※本稿は、白澤卓二監修『科学的に正しい一生老けない方法100』(宝島社)の一部を再編集したものです。
■太りにくい体を内側からつくる
肥満を防ぎ、若々しさを保つために重要な身体機能の一つが「代謝」です。代謝とは、食事から摂取した栄養をエネルギーとして変換し、そのエネルギーをその日のうちに効率良く使い切る仕組みのこと。この代謝の働きがスムーズであれば、体に余分な脂肪をため込まず、健康的な体型を維持することができます。
代謝によって発生する熱の多くは、体内の発熱器官によって生み出されています。その中心的な役割を担うのが「肝臓」であり、全身の代謝活動のなかでも特にエネルギー消費量が多い臓器です。しかし、肝臓のほかにも、もう一つ代謝に深く関わる器官があります。それが「褐色脂肪細胞」です。
褐色脂肪細胞は、体温を調整するために活発に熱を生み出し、余分なエネルギーを燃やしてくれる細胞です。主に首の後ろ、腋(わき)の下、鎖骨の下、肩甲骨の間などに分布しており、冷えたときや食後などに働きを活発化させて体温を維持します。この細胞の働きを高めることで、代謝はより促進され、結果として肥満の予防につながります。
■胃腸を元気にする「食べ方の3原則」
さらに、代謝を高めるうえで欠かせないのが、胃腸の調子を整えること。胃腸は食べたものを消化・吸収する器官で、ここの働きが良ければ、摂取した栄養もスムーズに代謝されやすくなります。そこで実践したいのが「食べ方の3原則」です。
1つ目は「空腹でない限り食べない」。体がエネルギーを必要としていないときに食べると、余ったカロリーは脂肪として蓄積されやすくなります。2つ目は「腹八分目を守る」。満腹になるまで食べてしまうと胃腸に負担がかかり、代謝も落ちやすくなります。3つ目は「食べる順番を守る」。野菜や汁物などから食べ始めることで血糖値の急上昇を抑え、脂肪の蓄積を防ぎます。
これら3つの原則を守るだけで、特別な道具や方法を使わなくても、体に無理のないかたちで代謝が高まり、健康的で若々しい体を手に入れることができるのです。
■朝食はあっさり、昼食はたっぷり
肥満を防ぎ、代謝を整えるためには「いつ、どれだけ食べるか」がとても重要です。私たちの消化器官は、体内時計の働きにより、一日の中で活動レベルが変化しています。
たとえば朝は、体がまだ完全に目覚めておらず、胃腸も本格的に動き始める前の状態です。この時間帯に多く食べすぎてしまうと、排泄に使うべきエネルギーが消化に回ってしまい、胃腸に過度な負担がかかってしまいます。そのため、朝食は必要な分だけ軽めにとるのが理想です。無理に食べるよりも、空腹感に合わせて調整する方が、体への負担は少なくなります。
一方、午後は体の活動がピークに達する時間帯で、消化器の働きも最も活発になります。この時間に食事をしっかりとることで、摂取した栄養やエネルギーが効率良く使われ、体脂肪として蓄積されにくくなります。つまり「昼はたっぷり」が基本で、この時間帯こそ栄養を補給する絶好のチャンスです。
■太りやすい夜は腹八分目に抑える
反対に、夜は代謝が落ち始め、体がエネルギーを消費しづらいモードへと移行していきます。夜にたくさん食べると、消費しきれなかったエネルギーが脂肪として蓄積されやすくなり、太りやすくなってしまいます。
そのため、夕食は腹八分目を心がけ、できれば就寝の3時間前までに済ませるのが理想です。寝る直前の食事は、胃腸に負担をかけるだけでなく、睡眠の質も低下させる恐れがあります。
この日内変動のリズムは、朝の光や夜の暗さといった「光パルス」「暗パルス」によってリセットされ、体内のホルモン分泌や細胞の再生、睡眠・覚醒のリズムと密接に関わっています。つまり、食事も睡眠もこの体内時計のリズムに合わせることで、肥満予防や老化防止につながるのです。日内変動を味方につけることが、健康で若々しい体を維持する秘訣と言えるでしょう。
■「若返り遺伝子」が働くための条件
