日本の物づくりへの高い評価はサーフィンの分野でも感じられる。その代表例が「サタデーズ ニューヨークシティ」からパートナー指名された日本人シェイパー・千葉公平さんだ。
なぜ彼は選ばれたか?両者の出会いからその関係性を紐解いてみよう。
波乗りを楽しむ気持ちが互いの心を通わせた
都会的なアパレルとサーフィンを掛け合わせ、大都市ニューヨークでクリエイティブを行うサタデーズ ニューヨークシティ。日本に上陸したのは2012年。当初から東京・代官山の旗艦店に置かれていたのが303サーフボードだ。
両者の出会いにはキーパーソンがいる。スタイリストの熊谷隆志さん。
「日本サーフィン界のレジェンドであり、自分の人生を変えてくれた人だと熊谷さんは言っていました。そのような人と出会えること自体、喜ばしかった」とモーガンさんは振り返る。
このときまでブランドのことは知らなかった2人だが、改めて千葉さんと言葉を交わすと共通の知人が多いことに気がついた。それはアメリカやオーストラリアの友人サーファーたち。
近いところでサーフィンを楽しんでいたことを知ると、互いの心の距離が縮まり、友情のような気持ちが芽生えていったことをモーガンさんは覚えている。両者によるプロジェクトの根底には、初めからフレンドシップが流れているのだ。
無論、サーフボードのクオリティに疑う余地はなかった。
「プロサーファーとして活躍する技量を持ち、シェイプ歴は長く、世界中の波でのサーフィン経験がある。その豊かなキャリアに裏打ちされた深い知識には驚嘆しました」とコリンさんは言う。
多様なデザインへの見識、そのデザインを具現化する技術、細部にまでこだわり仕上げる丁寧さに魅了されたのだ。
その姿を目に焼きつけているコリンさんが「サーフマスター」だという千葉さんは、四国の波に惚れ込んで移り住み、サーフボードを作りながら生活してきた。今も台風スウェルの到来や、冬のハワイでのグッドウェーブを心待ちにする。
サーフィンを始めて40年以上が経った今もサーフィンは楽しい。だから使う人にも楽しんでもらいたいと思い、サーフボードをシェイプする。
交流が始まって9年。ショップには303サーフボードのラインナップから厳選されたモデルが置かれてきた。そして先頃、サタデーズのシンボルマーク、スラッシュを描いた“共創”モデルが誕生。プロジェクトが新しいステージへ踏み出したように思えた。
また千葉さんは「2人から提案を受け、僕がサーフボードのデザインを考えるというのも面白いかもね」と言う。もし両者が考えるグッドボードが作られたら。
PEDRO GOMES、熊野淳司、高橋賢勇、清水健吾、鈴木泰之、柏田テツヲ=写真 小山内 隆、高橋 淳、大関祐詞=編集・文 加瀬友重、菅 明美=文