昨年秋にマイナーチェンジした「BMW 5 シリーズ ツーリング」。ギドニーグリルがワイドになり、より精悍な顔つきに。
数あるステーションワゴンのなかでも、運転する楽しさもしっかり味わいたい人には、最高の一台となること間違いなしだ。
BMW 5 SERIES TOURING BMW 5 シリーズ ツーリング
エンジンはガソリン、ディーゼル、プラグインハイブリッドを用意。アクティブに使い倒すなら、ディーゼル×4輪駆動の「523d」がおすすめだ。リアにはエアサスペンションが採用されているので、重荷物を積んでも、自動で車高調整し安定した走行を実現する。全長4950×全幅1870×全高1500mm 749万円~。
BMWは“余計な色”がないからいい
父がBMW愛好家だったこともあり、私もBMW好きに。20歳で初めて買った車もBMWの中古車でした。
最近まで乗っていたのが「5シリーズ グランツーリスモ」というモデルで、大きな5ドアハッチバックというか、ちょっと妙なフォルムの車です。8年ほど前に購入したのですが、それまで乗っていたセダンにサーフボード2枚を積むことの限界を感じ始めていました。
最初はSUVに乗り替えようとも思ったのですが、どこか自分らしくないと感じ、かといってステーションワゴンは、当時の私には「おやじくさいな……」と思えたんです。
それで、絶妙な“謎感”がある5シリーズ グランツーリスモを選んだのですが、大正解でした。かなりの積載量を誇る大きめな車なのに、走りはBMWそのもの。
そういった意味で、5シリーズ ツーリングは「積めて、走れて」という部分がさらに良くなった車であることは当然なんですが、それと同時に——アパレル業界にいる私から見ると——BMWって“余計な色”がないんですよね。
モノとしてはもちろん個性的ですが、ブランドとしてはさらっとしてる。それを身に着けることによる余計な意味は生まれにくいプロダクトだと思うんです。だからこそ、BMWは多くの人に“似合う”のでしょうね。
松本真哉
時代のムードと自身のライフスタイルに合わせて、これまで3台のBMWを乗り継いできた“BM愛好家”。
この一台にすべてを託せる
車における世の趨勢はSUVに大きく傾いている昨今ですが、僕のようなオッサン世代がバブル後の修羅場でもシュッとしていたいと踏ん張っていた頃合いに、SUVのような光明を放っていたのがステーションワゴンです。
当時は、SUVはなんとも泥臭く、それをハズシとして扱う術もあったとはいえ、一方のステーションワゴンは程良く都会的でフォーマルにも振る舞えなくはなく、会社に行くのは背広が当たり前の時代においてはギリギリの遊び心を託せたんですね。そこで人気を博した銘柄としてはスバルのレガシィやボルボ850、フォード トーラスやメルセデスのミディアムクラスなどがありました。
とりわけ、スポーティな振る舞いを自慢としていたのがBMWの5シリーズ ツーリングです。そもそも彼らのサルーン造り自体にハンドリング自慢なところがあり、そのフィーリングをもれなく引き継ぎながら積載性がドーンと向上しているところにツーリングの個性がありました。
それは今も変わらずで、家族旅行の際には自重すべきですが、ひとりでゴルフの行き帰りには山道も思いっ切り楽しめる、そんなパッケージになっています。そしてこのハンドリングの解像度の高さは、SUVとは完全に一線を画するものです。
酸いも甘いも嗅ぎ分ける車好きの大人が、ミニマルに一台にすべてを託するとき、最後の最後まで候補に上がるだろう銘柄だと思います。
渡辺敏史
出版社で自動車/バイク雑誌の編集に携わったあと、独立。自動車誌での執筆量が非常に多いジャーナリストのひとり。車の評価基準は、市井の人の暮らしにとって、いいものかどうか。
この車で旅がしたい
昔から車は好きでしたが、東京に出てきてからは、「車なんかいらないよね。だって、こんなに公共交通機関が充実してるんだから!」と言い続け、今にして思えば自分を騙していました。
でもここ数年は「心が動くモノには躊躇なくお金を投じよう」と考えるようになり、そして僕の心が動いたモノのひとつが「車」だったんです。
で、いろいろなブランドの車を試乗してみましたが、そのなかでも最も心が動いたのが、結果としてその後買うことになったBMW 3シリーズのセダンです。ドライバーである自分の感覚と車の動きとの間にまったく誤差がないというか、思ったとおり、入力したとおりに動いてくれるので、気持ち良くて仕方ないんですよね。
新型の5シリーズ ツーリングはまだ運転していませんが、「旅に出るための車」としては最高でしょうね。昨年の秋、オーシャンズの企画で、自分の3シリーズ セダンで西日本を気ままに巡る旅に密着してもらいました。
本音を言うと、もっと服を持って行きたかった。でも5シリーズ ツーリングであれば、走りだけでなく「持っていくモノ」だって妥協せずに、本当に素晴らしい旅ができるんじゃないかなと思いますね。
KENJI
