大富豪は資産運用で何を意識しているか。大手証券会社のプライベートバンキング部門で数多くの富裕層を担当していたZUU代表の冨田和成さんは「大富豪になる人は、20代のうちに小金が入ったとしても歩みを止めることなく、仕事と自己投資に没頭して複利の力を使う。
大富豪であれば常識として知っている複利運用の方程式に『72の法則』と呼ばれる便利な計算方法が存在する」という――。
※本稿は、冨田和成『世界の大富豪が実践しているお金の哲学』(三笠書房)の一部を再編集したものです。
■本気で資産を増やしたいなら、大きな利益を目指して我慢する
投資をするとき
一般人は、
単利で増やそうとする小金持ちは、

早く稼ごうとする
大富豪は、

人生単位の複利で考える

本稿では、資産運用の話に移っていきたいと思います。まずは運用の基本から解説していきましょう。
資産運用を少しでもかじったことがある方なら「複利運用」という言葉を聞いたことがあると思います。資産運用の基本中の基本です。
詳しくない方のために説明をすると、複利運用とは投資で利益が出たらその利益を消費せずに元本に付け足して、徐々に運用する額を増やしていく運用方法のこと。対義語は「単利運用」で、こちらは元本が一定です。
たとえば、100万を年利5%で単利運用すると、毎年5万ずつ増えるので10年後には150万円になります。
一方、年利5%の複利で運用すると、2年目の元本は初年度の利子を足した105万円になります。それを元手に5%の利子がつけば、2年目の最後には110万2500円。こうやって計算していくと、10年後には162万8895円になります。
単利運用より複利運用の方が、資産が大きくなっていますね。
本気で資産を増やしたいなら利子を貰うたびに豪華な食事に行くのではなく、さらに大きな利益を目指して我慢をすることが大事だということです。
■大富豪が常識として知っている複利運用の方程式
参考までに、複利運用には「72の法則」と呼ばれる便利な計算方法が存在します。「年利 ×年数=72」というシンプルな方程式で、元本が2倍になる年数(または年利)を簡単に導き出せます。
たとえば、年利7%で複利運用したときに元本が2倍になるまでかかる年数は(72÷7で)10.28年だとわかります。また、元本を5年で2倍にするために必要な年利は(72÷5で)14.4%だとわかります。
大富豪であれば常識として知っている方程式です。
この複利運用は実際の投資の手法であると同時に、大富豪はその考え方そのものを実生活に応用しています。
複利運用の根底にあるのは「元本が大きければ大きいほど利益が大きくなる」ということですが、表現を変えると「複利は運用期間が長いほど効果を発揮する」とも言えます。これがポイントです。
仕事で使う知識・スキルや、人脈など、仕事やお金に直結する分野への投資をなるべく早く積極的にしていくのは、それが圧倒的に有利だからです。
大富豪になる人はその事実を知っているので、20代のうちに小金が入ったとしても歩みを止めることなく、仕事と自己投資に没頭するのです。

若いころの苦労が

複利の伸びしろを作る
■投資初心者の典型的な失敗パターン
投資をするとき
一般人は、

安全性を重視する
小金持ちは、

効率性を重視する
大富豪は、

安全かつ効率的な落とし所を探る

知り合いのライターさんが、一向に増えない貯金を投資に回そうと決意をし、1年ほど前に貯金のほぼ全額に近い1000万円をつぎ込んで中国株をまとめ買いされたそうです。
しかし、購入直後に中国の株バブルがはじけ大暴落。
損切りの決心もつかず、愛想をつかした奥さんとの会話も激減したとか。
みんなが買っているものを後追いする。一点買いをする。損切りのタイミングを逸する。典型的な投資初心者の失敗パターンです。
投資にはリスクが伴うと言っても、ある程度コントロールできます。リスク管理の意識なく、ギャンブルだと思っている限り、資産運用はおすすめしません。
投資額が50万円、100万円と小さいうちはかなりハイリスクな商品を選ぶのもアリですが、1000万円もあれば他に手段はあっただろうとつくづく思います。その男気だけは買いますが……。
リスク管理の基本は、投資の格言でもある「タマゴをひとつのカゴに盛らないこと」。
つまり分散投資です。
ユダヤ人は昔から金融と資源をおさえるといわれています。景気がいいときは金融が勢いよく上がりますが、景気が悪いときや大きな有事が起きたときは金融が下がり、資源が上がるのが定説だからです(実際、9・11のときは銀行の株価が急落する一方で、戦争の可能性があるということで資源が大暴騰しました)。
有名な企業で言うと、シェル(旧称:ロイヤル・ダッチ・シェル)は裏ではユダヤ系ですし、JPモルガン、モルガン・スタンレー、ゴールドマン・サックスなどもユダヤ系です。
■資産運用とは「安全性」と「効率性」の落とし所を見極める作業
世界経済がこれだけ複雑化した現在、何が上がれば何が下がるといった相関関係を見出すことは困難ですが、分散投資の考え方自体は大いに参考になります。
資産運用とは「安全性」と「効率性」の落とし所を見極める作業です。決して効率だけを追い求めることではありません。投資初心者が悩むのも当然なのです。
安全性と効率性の両立という意味では、私たちが支払っている年金保険料の余剰資金を元手に資産運用を行なっているGPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)も分散投資を行なっていて、国内と海外の株式や債券にポートフォリオを振り分けています(ポートフォリオは同法人のホームページで確認できます)。
百戦錬磨の一流は

いつしか中庸に落ち着く

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冨田 和成(とみた・かずまさ)

ZUU社長兼CEO

神奈川県出身。一橋大学在学中にIT分野で起業。2006年大学卒業後、野村證券株式会社に入社。
本社の富裕層向けプライベートバンキング業務、ASEAN地域の経営戦略担当等に従事。2013年3月に野村證券を退職。同年4月に株式会社ZUUを設立し代表取締役に就任。

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(ZUU社長兼CEO 冨田 和成)
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