認知症や知的障害など判断能力が不十分な人の財産管理などを支援する成年後見制度を巡り、市町村長が家庭裁判所に利用開始を求める「首長申し立て」が増えている。
 成年後見制度は介護保険と同時の2000年に導入された。
利用には本人や親族、市町村長、検察官などが裁判所に申し立てる必要がある。
 25年の申立件数は約4万3千件で、そのうち首長申し立ては1万139件と23・7%を占めた。本人からの24・8%に次ぐ多さだ。
 背景には身寄りがいないなど孤立する高齢者の増加がある。
 家裁別で見ると青森が最も高く45・0%。那覇は26・5%だった。最も少ないのは京都の11%と、自治体によってばらつきがあるのも特徴だ。
 高齢化が進展する中で認知症の症状があっても一人で暮らすお年寄りは少なくない。申し立ての増加は自治体が保護や対応に力を入れてきた表れとも言える。
 一方、本人や家族から「望まないのに申し立てをされた」とトラブルになる事例も。
 東京都に住む女性は虐待の嫌疑をかけられ、区長の申し立てで後見人が付いた母親と引き離された。
 後見人からは母親の入院先を知らされず、支援者の協力を得て初めて面会できたのは1年半後のことだった。
母親は「よく捜してくれた」と感謝したという。女性は「家族を後見人に連れ去られた」と訴える。
 現行制度ではいったん後見人が決まれば中止できない。硬直化した仕組みが本人や家族の決定権を侵害している可能性がある。
■    ■
 遺産相続に際して利用を開始したのに、望んでいない生活の全てまで任せることになるなど使い勝手の悪さも指摘されてきた。
 認知症の高齢者は25年471万人に上るが、成年後見の利用者は約25万人(24年12月末時点)にとどまっている。
 そうした中、政府は先月、成年後見制度を見直す民法の改正案を閣議決定した。
 制度利用後、必要がなくなれば中止できるようにするほか、家族からの終了申し立ても可能とする。
 後見人が支援する範囲についても、これまでの通帳管理から施設入退所手続きまであらゆる意思決定に適用する「包括代理」から、必要な事項についてのみ代理する「オーダーメード型」に改める。
■    ■
 改正法が成立すれば抜本的な制度改正は26年ぶりとなる。
 ただ、施行前に利用を始めた人は改めて家裁の審判を受けなければ新制度を使えない。利用中止には必要がなくなったことの立証が求められるなど、ハードルは高い。

 現行は家裁が決める後見人の報酬も「不透明だ」として算定基準の明確化を求める声もあるが、今回の改正案では考慮されていない。
 真に自己決定権を尊重した法改正へ。国会でも議論を深めるべきだ。
編集部おすすめ