ダイエットを成功させるには、どんなことに注意したほうがいいか。日本体育大学体育学部の岡田隆教授は「減量を成功させるためには、「太らない食材」を意識的に食べたほうがいい。
※本稿は、岡田隆『日体大教授が教える「脂肪燃焼」食 運動0でお腹が凹む!』(講談社)の一部を再編集したものです。
■「肥満に苦しむ」のは人類史で初めてのこと
我々ホモサピエンスは20万年以上、人類全体として700万年もの間飢餓と戦ってきました。それゆえに、エネルギーを体脂肪として効率よく貯め込める脂質を「美味しい、もっと食べたい」と強く思う個体が生き残りやすかったのでしょう。
さらに、現代は無意識に食べていると、脂質過多になります。洋食やファストフードなど、日本人の食が欧米化し、脂質が市場にも食卓にもあふれているからです。1汁3菜のような昔ながらの和食は確かに低脂質ですが、今の日本で3食ともそういう食事を摂っている人はほとんどいないと思います。
数百万年以上にわたって作り上げられた心理機構が我々を突き動かし、手に入れやすくなった脂質を、解き放たれたように貪り食ってしまうのです。飢餓ではなく、肥満に苦しむという現象は、生命数十億年で初のことでしょう。
脂質はマヨネーズやバターなど、液体に近いものや、すぐに溶けるものはより太りやすい。消化・吸収の速度が速くなるからです。そのため脂質は、肉、魚、大豆など、固形食材に含まれた状態で摂った方がいい。
MCTオイルは脂質ですが、たんぱく質や糖質のようにすぐに肝臓に運ばれ、エネルギーに変換されるので、体脂肪にはなりにくいのです。ただし熱に弱く、160度ほどで煙が発生するので、加熱調理には不向きです。
■「脂肪過多食材」を避けるのが減量の基本
車が走るためにはガソリンというエネルギーがいります。人間が生きていくにもエネルギーが必要となりますが、そのエネルギーを持っているのは3大栄養素(たんぱく質、脂質、糖質)3つのみ。
特にダイエット期はこの3大栄養素の摂り方を普段と意識的に変える必要があります。
人間のエネルギー源が車のガソリンと違うのは、増えすぎると体脂肪として貯蓄されてしまうところ。一番体脂肪になりやすいのは、体脂肪と原料が同じで変換する手間がない脂質です。つまり効率よく痩せるためには、現代人が摂りすぎている脂質を適正量まで減らせばいい。
これが除脂肪食の基本です。たんぱく質と思って食べていたもの、炭水化物だと思って食べていたものが、調理法によって、「脂質過多食材」=脂質分類になっていることが意外と多く、盲点です。
低カロリー商品を選んでいるのに、いまいち痩せないという人がいる一方、たくさん食べているのに太らない人がいます。
■一番痩せるのは「高たんぱく×低脂質」
3大栄養素の摂取バランスを、PFCバランスと言います。Pはたんぱく質(Protein)、Fは脂質(Fat)、Cは炭水化物(Carbohydrate)を表します。ここからは皆に慣れ親しんでもらうため、それぞれをP、F、Cと呼びます。
PFCバランスは2:2:6、つまり脂質は炭水化物の1/3に抑えるのが除脂肪食の目安(後ほど詳しく説明しますが、グラムではなく、エネルギーの割合です)。カロリー制限しているのに痩せない人の場合、たいていPFC摂取の比率が間違っています。
炭水化物やたんぱく質が1g 4kcalなのに対して、脂質は9kcalもあります。しかし現代人は、脂質の摂取が多くなっている傾向があります。低カロリーだからといって、低脂質とは限らない。脂質が多いと、太りやすくなってしまいます。ここが実は落とし穴。大事なのは、コンビニやスーパーなどで、商品のパッケージ裏の成分表示を見て、脂質量(1食10g以下)で選ぶことです。
PFCバランスを考えた時、一番痩せるのは「高たんぱく×低脂質」。ただ一般的には、たんぱく質を積極的に摂っていると脂質が高くなりやすい。牛・豚肉ともに赤身を選ぶとよいでしょう。
しかし生き物なので同じ部位でも個体差があり、サシが結構入っているものもある。国産よりもオージービーフの方が脂が少ない傾向が。牛肉の欠点は、長期的に食べ続けると腎臓の数値が悪くなることです。
