良質な睡眠をとるには何を食べるといいか。内科医の工藤孝文さんは「強い抗酸化作用も認められている“眠りのホルモン”といわれるメラトニンは、いい睡眠だけでなく、美容と健康にも欠かせない。
このメラトニンの分泌を促すために、朝食にお勧めの3つの食材を紹介する」という――。
※本稿は、工藤孝文『50代から気になる『老けない』やせ方』(青春出版社)の一部を再編集したものです。
■体重は右肩下がりに落ちていなくても気にしない
私は、ダイエットに挑戦する患者さんに、「グラフ化体重日記」というものをつけてもらうようにしています。
これは、体重を折れ線グラフで記録するだけでなく、次の「空腹センサーを正常に戻す6つのルール」を守れたかどうか1項目ごとに〇△×を書き入れてもらい、さらに睡眠時間とそのほか気づいたことなどを書き込んでもらうものです。
●空腹センサーを正常に戻す6つのルール

①できるだけ、空腹感が出てきてから食べる。

②空腹かどうか迷うときは、食べない。

③食事中、お箸を置いた回数を記録してみる。

④食事をしていて空腹感が消えたと感じたら、食べるのを止める。

⑤空腹感が消えたか迷ったら、食べるのを止める。

⑥残り物はすぐに片づける。
特に、50代以降の方には運動もしてほしいので、今日やるべき運動と、それができたかどうかも書き込める欄も作るとよいでしょう。
こうすると、体重の変化がわかるのはもちろんですが、自分の行動をコントロールできているか、どれだけ以前と比べて自分の行動が変わってきたかがわかります。

この日記をつけるときに重要なことは、体重は右肩下がりに落ちていなくても気にしないということです。
■老けずにやせるには、「体重記録」よりも「行動記録」を
50代からのダイエットに焦りは禁物です。もっと言えば、増えていなければいい、ぐらいの気持ちでいていただきたいと思います。
その代わり、行動記録のほうは、しっかり確認してください。そして、自分の行動が1週目に比べて2週目、3週目と確実に良いほうへ変化していれば、もうダイエットは成功したようなものです。少し時間がかかったとしても、やがて体重は自然と落ちていきます。
ただし、行動記録を確認したときも、ときどきルールが守れなかったり、運動を休んだ日があったとしても、決して落ち込まないでください。何度もお伝えしている通り、ストレスは体も心も老ける一因となります。
ダイエットは長い道のりです。誰だって、ときどきお休みが必要なのです。
失敗したら、気持ちをリセットしてやり直せばいい。それくらいゆったりした気持ちで、体重記録・行動記録と向き合ってください。

■睡眠不足が肥満や老化につながる科学的根拠
おそらく皆さんもなんとなく感じていると思いますが、やせている人にはよく寝ている人が多く、太っている人には寝不足な人が多いものです。
これは科学的にもはっきりしていることで、たとえば、アメリカのコロンビア大学の研究によると、毎日7~9時間眠っている人に比べて、睡眠時間が5時間の人は50パーセントも肥満になりやすいと報告されています。さらに、睡眠時間が4時間以下の人は、なんと73パーセントも肥満になりやすいというので驚きです。
睡眠不足が肥満につながる理由は、“空腹ホルモン”といわれるグレリンと、“満腹ホルモン”といわれるレプチンの影響によります。
グレリンは“デブホルモン”でもあり、お腹が空いたときに分泌され、食欲を増進させる働きをしています。一方、レプチンは“やせホルモン”であり、血糖値が上がると分泌され、食欲を抑える働きをします。
そして、睡眠がしっかりとれているとレプチンの分泌が促進され、反対に寝不足だとグレリンの分泌が促進されるのです。
50代くらいになってくると、明らかに若い頃と比べて睡眠の質が悪くなったり、眠れない日が増えてくるものです。これは、年齢とともに、睡眠を促すメラトニンの分泌量が低下してくることと関係しています。
よく寝るためには、毎日だいたい同じ時間に起き、同じ時間に寝て、眠りのリズムを整えること、朝起きたら太陽を浴びて体内時計をリセットすること、寝る2時間前にお風呂に入ること、そして夜は照明やパソコンのモニター、スマホなどのブルーライトをできるだけ浴びないこと、などが効果的です。
良質な睡眠が、体の組織の修復に働き、老化防止にもなることは、言うまでもないでしょう。やせるためにも、老けないためにも、もう一度あなたの睡眠習慣を見直してみてください。

■いい睡眠と老化を防ぐ朝食メニュー
よく眠るためには、“眠りのホルモン”といわれるメラトニンの分泌を促すことが大切ですが、これは食事の面から改善することも可能です。
まず、メラトニンが分泌されるまでの仕組みを簡単に説明しておきましょう。実はメラトニンは、トリプトファンという必須アミノ酸の一種を原料に体内で作られています。必須アミノ酸とは、体内では合成できないたんぱく質の一種で、必ず食事からとる必要があります。
トリプトファンが体内に入ると、まずは“幸せホルモン”と呼ばれるセロトニンになります。そしてこれが、夜になってメラトニンに変換され、脳内で分泌されることで眠気が起こり、私達は眠りに落ちます。
ただし、トリプトファンが体内に入ってからメラトニンになって分泌されるまでには、14~16時間ほどかかります。
ですから、たとえば毎日夜10時頃寝る人は、ちょうど朝食のときにトリプトファンが豊富な食品を食べておくと、メラトニンが分泌されやすくなるわけです。
トリプトファンは、バナナ、牛乳、納豆などに豊富で、どれも朝食にぴったりの食材です。ぜひ毎朝のメニューにとりいれてみてください。
実は、メラトニンには強い抗酸化作用も認められていて、そのパワーはビタミンCやビタミンEよりもずっと上。寝ている間にしっかりメラトニンが出ると、細胞の修復などにも働いてくれるので、老化を防ぐためにも、朝食でトリプトファンをしっかりとることは、美容と健康のために欠かせない習慣といえるでしょう。

■仰向けよりも横向き、左向きよりも右向きで寝る
だいたい40代も後半になると、寝つきが悪い人が増えてきます。毎日しっかり眠ってやせやすい体質になるためには、部屋を暗くしたり、適切な温度を保つなど環境を整えるだけでなく、眠りにつくときの体勢も意外と大事。
仰向けで寝ている人は少なくないと思いますが、おすすめは横向きで、それも右向きです。少しひざを曲げて、抱き枕などを使ってみるのもよいでしょう。この体勢は、胎児の体勢といわれており、姿勢が安定し、気持ちも落ち着いて眠りにつきやすいといわれています。
横向きに寝ると気道が開きやすいため、呼吸がしやすく、いびきをかきにくくなります。また、右側を下にした体勢は、胃の形のカーブに沿っているので、内臓への負担も軽いのです。ぜひ、今晩から試してみてください。

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工藤 孝文(くどう・たかふみ)

内科医

工藤内科院長。福岡県みやま市の同医院で地域医療を行う。糖尿病内科、ダイエット外来、漢方医療を専門として、テレビや雑誌などでも活躍。著書に『痩せグセの法則』(枻出版社)ほか多数。


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(内科医 工藤 孝文)
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