2000年、アメリカのマサチューセッツ工科大学で「サーチュイン遺伝子」が発見されました。別名「長寿遺伝子」「若返り遺伝子」とも呼ばれるこの遺伝子は、活性化すると体内の老化を進める活性酸素を除去し、見た目や体の若々しさを保つ効果があるとされています。さらに、病気の予防にも役立つことがわかってきました。
しかしこの遺伝子がしっかりと働くためには、ある条件が必要とされています。それは「空腹の状態」であることです。
そもそも人類の長い歴史を振り返れば、常に十分な食料があったわけではありません。むしろ飢えとの戦いのなかで生き延びてきた時間の方が圧倒的に長かったのです。その結果、人間の体には、空腹でも健康を保てる仕組みが備わったと考えられています。
■白米は血糖値を爆上がりさせるので要注意
金沢医科大学の研究によると、摂取カロリーを通常の75%に制限した食事を3週間続けることで、人間のサーチュイン遺伝子が活性化されるという結果が出ています。
空腹時こそ、体の「若返りスイッチ」がオンになるのです。若さを保ちたいなら、食事は腹八分目を心がけ、間食を控えるのがベスト。
とはいえ、栄養バランスを無視してはいけません。その人の体格や活動量によって個人差は出てきますが、主食であるごはんは、1食につき茶碗1杯150g前後を目安に。特に白米は血糖値を急激に上げやすいため、週に数回は玄米に置き換えると、肥満防止に効果的です。おかゆにすることで、少量でも満腹感が得られやすくなります。
主菜には魚や肉を1食80~100g程度取り入れましょう。たとえばサンマ1尾や、卵1.5個分くらいの大きさの鶏ささみが目安です。卵や豆腐も良質なたんぱく質を含んでおり、主菜としておすすめです。
副菜には納豆を取り入れると、消化を助ける成分が豊富で、腸内環境も整います。体の内側から若さを引き出しましょう。
■食べる順番は副菜→主菜・汁物→ごはん
好物ばかり食べたり、「この食材が健康に良い」と聞いてそればかりを食べたりするのは、体にとって逆効果です。何より大切なのは、バランスの良い食事。基本となるのは、玄米やライ麦パンなどの全粒穀類と、たっぷりの野菜と果物です。油はココナッツオイルやエゴマ油、アマニ油など、体にやさしいものを選びましょう。
次に、魚や鶏肉、卵、豆類、豆腐なども適度に取り入れて。卵はコレステロールが増えると誤解されがちですが、実際にはアミノ酸バランスが優れたおすすめ食材です。また、カルシウム補給のために乳製品や発酵食品も積極的に。発酵食品は腸内環境の改善にも役立ちます。一方で、白米、食パン、パスタ、甘味、清涼飲料水などはとりすぎに注意しましょう。
料理を食べる順番を意識するだけで、血糖値の急上昇を防ぐことができます。いきなりごはんから食べ始めるのはNG。まず手をつけるべきは、野菜やきのこ、海藻などの食物繊維が豊富な副菜です。
次に主菜の魚や肉を少しずつ、そして汁物をはさみながら、ゆっくり食べ進めましょう。ごはんは最後に食べることで、糖質の影響を抑えられます。ただし、カボチャやイモ類など糖質の多い野菜はごはんと同じ扱いで注意が必要。また、甘いドレッシングのかかったサラダも控えるべきです。
こうした食べ方を習慣づけることで、食べすぎの防止にもつながります。何から食べるか迷ったら、小鉢の副菜からスタート。食べる順番をルーティン化しましょう。
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白澤 卓二(しらさわ・たくじ)
白澤抗加齢医学研究所所長、お茶の水健康長寿クリニック院長
医学博士。お茶の水健康長寿クリニック院長。白澤抗加齢医学研究所所長。テレビや雑誌、書籍などのわかりやすい健康解説が人気。『Dr.白澤の アルツハイマー革命 ボケた脳がよみがえる』(主婦の友社)、『脳の毒を出す食事』(ダイヤモンド社)、『「いつものパン」があなたを殺す』(訳・三笠書房)、『「お菓子中毒」を抜け出す方法』(祥伝社)など、著書・監修書多数。
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(白澤抗加齢医学研究所所長、お茶の水健康長寿クリニック院長 白澤 卓二)