「Camp Gear Note」とは……
アウトドアで必要不可欠な防虫対策は、前回お伝えしたとおり、ひとつではなく複数の対策を組み合わせてこそ効果が高まる。
根本的なことだが、長袖長ズボン+ソックスを着用して、肌の露出を減らせば虫刺されのリスクは軽減できる。
「身につける」タイプの防虫ギアとは?
このジャンルでまず思い浮かぶのは、釣り用品や登山用品を長年手掛けてきた日本ブランド「フォックスファイヤー」。大自然でいかに快適に遊ぶかを考慮したウェアやギアを手掛けている。
彼らが展開しているのが、防虫素材「スコーロン」を採用した着るタイプの虫除けウェアだ。
スコーロンとは、簡単に言えば「防虫」と「UVカット」、ふたつの機能を備えた機能性素材である。
蚊取り線香でお馴染みのアース製薬と帝人フロンティアが共同開発したもので、繊維に虫を寄せ付けない特殊な加工が施されている。
従来の防虫性素材との大きな違いは、防虫効果の洗濯耐久性が非常に高いこと。
今までは防虫成分を配合したカプセルを生地に付着させるタイプが多かったが、スコーロンは特殊な防虫剤をナノレベルで生地そのものに付着させている。洗濯を20回しても、80%以上の防虫効果を維持できるそうだ。
機能性ウェアにありがちな、野暮ったさがないのも特徴。写真のとおり、アウトドアはもちろんデイリーウェアとしても活躍しそうなシルエットだ。
UVカットや速乾性、消臭効果など、アウトドアウェアブランドならではの快適性を兼ね備えており、フード付きや生地の厚みなどのバリエーションも豊富に展開している。
気になる部分に巻いて守るタイプ
続いては、ハイカーやランナーにはお馴染みの「バフ」をご紹介しよう。
こちらは、元々はバイク走行時に着用するためにスペインで開発された、伸縮性の高く縫い目のないチューブ型ネックウェア。
造りはいたってシンプルだが、頭に巻いたり、手首に巻いたり、はたまたフェイスマスクやネックウォーマーにしたり。アイデア次第で、さまざまな使い方ができる多機能チューブなのだ。
抗菌作用や冷却効果のあるモデルや、反射材を配して夜間のランニングでも光るモデルなど、幅広いタイプを展開しているが、この夏は防虫効果がある「インセクトシールド」に注目したい。
このシリーズは、繊維に無色無臭の虫除け成分「ペルメトリン」を、蚊などの小さな虫に効果がある程度に、ごく少量固着させている。洗濯耐久性は70回まで認められているので、1枚あればひと夏は余裕で乗り切れるだろう。
カラーとパターンのバリエーションが豊富なのも、バフならではの特徴。このインセクトシリーズだけでも、シンプルな単色から個性的な柄物まで9パターンも展開している。使う位置で色味が変えられる、カラフルなものをおすすめしたい。
ちなみに、全体のラインナップは180種類以上のパターンがある(日本展開のみでも)というのだから驚きだ。
ほかにも覚えておきたい防虫対策豆知識
蚊取り線香や蚊取りマット、虫除けスプレーに加え、「ワンプッシュ系」のスプレーも新たなスタンダードとして常備しておきたい。これはその名のとおり、部屋にワンプッシュするだけで、一定時間虫を寄せつけないという優れもの。
筆者は設営前にサイト周りに数プッシュしているが、アウトドアでもかなり効果が実感できる。これと肌に吹きかけるタイプの虫除けスプレーのコンボは、なかなか信用度が高い。テント内にひと拭きしておけば就寝時も快適だ。
タイプはさまざまあるが、最近は「最強」「強力」などと謳った屋外仕様のハイパワーモデルも登場している。
熱で蒸散する「トランスフルトリン」×蒸散しにくい「プラレトリン」、ふたつの異なる有効成分を配合したタイプがおすすめ。有効成分もタイプが異なる複数を組み合わせれば、対応できる状況が増えるので意識して選ぶといい。
食事の準備をする前や、直接肌や衣類には吹き付けないように気をつけていただきたい。
ちなみに、「煙の量が多い」のを売りにしている蚊取り線香があるが、必ずしも煙の量が多い=効果が高いわけではない。
熱によって有効成分がどれだけ蒸散するかが大事なので、煙の量が少なくても効果が高いものはある。「煙が少ない」を売りにした蚊取り線香は、効果も低いとは限らないのだ。
最後に、刺されたあとの対策についてひとつ。
市販されている薬の有効成分はさまざまだが、ブヨやアブ、クラゲなどに刺された場合は、一般的な虫刺され薬では痒みが治らないことがある。
製品によって、ステロイド外用薬の強さは5段階にランク付けされている。ものによっては、子供には使わないほうが良いものもあるので、購入時に薬剤師に確認してみよう。
「Camp Gear Note」
90年代以上のブームといわれているアウトドア。次々に新しいギアも生まれ、ファンには堪らない状況になっている。でも、そんなギアに関してどれほど知っているだろうか? 人気ブランドの個性と歴史、看板モデルの扱い方まで、徹底的に掘り下げる。 上に戻る
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池田 圭=取材・文 宇佐美博之=写真