■炭水化物をたくさん摂取しても痩せられる
そう考えると、鶏むね肉や魚は最強です。
さばなどの青魚は多くの脂質を含んでいますが、EPAやDHAなどいわゆるオメガ3系の脂肪酸が豊富で体にいい。血液をサラサラにして動脈硬化を防ぐため、調理油や肉の脂よりも気にしなくていい。もちろん、脂質の少ないたらなどの白身魚もあります。大豆などの植物性たんぱく質もお勧めです。
二番目に痩せる食品は「高炭水化物×低脂質」です。
後者の方が食物繊維が豊富でよく噛む必要があるため腹持ちがよく、食後高血糖になりにくい。結果、血糖値を下げる働きのあるインスリンの分泌量が減るのでダイエットになります。
ちなみに、インスリンは血中の糖分を細胞に取り込み、エネルギーとして利用させるほか、エネルギーとして消費しきれなかった糖を脂肪に換えて体にため込む働きがあります。インスリンの分泌量が減ることで、脂肪の蓄積が予防できます。
■コラーゲンに美肌効果を期待できるのか
体内のコラーゲンは加齢により減少すると言われており、その要因は、年齢とともに体内でコラーゲンを作り出す力が弱まってしまうからと考えられています。美容のため、コラーゲンを積極的に摂っている方も多いのでは?
「肌に潤いや弾力を与える」と考え、手羽先や豚足、もつ鍋、コラーゲン鍋など、動物性食品を好んで食べていませんか? コラーゲンはたんぱく質であり、たしかに肌に必要ですが、同時にたくさん脂質も摂ってしまいます。
鶏皮や豚骨ラーメンのスープなど、コラーゲンを多く含んだものを食べた翌朝、鏡を見て、顔がツヤツヤしていても、それはコラーゲンの効果ではなく、一緒に摂った脂が浮き出てテカテカ脂ぎっているだけです。
衝撃の事実! コラーゲンは毎日少しずつ摂らないと、美肌効果として表れません。
■食材の質だけでなく、食べる順番も重要
ラーメン、餃子、カレー、ピザ、ドーナツ、焼き菓子などは「糖質だから太りやすい」と思っている方が多いようですが、実は一緒に脂質を摂っているから太るのです。
糖質を摂ると血糖値が上がり、膵臓から血糖値を下げるホルモン:インスリンが分泌されます。このインスリンによって、一緒に食べた脂質が加速的に体脂肪へと入っていく。これが太る原因です。
「糖質×脂質」はよく合います。しかも安くて腹持ちがいいため、同僚とランチに行けばまず間違いなくこの組み合わせを食べることになるでしょう。しかし、あらゆる栄養素の組み合わせのうち、一番太りやすい。しかも、これらのメニューはどうしても味つけが濃く、塩分が高いため、細胞内に溜め込まれた水分が排出されにくく、体がむくみやすくなる欠点もあります。
食べ物を選ぶことの大切さをここまで語ってきましたが、食べる順番もダイエットには重要です。パスタ、ハンバーガー、丼などのように食べる順番をそもそも意識できないものは、なるべく避けるか、少なくともサラダなどを追加注文できるといいですね。
定食は食べ順を理解する良いトレーニングです。野菜(副菜)、たんぱく質(主菜)、ごはん類(主食)の順に食べましょう。
もし、たんぱく質が低脂質であれば、野菜を先に食べなくても大丈夫。脂質の吸収を少なくする必要がないからです。ものすごくお腹が空いている時、ご飯のような食べやすいものを優先すると、どうしてもたくさん食べてしまう。これが過剰なカロリー摂取につながります。
■“キレ食い”を防ぐには煮干しがおすすめ
せっかく今まで我慢してきたのに、ストレスが限界に達するとついキレ食いしてしまう。
キレ食いのトリガーは強い空腹感です。キレ食いを防止するには、強い空腹感に達してしまう前に、太りにくい食物繊維やたんぱく質を食べる事で先手を打つのです。
例えば夜に空腹を感じ始めたら、野菜を食べるのが最適解。ちなみに私は、煮干しを愛用しています。よく噛むし、魚から重要な栄養素を摂取できるので、最高です。味の濃いものや脂質・糖質が多いものは止まらなくなり、キレ食いを誘発するので避けたほうがいいでしょう。
間食は、脂質の少なさを基準に選んで、空腹を解消するのがベター。アイスクリームなら、『雪見だいふく』(脂質が1個2.6g)が低脂質。氷菓であれば『ガリガリ君』など脂質0のものも少なくありません。
