「それ! 知り合いにも言われたんですけど、全くのウソ! 地元のインディーズバンドを紹介するテレビ番組がありまして、そこに出演したんですね。で、テレビなんて初めてだし、出るからには何とか爪痕を残さねばとはりきっていた。それをブギウギ専務のスタッフたちがたまたま撮影現場にいて『あいつ面白いな』『あいつで新番組やってみたい』とね。それが『上杉が(番組を)やりたがった』という流れになってるんですよ」
番組では、架空のPR会社「(有)上杉ポンプ商会」の専務という設定で、先述の「奥の細道」や、道行く人に母校を聞いてそこへ向かい、最終的に自分の母校を目指す「母校への道」など、過酷なロケを繰り返してきた上杉。当初は、「オマエは誰だ?」という状態でスタートしたものの、今ではかなり知名度も上がったようだ。
「ロケをしていても周囲から反応が返ってくるようになりました。深夜番組が好きな若者だけじゃなくて、もっといろいろな方が観てくれるようになったと思います。ただこの頃から『水曜どうでしょう』との比較もされるようになりました。僕自身も学生の頃から大好きで観ていた番組ですし、一度も意識したことがないかと言ったらウソになりますけど、そんな余裕もなかったんですよ。ただその時その時の与えられたものをこなすのが精一杯で」
そんな上杉だが、実は彼の本業はバンドマン。THE TON-UP MOTORSというバンドのフロントマンとして活動する彼だが、“専務”として有名になってしまったことには、どう折り合いをつけたのだろう?
「徐々にですね。心に余裕が出てきて『専務も、バンドも自分だ』という当たり前のことが分かるようになりました。
ライブでは、「上杉!」でなく「専務!」という掛け声も多いという上杉。THE TON-UP MOTORSはメジャーデビューも決定しており、上杉は「THE TON-UP MOTORSとして上にいくことが、ブギウギ専務のスタッフや応援してくれた北海道の方々への恩返しになると思ってます」と語っている。
◆『クイック・ジャパン』vol.110(2013年10月12日発売/太田出版)