「Camp Gear Note」とは……
暑さと虫の煩わしさから解放された今の時季こそキャンプのベストシーズン。寒くなるまでの短い期間にフットワーク軽くキャンプを楽しむには、ミニマムな装備で楽しむソロスタイルのキャンプがぴったりだ。
そんなソロキャンプの食事を美味しく、温かく楽しむためには焚き火もいいけれど、いつでもすぐに火がつけられるシングルバーナーが1台あると便利。
そこで「これさえ手に入れておけば間違いない」名作シングルバーナー5選を押さえておこう。
その① キャンプ場で必ず目にする超売れ筋バーナー
まずは、メイド・イン・ジャパンの強み、そして燃焼器具専門メーカーとして培った知識と技術を活かしたもの作りに定評のある「SOTO(新富士バーナー)」の名作「レギュレーターストーブ」を紹介しよう。
燃料は、手に入りやすく、経済的なカセットガス(CB缶)を採用している。最大の特徴は、外気温が低い環境ではボンベ内の圧力が低下し、火力が落ちやすいCB缶の弱点を克服するために、「レギュレーター」なる機構を組み込んでいることだ。
寒い時期のキャンプを体験している方にとっては、この機能がいかに画期的かがわかるはず。手の届きやすい価格帯にもご注目いただきたい。
しっかり料理をしたい派には、安定感の高い分離型「レギュレーターストーブFUSION」を激推し。
本体重量わずか250gと軽量だが、こちらもマイクロレギュレーターを搭載し、低温化でも安定した火力を発揮してくれるスグレモノ。
重いダッチオーブンも問題なく使えるほど安定感の高い4本ゴトク、耐風性に優れた設計のバーナーヘッドなど、湯を沸かすだけではなく外でも本格的に料理を楽しむためのディテール満載の1台に仕上がっている。
オーシャンズが仕込んだカスタムカングーに搭載したのもコレだ。
その② 誕生時のデザインを踏襲する超ロングセラー
続いては、携行性に優れた一体型の名作を紹介しよう。
北欧の雄・プリムスの名を日本に広めたのは、この名作「2243バーナー」と言っても過言ではない。もはや、「ガスシングルバーナーの歴史そのもの」と言っても過言ではないほどの名作である。
出力値の変更など(現在は3600kcal/hのハイパワー仕様)細部のアップデートはあるものの、現行モデルまでほぼ基本構造も変わっていないのだから驚きだ。日本に上陸した35年以上前から、見た目はこのまま。いかに完成されたプロダクトなのかがよくわかる。
最大の特徴はX字に配置されたゴトクにある。この形状はクッカーを置く安定感のためだけではない。一見無防備に見える火口を、このゴトクが風防の役割を兼ねることで守っている。
例えば、風向き次第で1/4が消えてしまっても、X字ゴトクに守られた残り3/4が燃焼し続けて、消えた部分もすぐに復活できる合理的な構造なのだ。
また、分解してコンパクトに収納できる構造と軽量性(253g)、トロ火も自在に使えるほど、細かな火力調整ができることもロングセラーの理由だろう。
その③ 驚異のミリオンセラーを記録した名作
寒さに強い燃料が選べるOD缶タイプからもう1点。
日本製ならではの抜群の品質、コスパの高さ、使い勝手の良さと3拍子揃ったキャプテンスタッグの「オーリック 小型ガスバーナーコンロ」も、名作シングルバーナーのひとつといえよう。
1997年の誕生以来、その販売台数はなんと驚異の100万台超え! お世話になっているキャンパーも多いのでは?
まず折りたたみ式の大きな五徳が特徴で、鍋が滑りにくい形状が採用されている。十字型に配されたこの五徳は風防の役割も兼ねる。
火口も広い構造なので、鍋の一点に集中的に炎が当たって焦げついてしまう心配も少ない。
その④ 500mlの水をわずか140秒で沸騰させる秘密兵器
バーナーの用途は温かい飲み物やラーメン用の湯を沸かすのがメインという方には、こちらの「JETBOIL®マイクロモ」がおすすめ。
0.8Lのクッカーと高性能バーナーを一体化させたもので、バーナーの熱を効率よくクッカーに伝えることができるのが最大の特徴。この構造によって、500mlの水をわずか140秒で沸かせる。一度使ってみると、そのあまりのスピードに驚かされるはずだ。
「JETBOIL®マイクロモ」は日本からの要望を受けて作られた手頃なサイズのモデル。基本構造は定番型を継承しており、使い勝手の良さは変わらない。
また、このバーナーも冬場や高所など、低温環境でも安定した火力を発揮する「サーモレギュレーター」なる機能が搭載されている。見た目には小さなパーツだが、フィールドでこの違いは大きい。特にこれからの季節には非常にありがたい機能だ。
その⑤ 世界中のどんな僻地でも、これさえあれば
最後におまけをひとつ。
キャンプのギアをミニマムに抑えたい方や、キャンプではあえて不便も楽しみたい方には、アルコールバーナーも選択肢となる。なかでもトランギアの「アルコールバーナー」は、その代表格だ。
燃料は風や低温に強い液体アルコールを使う。ガスが手に入らない島や僻地でも燃料が手に入りやすく、シンプルな構造で故障しづらいため、世界中の冒険家や軍の装備に採用されてきたバーナーだ。
使い方は、2/3ほど燃料を入れて着火するだけ。円状に配置された小さな穴から美しい炎が立ち上がる様は、なんとも言えず美しい。
当然、利便性はガスバーナーには及ばない。しかし、ギア好きにはたまらない独特な魅力がある。
ちなみに、この10年ほど日本では多くのガレージブランドが個性的なアルコールバーナーをリリースしてきたが、トランギアのこのバーナーこそがそれらすべての原型であることは言うまでもない。
「Camp Gear Note」
90年代以上のブームといわれているアウトドア。次々に新しいギアも生まれ、ファンには堪らない状況になっている。でも、そんなギアに関してどれほど知っているだろうか? 人気ブランドの個性と歴史、看板モデルの扱い方まで、徹底的に掘り下げる。 上に戻る
連載「Camp Gear Note」一覧へ
池田 圭=取材・文 矢島慎一=写真