ヘルシーな印象と現実は異なります。ダイエット意識の高い女性に人気のサラダ専門店。実はドレッシングの脂質が高く要注意。その上、アボカド、ベーコン、卵などがトッピングされればさらに脂質は上がります。
ねぎ塩だれでレモンを絞って、さっぱりと食べる印象の牛タンも、100g中31.8gの脂質で豚ばら肉相当の高脂質。焼肉は、焼いて脂が落ちる印象ですが、落ちているのは表面の脂のみ。落ちた脂は、ごく一部にすぎません。
■加工したものよりも、素材そのものを選んで食べるべき
お寿司も似たような罠があり、大トロなどはその代名詞。トロの脂質とごはんの糖質の合わせ技一本ですから、ダイエットにはなりません。みなさんが「ヘルシー」と思っている食べ物は本当に誤解が多い。脂質の量は調べれば簡単にわかるので、イメージにだまされないように。
太らないおやつというと、脂質が高い洋菓子よりも和菓子。ここまでは皆さんなんとなくお分かりだと思います。では低脂質ならいいのか? というと、次に考えたいのは精製して(粉状にして)固めたものよりも、素材そのものを選ぶという視点。
つまり和菓子より果物や芋。おせんべいよりおにぎりがベター。おやつ欲、甘味への欲求を、自然の食材で満たせるようになったらもう勝ちです。果物は果糖を含んでいるので、太ると思い込んでいる人もいますが、そんなことはありません。食べ過ぎたら太るのはなんでも同じです。
果物は精製されて固められた食べ物よりもはるかに水分量が多く、エネルギー密度が低いので太りにくい食材になります。太るリスクは少ないです。
■プロテインバーはヘルシーとは限らない
健康意識の高い方は、お菓子よりプロテインバーを選ぶことも多いでしょう。
しかし、気をつけてほしいのは、案外プロテイン(たんぱく質)の量が少ないものが多いこと。何が多いのかといえば、脂質と糖質。プロテインバーならぬ、脂質×糖質バーであることさえあります。
プロテイン商品を買う場合は、必ず成分表示を見る習慣をつけてください。そしてなるべくたんぱく質を多く含み、脂質と糖質の少ないものを選んでほしいと思います。安価で美味しいものを作るには、脂質と糖質を多くするしかない。このことはプロテイン商品だけでなく、カロリーメイト、スニッカーズ、ベースブレッドなどにも言えます。
これらの商品は、広告によってヘルシーなイメージやキャッチフレーズがみなさんの脳内に刷り込まれ、つい買ってしまいがちです。
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岡田 隆(おかだ・たかし)
日本体育大学 体育学部教授
1980年生まれ。都立西高校、日本体育大学卒業、同大学院体育科学研究科修了。東京大学大学院総合文化研究科博士後期課程単位取得満期退学。トレーニング科学、スポーツ医学を専門的に学び、身体作りのスペシャリストとして活動。究極の実践研究としてボディビル競技を続けており、2023年にはWNBF世界選手権プロマスターズ部門で優勝を果たす。指導者としては、2012年から日本オリンピック委員会強化スタッフ(柔道)、柔道全日本男子チーム体力強化部門長を務め、2016年リオデジャネイロオリンピックでは、史上初となる柔道男子全7階級メダル制覇、2021年東京オリンピックでは史上最多5個の金メダル獲得などに貢献。これまで、文部科学省スポーツ功労者顕彰、日本オリンピック委員会奨励賞、讀賣新聞社日本スポーツ賞など受賞多数。
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(日本体育大学 体育学部教授 岡田 隆)
もっとも太らないのは『高たんぱく×低脂質』の食材なので、糖質よりも脂質の量に気をつけた食生活を心がけることが重要だ」という――。(第1回)
※本稿は、岡田隆『日体大教授が教える「脂肪燃焼」食 運動0でお腹が凹む!』(講談社)の一部を再編集したものです。
■「肥満に苦しむ」のは人類史で初めてのこと
