渋谷の地にひとりの天才が、沖縄から初上陸したのをご存知だろうか。ただし、当の本人は天才の呼び名をまるで意に介していない様子だが。
「東京に来たのはこれで2回目。描きたい東京の絵は、えーと、東京タワーかな。理由は……特にない(笑)。好きなのは渋谷と秋葉原。え、東京タワー? う~ん……別に行かなくてもいい(笑)」。
天真爛漫で、予定調和など一切なし。それが12歳の小学生イラストレーター、ミラクルくんだ。現在、渋谷パルコでポップアップ展示会を行っており、開催に合わせて上京していた。
まだ慣れていないであろうインタビューにも自然体で臨み、忖度なしで自分を表現する。そこがミラクルくんをミラクルくんたらしめる魅力であり、人を魅了してやまない型破りなアートの原点のようだ。
先にゲンキンな話を済ませておくと、彼の作品、買うなら今のうちがいいかもよ?
プロには真似できない、法則なきアート

ミラクルくんの線画は下書きなしの一発描き。所要時間は1枚あたり3~5分程度だというから驚きだ。
ミラクルくんの父、城間英樹さんは言う。
「絵の構図やデッサンを勉強した人には、絶対に真似のできないスタイルですね。色の使い方にも法則がありませんし、驚かされることが多いです。ちゃんと考えて描いてほしいから、『本当にその色の組み合わせでいいの?』と確認はしますが、基本はすべて本人の意思に任せています」。

英樹さん自身もゲームのキャラクターや商品パッケージのデザインを手掛けるプロのアートディレクターだが、ミラクルくんはプロにも真似できないセンスを持っているという。ある日、息子が描いたイラストを軽い気持ちでSNSにアップしたところ、思わぬ評判を呼び、息子の才能を確信したそうだ。
そして昨年12月、沖縄県立美術館・博物館で行った展示会で、彼の絵の前で声を出して笑っている人を見た城間さんは、ミラクルくんの作品にしか伝えられない力を感じたのだという。

こんな時代だからこそ「少しでも人の心を前向きにできるものがあってほしい」と思い、今回のポップアップ・展示を開催。会場には、アーティストで人気お笑いコンビ「ガリットチュウ」の福島さんなど、著名人も足を運んでいる。
“青田買い”するなら渋谷パルコで!

まだ12歳だが、ミラクルくんの実績はすでに大人顔負けだ。
プロサッカー選手の本田圭佑さんがアンバサダーを務めるスマホケースブランドとコラボしたり、ミュージシャンのオリジナルグッズにイラストが起用されたり、大企業の商品パッケージのデザインを任されたりなどなど、まさに引く手数多。そんな彼が次にコラボしたいのは……

「フォートナイトの絵を描きたい。このゲームが大好き過ぎて、僕、自分のiPhoneケースを勝手にデザインした。これがお父さんで、これが僕で、これが、えーっとね、2人のお姉ちゃん」。
バトルロイヤルゲーム「フォートナイト」が得意だというミラクルくんは、プレーヤーとしてもトップレベルの実力を持つ。その腕が買われ、なんとeスポーツチームへの入団もすでに決まっているほどだ。
ゲーム好きが高じ、次に描きたいのは歴代の「ゲーム機シリーズ」。現在、復元が進む沖縄県のシンボル・首里城のキャラクターデザインにもいつか挑戦してみたいという。

好きなこともやりたいこともたくさんあるミラクルくん。今後はアメリカなど、海外での活動も視野に入れていて、実は寿司の絵などは世界進出を意識した戦略の一環でもあるそうだ(単純に「本人の大好物」という理由がほとんどだそうだが)。

やがてはウォーホルやヘリング、バスキアのような偉大なる近代アーティストと並び称される存在になるかも……と期待を込めながら、中学入学を控えた天才の未来を見守ろうではないか。
まずは渋谷パルコでその才能を体感し、気に入ったら作品を青田買いしちゃおう。
東京初上陸!
Miracle-kun POP UP & EXHIBITION

ぎぎまき=取材・文