フォルクスワーゲンが30年以上も前に製造したゴルフII。日本でも未だに根強い人気を誇り、最近では20代の若い世代からも熱視線を集めているという。

「ゴルフIIを一生乗れる車に」という惹句をうたい、修理と中古車販売を行う日本唯一のゴルフII専門店「スピニングガレージ」が神奈川県相模原市にある。国内に1台しかない限定車を始めとした珠玉の車たちを拝見しに、店主・田中延和さんを訪ねた。

ゴルフⅡはいつの間にツウな車になったのか? 2000台を手掛...の画像はこちら >>


「スピニングガレージがなければ、愛車を手放していた」

フォルクスワーゲンから初代「ゴルフ」が発売されたのは1974年。以来、モデルチェンジを繰り返し、最近では最新の8代目が日本でも発売されたばかり。ワーゲンの顔を約40年も担ってきた超人気車種である。

スピニングガレージが扱っているのは、1983年から1992年の間に製造された2代目の“ゴルフII”限定で、愛好家の間では“聖地”として広く知られている。これまで修理してきた数は2000台にものぼるという。

「突撃、隣のキャンプカー!」に登場した土田拓也さんの愛車、ゴルフカブリオレ・クラシックも田中さんが修理を重ねてきた。土田さんは、「スピニングガレージなくしては16年の付き合いは無理だった」と語ったが、それも決して大げさではない。


専門店だからこそ、信頼して愛車を託される

田中さんの仕事は修理がメインだが、買取、販売も行っており、ガレージには、珠玉のゴルフIIが所狭しと並んでいる。

例えばこの車。走行距離はまた1万kmだが、もともとはあるおばあさんの愛車だったそうだ。

ゴルフⅡはいつの間にツウな車になったのか? 2000台を手掛けた聖地のボスに聞いた分岐点

「個人情報なので詳細は控えますが、このゴルフは、あるおばあちゃんが大切に乗っていた『GLi』。“人に譲るよりも、スピニングガレージのほうが安心して任せられます”と連絡をいただいたんです。

引き取りに行ったら、車体に毛布がかけられた状態で納屋に保管されていました。本当に持ち主に愛されていたんだなぁ、ということがひと目でわかりましたね」。

そんな逸話を聞けば、そのフロントマスクが一層愛らしく見えてくるではないか。30年以上の歴史を持つゴルフIIだからこそ、田中さんのガレージで販売される車の多くにこうした歴史とストーリーが詰まっている。

 


ゴルフIIの魅力は? “人馬一体感”が歴代で一番

ゴルフIIは時を超えた魅力を持つ一方で、年々維持費がかさんでいくという一面もある。長く乗り続けるには購入費を上回る修理費を覚悟する必要があるが、そこまで愛でたくなるゴルフIIの魅力とは何なのか。

ゴルフⅡはいつの間にツウな車になったのか? 2000台を手掛けた聖地のボスに聞いた分岐点
こちらは田中さんの愛車、ゴルフカントリー。キャリアには大好きなマウンテンバイクを積んででかけるという。カントリーが製造されたのは’91年のみ。

「車を修理して乗る、というのは僕らにとっては当たり前の感覚です。一般的な概念で言っちゃうとコスパは悪いかもしれません。でも、ちょうどいいんですよ。ゴルフIIは、すべてにおいてちょうどいい」。

“ちょうどいい”の意味するところはなにか。

「例えば、’90年代後半からは、コンピュータ制御が導入されています。

その世代のゴルフは、人間の操作にコンピュータがいろいろ干渉してくる。逆に、70年代に製造されたモデルは車の進化がまだ足りないから、こっちが操作した通りに動いてくれない。

その点、ゴルフIIはそのどちらでもない人馬一体感が一番あるんですよ。すべてにおいてちょうどいい。“too much”な点がひとつもない。好きな理由はそこですね」。

ゴルフIIの“ちょうどよさ”は、同じゴルフでも他世代のモデルにはないし、現代の車にもないという。 コスパでは測れないロマンと色気があるのだ。

ということで、次回は、スピニングガレージの中でも特に気になった珠玉の5台をご紹介!

 

[店舗詳細]
住所:神奈川県相模原市緑区長竹2748-1
電話:042-780-8198
営業:9:00~18:00(水、木定休)

山本 大=写真 ぎぎまき=取材・文