我々ホモサピエンスは20万年以上、人類全体として700万年もの間飢餓と戦ってきました。それゆえに、エネルギーを体脂肪として効率よく貯め込める脂質を「美味しい、もっと食べたい」と強く思う個体が生き残りやすかったのでしょう。
さらに、現代は無意識に食べていると、脂質過多になります。洋食やファストフードなど、日本人の食が欧米化し、脂質が市場にも食卓にもあふれているからです。1汁3菜のような昔ながらの和食は確かに低脂質ですが、今の日本で3食ともそういう食事を摂っている人はほとんどいないと思います。
数百万年以上にわたって作り上げられた心理機構が我々を突き動かし、手に入れやすくなった脂質を、解き放たれたように貪り食ってしまうのです。飢餓ではなく、肥満に苦しむという現象は、生命数十億年で初のことでしょう。
脂質はマヨネーズやバターなど、液体に近いものや、すぐに溶けるものはより太りやすい。消化・吸収の速度が速くなるからです。そのため脂質は、肉、魚、大豆など、固形食材に含まれた状態で摂った方がいい。
ココナッツやパームの種子などに含まれているMCTオイルが、太らないということで注目されています。
MCTオイルは脂質ですが、たんぱく質や糖質のようにすぐに肝臓に運ばれ、エネルギーに変換されるので、体脂肪にはなりにくいのです。ただし熱に弱く、160度ほどで煙が発生するので、加熱調理には不向きです。
■「脂肪過多食材」を避けるのが減量の基本
車が走るためにはガソリンというエネルギーがいります。人間が生きていくにもエネルギーが必要となりますが、そのエネルギーを持っているのは3大栄養素(たんぱく質、脂質、糖質)3つのみ。
特にダイエット期はこの3大栄養素の摂り方を普段と意識的に変える必要があります。
人間のエネルギー源が車のガソリンと違うのは、増えすぎると体脂肪として貯蓄されてしまうところ。一番体脂肪になりやすいのは、体脂肪と原料が同じで変換する手間がない脂質です。つまり効率よく痩せるためには、現代人が摂りすぎている脂質を適正量まで減らせばいい。
これが除脂肪食の基本です。たんぱく質と思って食べていたもの、炭水化物だと思って食べていたものが、調理法によって、「脂質過多食材」=脂質分類になっていることが意外と多く、盲点です。
低カロリー商品を選んでいるのに、いまいち痩せないという人がいる一方、たくさん食べているのに太らない人がいます。
それはカロリーではなく、3大栄養素(たんぱく質、脂質、糖質)の摂取バランスがダイエットでは重要だからです。
■一番痩せるのは「高たんぱく×低脂質」
3大栄養素の摂取バランスを、PFCバランスと言います。Pはたんぱく質(Protein)、Fは脂質(Fat)、Cは炭水化物(Carbohydrate)を表します。ここからは皆に慣れ親しんでもらうため、それぞれをP、F、Cと呼びます。
PFCバランスは2:2:6、つまり脂質は炭水化物の1/3に抑えるのが除脂肪食の目安(後ほど詳しく説明しますが、グラムではなく、エネルギーの割合です)。カロリー制限しているのに痩せない人の場合、たいていPFC摂取の比率が間違っています。
炭水化物やたんぱく質が1g 4kcalなのに対して、脂質は9kcalもあります。しかし現代人は、脂質の摂取が多くなっている傾向があります。低カロリーだからといって、低脂質とは限らない。脂質が多いと、太りやすくなってしまいます。ここが実は落とし穴。大事なのは、コンビニやスーパーなどで、商品のパッケージ裏の成分表示を見て、脂質量(1食10g以下)で選ぶことです。
PFCバランスを考えた時、一番痩せるのは「高たんぱく×低脂質」。ただ一般的には、たんぱく質を積極的に摂っていると脂質が高くなりやすい。牛・豚肉ともに赤身を選ぶとよいでしょう。
しかし生き物なので同じ部位でも個体差があり、サシが結構入っているものもある。国産よりもオージービーフの方が脂が少ない傾向が。牛肉の欠点は、長期的に食べ続けると腎臓の数値が悪くなることです。
■炭水化物をたくさん摂取しても痩せられる
そう考えると、鶏むね肉や魚は最強です。
