歌手のクミコが、アルバム『私の好きなシャンソンVol.2~シャンソンティックな歌たち~』を7月10日に発売する。

 本作では、1980年に56歳で亡くなったシャンソン歌手・越路吹雪さんの生誕100年に際し、初録音から70年の節目となる「愛の讃歌」や、「アプレ・トワ」などを新録する。
スーパーバイザーを務めた音楽評論家の安倍寧氏は、「今の時代、岩谷時子さんの詩で『愛の讃歌』を歌い継げるのはクミコしかいない」とコメントを寄せた。

 さらに今年は、シャンソン界のレジェンドであるシャルル・アズナヴールさんの生誕100年でもあることから、「帰り来ぬ青春」の日本語詞カバーも収録されるほか、「倖せな愛などない」「私はあなたのもの」といったシャンソンの名曲の新録音源、2018年6月の東京・EX THEATER ROPPONGI公演で披露された「サントワマミー」のライブ音源、菅原洋一とのデュエット曲「今日でお別れ」、美輪明宏が作詞作曲した昭和の代表曲「ヨイトマケの唄」、オリジナル曲「妻が願った最期の「七日間」」など15曲が収録される。

■クミコ コメント全文
今回、再びシャンソン、そしてシャンソン的な歌をリリースすることになりました。シャンソンにもフランスにも、特別な憧れがあったわけでもない私が、今なお歌っているのは不思議な巡り合わせのようで感慨深いものがあります。

初めてシャンソンを知ったのが越路吹雪さん。
チケットの取れないリサイタルには、幸運なことに二回行きました。

宝塚のスターだった越路さんの舞台は、どこまでも計算されたショーのようで、その歌は劇的でした。オートクチュールのドレスも、絨毯敷きの劇場も、すべてが華やかで非日常。
まだまだ貧しい日本にあって、遠いフランス、パリは何だかわからんけど素敵なのだとインプットされたのです。

「銀巴里」に入ったのは、巡り合わせです。
そこでしか、いい年をした女が歌えそうな場所がなかったからです。
シャンソンといえば、越路さんの「サントワマミー」しか歌えない私が、幸運に導かれ、今となっては伝説の小さなシャンソン喫茶で歌い始めました。

そこで越路さんのシャンソンを歌う人は一人もいませんでした。
聞いたこともない難しい歌や粋な歌など、それぞれが大切に抱く歌が「銀巴里」のシャンソンでした。(ここで越路吹雪を歌う新人が入った、と陰で噂されていたことは後日知りました)

今の時代、絶滅危惧種と言ってもいいようなシャンソンの録音物を、またリリースできることは、信じがたい幸運です。
今年は越路吹雪さん生誕100年、そして代表曲「愛の讃歌」のレコード盤録音から70年。はたまたパリオリンピックの年。ナニカシラ背中を押されるような気持ちで、新録音も含め、アルバムの形で発表することになりました。


新録音はこれまでの録音と違い、より元の形に近い「愛の讃歌」に加え、越路さんらしい華やかで歯切れの良い「アプレ・トワ」。
銀巴里で出逢った文学的シャンソン「倖せな愛などない」と「私はあなたのもの」。
そして、シャンソンとしてだけでなく世界的名曲として有名なシャルル・アズナヴールの「帰り来ぬ青春」。
アズナヴールさんとのご縁は、久しぶりの来日公演が決まった2007年、来日前に私がパリでインタビューをする機会に恵まれたことでした。これが私にとっての初めての渡仏経験となりました。
この「帰り来ぬ青春」は詩人の吉原幸子さんの作詞ですが、言葉が大きな位置を占めるシャンソンらしく、他の歌たちも、岩谷時子さん初め、詩と人生を見つめ続けた方たちの作品です。


これらに加え、これまでシングルとして発表してきた、シャンソン的な歌たちを集めたアルバム。
歌は言葉。そんな志を今一度確かめるべくリリースいたしました。

そして今回スーパーバイザーとして、音楽評論家の重鎮、安倍寧さんをお迎えしました。
生前の越路さんのスタッフもされ、戦後日本のシャンソン状況にも詳しい、まさに「生き字引き」でもある安倍先生により、今の時代にシャンソンを歌うことの意義が示されると思います。

今の時代に生きるシャンソンを、お聴きいただければ幸いです。