブガッティの世界をさっそく見ていこう

 


■ヴェイロンのバリエーションは、1億6300万円から3億円まで

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新生ブガッティの快進撃はコンセプトカーを世界各地のモーターショーに出展したあと、2005年のヴェイロン16.4の販売から始まった。

軍事戦略で言うところの「ショック&オー(Shock & Awe:衝撃を与え畏敬させる)」で、圧倒的なパワーを全面に打ち出し、圧倒的な超価格で世間を驚かせた。

ヴェイロン16.4に搭載されたのは、排気量8LのW型16気筒エンジンというだけで超弩級なのに、そこには4つのターボチャージャーを備え、最高出力はなんと1001psを誇った。

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コックピットの後ろにW型16気筒を搭載するミッドシップ。

何から何まで異例づくしで、最高速度は市販車としては前人未踏の407㎞/hに達した(最高速トライアルには“トップスピードキー”を差し込む必要がある)。

ちなみに旅客機のボーイング787の離陸スピードは約300km/hと言われている。つまり今すぐ飛び立ちかねない速度域で車を地面に押さえつける空力性能、巨大かつ超高性能エンジンとその排熱処理、そして走りを支えるタイヤとホイール、どれをとっても技術とコストの塊といえる車なのだ。

気になる新車時価格は1億6300万円だったが、のちに投入されたタルガトップモデルやスペシャルエディションは2億円、3億円と値上がりしていった。

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メーターの中心は8000回転までを刻むタコメーター。その右に小さく420km/hまで刻まれたスピードメーターが備わる。

かといって、“ヴェイロンに続け!”と息巻く自動車メーカーもそうそう出てこなかった。この事実からも、性能、規模(限定生産とはいえ450台)、価格帯、すべてが異次元な車といえるだろう。


■シロンで3億円、限定車は6億円!

2016年のジュネーブモーターショーでお披露目されたのがヴェイロンの後継車、シロンだ。ヴェイロンと同じ8LのW型16エンジンが搭載されたが、そこには大幅な改良が加えられていた。

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ヴェイロンでは4気筒ごとにひとつのターボチャージャーを割り当てられていたのに対し、シロンでは8気筒ごとにツインターボが割り当てられた。

最高出力は1500psにまで引き上げられ、0→100km/h加速2.4秒、ヴェイロン16.4よりさらに早い最高速度420km/hに達した。

新車時価格は240万ユーロ(約3億円)。生産台数は500台(スペシャルエディション含む)と発表されたが、納車が始まる前に200台のオーダーが入ったという。

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シロンの限定仕様車であるディーヴォの車両重量は、シロンと比較すると35㎏の軽減が図られているほか、ダウンフォースは最大90㎏増しとなっている。

2018年には40台限定の「ディーヴォ」が発表された。

車両価格は500万ユーロ(約6億円)だが、発表と同時に売り切れた。シロンがベースとなっており、パワートレインもスペックも同じだがエクステリアが大胆に変更され、走りの性質も異なるセッティングになっている。

アグレッシブなルックスに変更された目的も単なる格好良さだけではなく、強烈なダウンフォースを得るためで、サーキットでのハンドリング性能向上を重視している。

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シロンとディーヴォのスピードメーターの目盛りは、ともに500km/hまで刻まれている。

また、足回りもベースのシロンよりも大きめなネガティブキャンバーを採用することで、グリップ性能の向上を図ったゆえに最高速度は380km/hに“抑えられて”いる。

最高速トライアルにヴェイロンと同じく専用の鍵を必要とするシロンと違い、ディーヴォにはそもそもトップスピードキーの設定がないのが特徴だ。

ハンドリング性能のために最高速度を犠牲にせざるを得なかったディーヴォ。その後、2019年には最高速度にこだわった限定車「スーパースポーツ300+」を30台限定で発表している。

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スーパースポーツ300+。車名の「300+」は最高速度が300マイル(483km/h)オーバーであることを意味している。

最高出力を1600psにまで引き上げ、7速DSGトランスミッションのギア比を変更し、最高速度を引き上げるために前後バンパーの形状が見直され全長は248.9mm長くなっている。

そして希望するスーパースポーツ300+のオーナーには、エーラ・レッシエンのテストコースにて最高速トライアルを体験させてくれるというサービス付きだそうだ。新車時価格は350万ユーロ(約4億円)で、もちろん発表と同時に完売している。


■世界で一台きりの特別なブガッティは約14億円!

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ブガッティが1930年代に投入したタイプ57SCアトランティックのオマージュとして仕上げたワンオフモデル、ラ ヴォワチュール ノワール。

2019年のジュネーブモーターショーではラ ヴォワチュール ノワールというシロンベースのワンオフモデルがお披露目された。

順調に進めば2021年内後半もしくは来年あたりに完成する見込みだという。

シロンと同じパワートレインを搭載しながらも「オーナーの要望でグランツーリング寄りのセッティングとなり、最高速度や加速性能はシロンよりも抑えられる」と言われている。

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テールエンドに並ぶ6本のマフラーカッターなどはタイプ57SCアトランティックに由来している。

車両価格は1100万ユーロ(約14億円)で既に売約済み。クリスチャーノ・ロナウドが購入したという噂があるが、いずれ真実が明らかになる日が来るだろう。

余談だが、ブガッティを購入する際の申込金を支払うと、ファーストクラスのチケットが送られてきて、最終的な仕様を決めるためにブガッティ本社へ赴くことになる。

こうして決めた愛車は木箱に詰められて空輸され、鍵やマニュアル、そしてオーダーした車両の高級ミニチュアモデルが大きなアルミ製のボックスに収められて届く。

何から何まで異次元のブガッティ。世界の超富裕層に愛されるまさに雲の上の存在だが、いつかそのハンドルを握ったときには……。そんな夢だけでもこの記事で具体化すれば、幸いである。

 

古賀貴司(自動車王国)=文

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