さばなどの青魚は多くの脂質を含んでいますが、EPAやDHAなどいわゆるオメガ3系の脂肪酸が豊富で体にいい。血液をサラサラにして動脈硬化を防ぐため、調理油や肉の脂よりも気にしなくていい。もちろん、脂質の少ないたらなどの白身魚もあります。大豆などの植物性たんぱく質もお勧めです。
二番目に痩せる食品は「高炭水化物×低脂質」です。
一般的に糖質は太ると思われていますが、除脂肪食の観点で見ると、決してそんなことはありません。特に米は、優秀なダイエット食材。米の脂質は、100g中たった0.3gと、ごくわずか。米には精製された白米と、外側の穀皮を残した玄米、豆類・種実類などを混ぜた雑穀米などがあります。
後者の方が食物繊維が豊富でよく噛む必要があるため腹持ちがよく、食後高血糖になりにくい。結果、血糖値を下げる働きのあるインスリンの分泌量が減るのでダイエットになります。
ちなみに、インスリンは血中の糖分を細胞に取り込み、エネルギーとして利用させるほか、エネルギーとして消費しきれなかった糖を脂肪に換えて体にため込む働きがあります。インスリンの分泌量が減ることで、脂肪の蓄積が予防できます。
■コラーゲンに美肌効果を期待できるのか
体内のコラーゲンは加齢により減少すると言われており、その要因は、年齢とともに体内でコラーゲンを作り出す力が弱まってしまうからと考えられています。美容のため、コラーゲンを積極的に摂っている方も多いのでは?
「肌に潤いや弾力を与える」と考え、手羽先や豚足、もつ鍋、コラーゲン鍋など、動物性食品を好んで食べていませんか? コラーゲンはたんぱく質であり、たしかに肌に必要ですが、同時にたくさん脂質も摂ってしまいます。
鶏皮や豚骨ラーメンのスープなど、コラーゲンを多く含んだものを食べた翌朝、鏡を見て、顔がツヤツヤしていても、それはコラーゲンの効果ではなく、一緒に摂った脂が浮き出てテカテカ脂ぎっているだけです。
衝撃の事実! コラーゲンは毎日少しずつ摂らないと、美肌効果として表れません。
■食材の質だけでなく、食べる順番も重要
ラーメン、餃子、カレー、ピザ、ドーナツ、焼き菓子などは「糖質だから太りやすい」と思っている方が多いようですが、実は一緒に脂質を摂っているから太るのです。
糖質を摂ると血糖値が上がり、膵臓から血糖値を下げるホルモン:インスリンが分泌されます。このインスリンによって、一緒に食べた脂質が加速的に体脂肪へと入っていく。これが太る原因です。
「糖質×脂質」はよく合います。しかも安くて腹持ちがいいため、同僚とランチに行けばまず間違いなくこの組み合わせを食べることになるでしょう。しかし、あらゆる栄養素の組み合わせのうち、一番太りやすい。しかも、これらのメニューはどうしても味つけが濃く、塩分が高いため、細胞内に溜め込まれた水分が排出されにくく、体がむくみやすくなる欠点もあります。
食べ物を選ぶことの大切さをここまで語ってきましたが、食べる順番もダイエットには重要です。パスタ、ハンバーガー、丼などのように食べる順番をそもそも意識できないものは、なるべく避けるか、少なくともサラダなどを追加注文できるといいですね。
定食は食べ順を理解する良いトレーニングです。野菜(副菜)、たんぱく質(主菜)、ごはん類(主食)の順に食べましょう。
脂質や糖質が高いものをいきなり食べるより、食物繊維を胃の中に敷き詰めることで脂質や糖質の吸収緩和を狙います。
もし、たんぱく質が低脂質であれば、野菜を先に食べなくても大丈夫。脂質の吸収を少なくする必要がないからです。ものすごくお腹が空いている時、ご飯のような食べやすいものを優先すると、どうしてもたくさん食べてしまう。これが過剰なカロリー摂取につながります。
■“キレ食い”を防ぐには煮干しがおすすめ
せっかく今まで我慢してきたのに、ストレスが限界に達するとついキレ食いしてしまう。
キレ食いのトリガーは強い空腹感です。キレ食いを防止するには、強い空腹感に達してしまう前に、太りにくい食物繊維やたんぱく質を食べる事で先手を打つのです。
例えば夜に空腹を感じ始めたら、野菜を食べるのが最適解。ちなみに私は、煮干しを愛用しています。よく噛むし、魚から重要な栄養素を摂取できるので、最高です。味の濃いものや脂質・糖質が多いものは止まらなくなり、キレ食いを誘発するので避けたほうがいいでしょう。
