保険金を水増しして不正に請求していただけでなく、除草剤をまいて街路樹を枯らすなど、数々の不祥事が発覚したビッグモーター。
2024年5月、伊藤忠商事などはビッグモーターの事業を引き継ぎ、「ウィーカーズ」を設立。看板は掛け替えたものの、250の営業拠点や建物は同じ。ただ、ビッグモーターの創業家や旧経営陣は、経営に一切関与せず、舵取りは伊藤忠側から送り込まれた人たちが手がけることになった。その再建の中心に立っているのが、ウィーカーズの経営企画部長、合六渉氏。ビッグモーター問題が起きた際、伊藤忠の中で買収に動こうと、社内で稟議書を書くなどして、買収に向けて強く動いていてきた人物でもある。
合六氏らウィーカーズの新経営陣はまず、ビッグモーターの企業風土を分析。社員の意識改革・コンプライアンス改革に着手した。ビッグモーターの営業力の強さの源泉の一つが、給与水準の高さ。年収3000万円以上稼ぐ社員も珍しくなかった。
22年にビッグモーターで103万円の軽自動車を購入した60代のA氏。しかし、シートベルトの根本部分が錆びているなど、水没車の疑いがある車を購入させられたとして、ビッグモーターを相手に損害賠償を請求する訴訟を起こした。だが、ビッグモーターの問題発覚後、事業は伊藤忠に買収された一方で、債務の返済や全国で相次ぐ訴訟に対応するのは、BALM(バーム)という別会社。そのBALMは24年12月、東京地方裁判所に民事再生法の適用を申請。債務の額が確定していないことから事実上、裁判がストップしている状態。A氏は旧ビッグモーター、そしてウィーカーズに対して「表面を塗り替えただけ。メッキと一緒。そんな虫のいい話なんてない」と怒りをにじませる。
保険金の不正請求問題を受けて、金融庁から損害保険代理店の登録を取り消す処分を受けたビッグモーター。