自身の3シリーズ セダンは「Mスポーツ エディション シャドー」。ブラックアウトされたギドニーグリルとMスポーツの走行性能にヤラれて即決。次に狙っているのはオープンカーとのこと。
完成されたスタイルが心地いい
昔はですね、「走りや乗り心地を優先するなら、SUVより重心の低いセダンかワゴン」みたいなことが言われていました。実際、昔のSUVは乗り心地がゴワゴワしていて、山道ではヨッコラショというコーナリングで、おまけに燃費も悪かった。
しかしですよ、BMWのX5とX6をクローズドコースで振り回す機会がありまして、タイヤを鳴らしてキャッキャ喜びながら実感しました。技術の進歩とは素晴らしいもので、SUVだからといって走りや乗り心地が劣るということはなくなっているのです。少なくとも、BMWに関しては。
では、SUVではなくステーションワゴンを選ぶ理由は何か? 思いますに、広い意味でスタイルを選ぶということではないでしょうか。例えば今の時代、スーツにダイバーズウォッチを合わせても誰も何も言いません。でも、やっぱりスーツには2針の革ベルト、革の色はズボンのベルトや靴に合わせるべし、ということにこだわる人もいます。
こういうこだわりを堅苦しいと考える向きもあるでしょうが、長い時間をかけて練られてきたルールを守ると、やはりすっきりとしていて、洗練されたスタイルになります。
ステーションワゴンも同じ。荷物を積んで遠くへ行くバカンスやグランドツーリングのために磨き抜かれてきた5シリーズのツーリングは、遊び心と機能をクールにバランスさせるスタイルが完成しています。地中海沿いのオーセンティックなホテルが似合いそうです。
サトータケシ
フリーランスのライター/エディター。年明けに取材で新宿に行った際に、そういえば新宿の街を歩くのは一年ぶりだと気付いて、コロナ禍の影響のデカさに改めて気付いたとか。
BMWの楽しさはずっと変わらない
昔も今も、BMWに乗っています。とはいえ僕が乗っているのはずいぶんとクラシカルな世代のものなんですが……。8年前に購入した最初の車は、1970年代の初代3シリーズ。かなりマニアックな車ですが、僕も当時はそこまでBMWに詳しいわけではなく、見た目だけで決めた感じです。
でもいざ運転してみると本当に楽しい車でした。運転席に傾けられたインパネ等は「自分で運転している」という感触が強く、すっかりBMWの虜になってしまいました。
その次に買ったのが、今も乗ってるM5です。スーパースポーツセダンであるM5ですが、僕が乗っているのは1980年代の初代M5ですので、非常にクラシカルです。でも、今の車と違って構造がシンプルなせいか動きが軽快で気持ち良く、最初のうちは撮影現場にもM5で行ってましたね。さすがに、走行距離などが気になり出し、仕事兼サーフィンに行くための車として違うブランドのワゴン(それも古いモデル)を買いましたが(笑)。
古い車好きなので、最近の車は大きすぎるし、余計なモノが付きすぎているように感じますが、それでも新型の5シリーズ ツーリングは運転すれば楽しい車なんだろうなと“ビーエム乗り”としは想像できます。
最近は猫も杓子もSUVですから、伝統的なシューティングブレーク(ステーションワゴン)のほうが断然粋に見える。そんな意味でも、今選ぶべき車な気がしますね。
三部正博
趣味のキャンプとスキーは妻が所有するランドローバー ディスカバリーで、サーフィンと仕事はメルセデスのS124、街乗り&運転を楽しみたいときはM5と用途に合わせて3台を乗り分けている。
この車は理屈ではない
BMW 5シリーズに限らず、メルセデスのEクラスなどのEセグメント各車は今、難しい立場にあります。ひとつ下の車格である3シリーズやCクラス、アウディA4といったDセグメント各車の出来があまりにも良くなったため、「より高額なEセグをわざわざ選ぶ理由」が希薄になってしまったのです。
とはいえ3シリーズから5シリーズに乗り替えれば、何もかものレベルが一段階違うことは誰にでもわかります。しかしその一段階上の質感や性能というのは、かなり高い次元での話。例えば一般的には出すことができない速度域での話だったりしますので、「でもやっぱり最新のDセグでいいや」と、多くの人は感じることになります。
そうなってくるとBMW 5シリーズの存在意義はかなり怪しくなるわけですが、ところがどっこい、5シリーズ ツーリングにはやっぱり大きな存在意義があります。
それは「ありふれていない」ということ。郊外ではわかりませんが、都内ですと3シリーズというのはあまりにも数が多すぎるため、特別感はそれほどありません。ただ、やっぱり車には特別感が欲しいと思うのが、男の性。ならば選ぶべきは5シリーズ ツーリングなのです。
最高のドライビングフィールに十分な積載力、褒めればいくらでも言葉は出てきますが、もはや性能云々ではない。この車を選ぶのは形而上の問題なのです。
伊達軍曹
英蘭系消費財メーカーを経て出版業界に転身。複数の輸入車専門誌の編集長を歴任後、著述家として独立。独特の視点から繰り出す自動車コラムを多数のメディアに寄稿している。
谷津正行=文