間食は、脂質の少なさを基準に選んで、空腹を解消するのがベター。アイスクリームなら、『雪見だいふく』(脂質が1個2.6g)が低脂質。氷菓であれば『ガリガリ君』など脂質0のものも少なくありません。
ヘルシーな印象と現実は異なります。ダイエット意識の高い女性に人気のサラダ専門店。実はドレッシングの脂質が高く要注意。その上、アボカド、ベーコン、卵などがトッピングされればさらに脂質は上がります。
ねぎ塩だれでレモンを絞って、さっぱりと食べる印象の牛タンも、100g中31.8gの脂質で豚ばら肉相当の高脂質。焼肉は、焼いて脂が落ちる印象ですが、落ちているのは表面の脂のみ。落ちた脂は、ごく一部にすぎません。
■加工したものよりも、素材そのものを選んで食べるべき
お寿司も似たような罠があり、大トロなどはその代名詞。トロの脂質とごはんの糖質の合わせ技一本ですから、ダイエットにはなりません。みなさんが「ヘルシー」と思っている食べ物は本当に誤解が多い。脂質の量は調べれば簡単にわかるので、イメージにだまされないように。
太らないおやつというと、脂質が高い洋菓子よりも和菓子。ここまでは皆さんなんとなくお分かりだと思います。では低脂質ならいいのか? というと、次に考えたいのは精製して(粉状にして)固めたものよりも、素材そのものを選ぶという視点。
つまり和菓子より果物や芋。おせんべいよりおにぎりがベター。おやつ欲、甘味への欲求を、自然の食材で満たせるようになったらもう勝ちです。果物は果糖を含んでいるので、太ると思い込んでいる人もいますが、そんなことはありません。食べ過ぎたら太るのはなんでも同じです。
果物は精製されて固められた食べ物よりもはるかに水分量が多く、エネルギー密度が低いので太りにくい食材になります。太るリスクは少ないです。
■プロテインバーはヘルシーとは限らない
健康意識の高い方は、お菓子よりプロテインバーを選ぶことも多いでしょう。
しかし、気をつけてほしいのは、案外プロテイン(たんぱく質)の量が少ないものが多いこと。何が多いのかといえば、脂質と糖質。プロテインバーならぬ、脂質×糖質バーであることさえあります。
プロテイン商品を買う場合は、必ず成分表示を見る習慣をつけてください。そしてなるべくたんぱく質を多く含み、脂質と糖質の少ないものを選んでほしいと思います。安価で美味しいものを作るには、脂質と糖質を多くするしかない。このことはプロテイン商品だけでなく、カロリーメイト、スニッカーズ、ベースブレッドなどにも言えます。
これらの商品は、広告によってヘルシーなイメージやキャッチフレーズがみなさんの脳内に刷り込まれ、つい買ってしまいがちです。
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岡田 隆(おかだ・たかし)
日本体育大学 体育学部教授
1980年生まれ。都立西高校、日本体育大学卒業、同大学院体育科学研究科修了。東京大学大学院総合文化研究科博士後期課程単位取得満期退学。トレーニング科学、スポーツ医学を専門的に学び、身体作りのスペシャリストとして活動。究極の実践研究としてボディビル競技を続けており、2023年にはWNBF世界選手権プロマスターズ部門で優勝を果たす。指導者としては、2012年から日本オリンピック委員会強化スタッフ(柔道)、柔道全日本男子チーム体力強化部門長を務め、2016年リオデジャネイロオリンピックでは、史上初となる柔道男子全7階級メダル制覇、2021年東京オリンピックでは史上最多5個の金メダル獲得などに貢献。これまで、文部科学省スポーツ功労者顕彰、日本オリンピック委員会奨励賞、讀賣新聞社日本スポーツ賞など受賞多数。
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(日本体育大学 体育学部教授 岡田 隆)
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