五郎が純と蛍(中嶋朋子)を連れて故郷の富良野に行き、電気も水道も無い暮らしを始めた時、純は「電気がなかったら暮らせませんよッ」と、五郎に訴えますが、セリフは次のように続きます。「夜になったら眠るンです」「眠るったって。だって、ごはんとか勉強とか」「ランプがありますよ。いいもンですよ」。まるで他人のように会話をしています。
ここで表現されているのは、親子の距離感。東京生まれ東京育ちの純は、都会的に洗練された母の令子(いしだあゆみ)に比べ、いつまでもあか抜けない五郎を尊敬できずにいました。それに五郎も気が付いており、互いに距離感のある話し方になってしまうのです。脚本家の倉本聰さんによると、純と五郎の話し方は、政治家の宮沢喜一氏が娘に丁寧語で話すところをテレビで観て、「この親子はどういう関係なのか?」と感じたことから着想を得たそうです。
心にわだかまりがあるとき、本音をぶつけるのではなく、なんとなく相手と距離をとってしまう。そんな性格に育った結果、純はさまざまなトラブルに直面していきます。
◆ケトル VOL.41(2018年2月14日発売)