カンテレのドキュメンタリー番組『ザ・ドキュメント 私はナニモノ?~中国残留邦人の80年~』が、きょう29日深夜1時15分~2時20分に放送される(関西ローカル)。“中国残留邦人”とその子孫に密着取材し、戦争がもたらした苦悩に迫る。

 重光孝昭さん(85)は、3歳で家族と旧満州に渡り、終戦間際の混乱で両親と死別し、中国人の養父母に育てられた。しかし、中国では「日本人」と呼ばれ、文化大革命では「日本人のスパイ」と糾弾されたという。日中国交正常化後、「日本に帰りたい」という一心で1984年に永住帰国を果たした重光さんだったが、そこで待っていたのは「日本人なのになんで日本語ができないのか」「中国に帰れ!」という心ない言葉だった。重光さんは「もし戦争がなかったら、私はあなたと同じ日本人ですよ」と悔しさを語る。

 一方、中国残留邦人4世の中村小晴さん(18)は、日本で生まれ育った。曾祖母は旧満州で看護師として働き、戦後、中国人男性と結婚。中村さんは、物心がついたときから「周りの人と何か違う」と感じていたという。同級生からの何気ない言葉に傷つき、いつしか自分のルーツを隠すようになり、「戦争によって生まれた自分は、いてはいけない存在のような気がずっとしていた」と語る。そして、初めて1人で中国へ渡り、曾祖母が生きた旧満州の地を訪れると、「日本人」として見られた。曾祖母の足跡をたどる旅は、やがて中村さん自身の心を解き放つ旅となっていく。

 カンテレ報道センターの司紫瑶ディレクターが、自身初のドキュメンタリーとして手がけた。戦後80年の節目。「多くの人にとって戦争は遠い記憶になりつつあります。けれど取材で出会った中国残留邦人1世、そして4世が抱く“私はナニモノか?”という問いは、かつての戦争が残した境界の間で、形を変えながら続いていました。二つの故郷を抱きながら生きる彼らの姿は、個人の物語であると同時に、多様なルーツの人々が交じり合う現代社会の姿でもあると思っています。世界に目を向ければ、国と国の戦争がまだあります。境界で揺れる人々の姿を見つめ、改めて“平和とは何か”を考えるきっかけになればと願っています」と呼びかける。

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