「Space Oddity」 (’69) / David Bowie
宇宙にまつわる作品を数多く残したボウイ。そのうちの4曲に登場するキャラクターにメジャー・トム(トム少佐)という名の宇宙飛行士がいますが、メジャー・トムが初めて登場した作品が「Space Oddity」です。リリースされた50数年前は、アポロ11号が初の月面着陸を成功させて人々が宇宙に関心を寄せた時代。前年に発表されたスタンリー・キューブリックの映画『2001年宇宙の旅』にインスパイアされて生まれたこの作品はボウイの名を世に知らしめた出世作でもあります。
「Ashes to Ashes」(’80) /David Bowie
ボウイ作品に初登場してから11年後、メジャー・トムが2度目に登場した作品が「Ashes to Ashes」でした。ギターシンセサイザー、ストリングスを駆使したアートロックとニューウェイヴを象徴するサウンドに乗せた歌詞には童謡のような表現や日本の女性を示す言葉が出てくる他、ドラッグ中毒となってハイとロー、つまり天国と地獄を行き来するメジャー・トムが描かれています。その姿は「Space Oddity」の成功から10年が経ったボウイ自身を重ねたものとしてなぞらえられることもありますが、解釈は十人十色の無限大。また、当時の製作費として最高額の25万ポンド(約3,800万円)を費やして制作されて話題になった MVは現在も視聴可能で40年以上前の白塗りピエロと化したボウイを拝めます。
「Hallo Spaceboy (with the Pet Shop Boys) 」(’96)/David Bowie(Pet Shop Boys Remix)
最初にリリースされた95年のオリジナルバージョンでは明言されていなかったメジャー・トムをこの曲に登場させたのは、ボウイから直々にリミックスを任されたPet Shop Boysでした。
「Blackstar」(’15)/David Bowie
ボウイが星に還った2日前にリリースされた遺作『Blackstar』。表題曲であるこの作品のMV冒頭に出てくる宇宙服に身を包んだ遺体がメジャー・トムとされていますが、 BBCのドキュメンタリーで MV監督のヨハン・レンクも「自分にとって、これは100パーセント、メジャー・トムだ」と明言しています。歌詞を深読みをすればアメリカ社会を風刺したアイロニックな表現やテロリズムに対する言及とも受け止められますし、MVは歌詞に寄せたカルトな映像とも見て取れますが、いずれにせよ、死する直前にこれほど狂気に満ちた作品を残した超人的なアーティスト、デヴィッド・ボウイについて想う時、彼はやはり違う惑星からやってきた存在で再び星へ還ったのだろうと思ってしまうのです。
「Ziggy Stardust」(’72) /David Bowie
最後にご紹介する曲を「Life On Mars?」にしようか「Starman」にしようか、或いは「Lady Stardust」にするべきかと悩みましたが、異星からやってきた救世主ロックスターが描かれたボウイの代表作を選びました。初めてこの曲を聴いたのは90年代に観たThe Yellow Monkeyによるカバーで、実際にボウイのライヴを観たのは日本最後の公演となった2004年3月の大阪城ホール公演の一度きり。あの日のラストに聴いたのがこの曲でした。儚さと煌びやかさが共鳴するロックスター、ジギーの物語はロック史に残る名曲。耳を傾けて宇宙を感じ、想像を羽を広げましょう。彼が地球から去った2016年1月10日から今日に至るまでの5年半、ボウイ作品を聴くことができずにいましたが今日を機に変われそうです。
TEXT:早乙女‘dorami’ゆうこ
早乙女‘dorami’ゆうこ プロフィール:栃木県佐野市出身。音楽を軸に、コンサート制作アシスタント通訳、音楽プロモーション、海外情報リサーチ、翻訳、TV番組進行台本や音楽情報ウェブサイト等でコラムや記事を執筆するなどの業務を担うパラレルワーカー。